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[新刊レビュー]BL版『水戸黄門』!? 初めて人生で負けを食らった優等生がさまよって…渡海奈穂『夢は廃墟をかけめぐる』


Category: レビュー 小説単行本   Tags: 特徴-社会人  特徴-年下攻め  受け-ガリ勉  ●ワ行-渡海奈穂  
夢は廃墟をかけめぐる☆ (新書館ディアプラス文庫 171)夢は廃墟をかけめぐる☆ (新書館ディアプラス文庫 171)
(2007/10)
渡海 奈穂

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 あえてこじつけてしまうと、渡海奈穂先生の最新刊『夢は廃墟をかけめぐる』は、BL版『水戸黄門』だなぁと、読了したばかりのちーけんは感じております(笑)。
 いつもは、紹介している本を読んでない方にもわかるようにというスタンスで記事を書いている本ブログですが、今回は原作を読んでいないとちょっとわかりにくいかもしれません。
 申し訳ないのですが、たまにはいいかなぁと。
 ただ、今回はかなり強いネタバレがありますので(いつもはこれから買う人の興を削がないようにギリギリで控えてます)、その点も未読の方はご注意ください。

 さて、いったい何が『水戸黄門』なのかといえば、本書は一種の“貴種流離譚”なんですね。
 王位継承に破れて“故郷”を放逐された“尊い人”が、苦労しながら各地を放浪するけれど、最後には元の身分に戻れてめでたしめでたし、というのが“貴種流離譚”の典型的なストーリーパターンですが、日本人はこれが大好きです(笑)。
 童話の『みにくいアヒルの子』や、日本書紀の『ヤマトタケル』、『かぐや姫』、森鴎外の『山椒大夫』などが代表例。
 で、すごい人だというのを知らずに、苦労している“尊い人”を助けた善人が、最後にはご褒美をもらえたり…なんてのも、“貴種流離譚”には多いです。
 もちろん『水戸黄門』の黄門さま(徳川光圀)は、別に将軍位争いに敗れてさまよっているわけではなく、暇な元お殿さまが勝手に越後のちりめん問屋の隠居を名乗って日本中を放浪しているだけですが、基本的には“貴種流離譚”の一種です。

 じつは本書の主人公・三島要(みしま・かなめ)は、そういう境遇にあるキャラとして設定されているんですね。

 幼い頃から学歴社会を突破すべく勉強に励んで、一流企業に入るのにも成功し、常務の娘と結婚までして、しかも仕事もやり手のエリートとして我が世の春を満喫できるかと思いきや、「あなたは私のことなんか好きじゃないのよ!」と妻に言われてあえなく離婚、もちろん常務からも睨まれて仕事上の失敗を口実に解雇されてしまった…というのが、ストーリー開始時点での三島要の状況です。
 やることもなく酒に溺れ、ふと思い立って放浪の旅に出て、旅先で聞いた「廃墟島」にたどりついたはいいけれど、食べるものもなくなり、このまま死んでもいいか~ぐらいのすさんだ気持ちになってます。
 え? それだけでは、まだまだ“貴種流離譚”とは言えない?
 まあ、もう少しお待ちください(笑)。

「廃墟島」で三島が出会ったのが、まだ20代の若きカメラマン・伊原木一保(いばらぎ・かずほ)でした。
 仕事で「廃墟島」の撮影を頼まれ訪れていた伊原木は、カメラのフレームに飛び込んできた三島の姿を“廃墟の妖精”と思いこみ夢中でシャッターを切ります。
 ところが思い切って「こんにちは」と声をかけ、自己紹介を始めた伊原木に、三島はこんな態度をとるのでした。

「君は頭が悪いのか?」

「は?」

「悪いがひとりになりたいんだ。消えてくれないか」

「でも危ないだろ。建物が崩れたら危ない。それに風も強いし、風邪でもひいたら」

「君には関係なかろう。放っておいてくれないか」


 ところが、そのまま立ち去ろうと立ち上がった三島がいきなり昏倒したので伊原木は驚きます。
 三島は酒ばかり飲んでいて飯も食わずに廃墟島をうろついていたのだから当たり前だったのですが…。

 さて、こうして伊原木と出会うことになった三島ですが、彼が『黄門さま』なのは、単に学歴社会の優等生だったからではありません。
 物語の後半で、三原が伊原木にこんな風に叫ぶシーンがあります。

「仕方ないだろ! これまでの人生三十五年間も、利益や損得計算ばかりして生きてきたんだ。それが一番正しくて利口なやり方だと疑っていなかったんだ!」

 このセリフだけでも、三島がこれまでの人生でいったい何に価値を置いてきたのかがよくわかりますが、一言で言えば、彼は典型的な新自由主義経済の申し子なんですね。
 わかりやすく言うと、ちっちゃなホリエモンや村上世彰ってことですね。
 すべては自由競争、市場原理のもとで決められるべきであり、人間はつねにその下で利益を追求していくのが最善の行動である、その結果生まれる勝者と敗者の格差はしょうがない――ひどく簡単にいえば、新自由主義経済とは概略そんなようなものですが、三島はこれまでの人生を、まさにこの通りの考え方で歩んできた男なんですね。
 その結果が、いい会社に入るために学歴社会の競争を勝ち抜こうと受験勉強に必死に励んだことであり、就職活動では「自分は何をやりたいか」を考えることなく、「社会的に認められる会社」「経済的に恵まれた会社」に入ることだけを考え、会社に入ってからも、少しでも自分と会社のために利益をあげるべく時には汚い仕事にも手を染めてガムシャラに働いてきた人生だったわけですね。
 ところが、上司の娘であった妻との離婚により、すべてが徒労と化し、廃墟島をさまよっているのが今の三島です。

 伊原木に倒れたところを救われ病院まで世話された三島は、それを縁に、嫌々ながら伊原木の狭いアパートの一室に居候することになります。
 他に行くところもなかったので。
 そんなある日、伊原木の行きつけの喫茶店『伴茶夢』に三島は連れて行かれます。
 そこに集っていたのは、これまでの三島の人生では出会ったことのない人びとでした。
 鉄道オタク、SFマニア、廃墟評論家…。
 これまでの三島の価値観からすれば、競争社会を勝ち抜けなかった“負け組”としか言いようのない特殊な人間がそこには集まっていたのです。

『水戸黄門』では、江戸時代の支配層である徳川将軍家の一員(前の副将軍)である黄門さまが、気楽な全国行脚の途中で、本来ならば一生触れることのないはずだった貧しい農民や街の下層民たちの実情を知り、それを救っては次なる国へと去っていきますが、本書では、格差社会の勝者に登りつめた三島が、その高みから転落したあげく、本来ならば一生接することのなかった格差社会の“負け組”たちと接し、その中で新たな生活を始めることになります。
 だんだん現代版『黄門さま』だと言った意味がわかっていただけてきたでしょうか(笑)。
 そうです、本書は現代格差社会の勝ち組が転落したあげく、負け組社会に組み込まれて苦労していくお話なんです。

 さて、こちらの現代版『水戸黄門』でも、負け組たちには“困りごと”が起こっていました。
 他では受け入れられない人間たちの救いの場所である『伴茶夢』が、ビルの老朽化にともなって立ち退きを迫られていたのです。
「ここがなくなったら行くところがない」と落ち込む負け組のみなさん(笑)。
 そんな状況を横目に、最初は「なぜこの男は得にもならないのに私のことを甲斐甲斐しく世話するんだ」とプリプリしていた三島は、伊原木のことを詳しく知るにつれ、徐々に心を開いていきます。
 初めて銭湯に連れて行かれ、「他人と同じ風呂など入れるか!」と嫌がっていたくせに、広いお風呂を気に入って気持ちよさそうにつかる三島(笑)。
 料理などやったこともなかったけれど、居候するかわりにと料理本を買い、ご飯作りに熱中する三島。
 三島は伊原木にこんなことを告白します。

「後悔している」

「後悔?」

「(『伴茶夢』の)みんなの話を聞いていると、廃墟から、鉄道から、戦車やら、銃器やら、無線やら、自分のこれまでの人生とは一切関わりのない分野について、あとからあとから知らない知識が出てくる。これまで学校の勉強や仕事に必要な知識を詰め込んだ自分の頭の半分以上が空っぽだったということを、彼らと話すにつれ思い知らされる」

「ようこそこっちの世界へ」

 伊原木が芝居がかって、恭しく三島にお辞儀する。

「足りないと思ったんなら、これから埋めればいい。一回失敗したからって全部お終いってことじゃないだろ。早く気づけてよかったってくらいで」

(中略)

「…君は身軽だな」

「身軽?」

「思考がというか」

「暗に馬鹿にしてない?」

「褒めたんだ。素直に受け取りたまえ」


 さすが“貴種流離譚”の主人公だけあって、何を見ても聞いても新鮮な三島です(笑)。
 口調が超エラそうなのはご愛敬。
 じつは三島は伊原木に口に出しては言いませんでしたが、彼が撮影して『伴茶夢』に飾られていた数々の写真に圧倒され、密かに彼の写真集を買うほどになっていたのでした。
 さっさと本人に言ってあげればいいのにと思うわけですが、そこは素直じゃない優等生さまですから、秘密のままです(笑)。
 でも、そうやって過去の自分と向きあい、新たな自分を見つけ始めた三島は、別れた妻を理解してやれなかった後悔などを、素直に伊原木に話すようになります。
 そんな日々を繰り返すにつれ、三島は伊原木の隣が、そして最初は狭いとしか思っていなかったアパートの一室が、「いつまでもここにいたい」と思うような心地よい空間になっていたことに気づくのでした。

 ところが!

 このままハッピーエンドに突入かと思いきや、ここで三島は過去の自分の“亡霊”に苦しめられることになるのです。
『伴茶夢』に、新進写真家として名が売れてきた伊原木に一目会おうと押しかける若い女性ファンたちを、伊原木が冷たくあしらう光景を目にした三島は、いつかは自分の同じように“伊原木に必要ない存在”として彼に切り捨てられるのではないかという恐れに苛(さいなま)まされるのです。
 己に利益をもたらさないものは不必要な存在として切り捨てるべき――それはまさに過去の三島が信奉してきた新自由主義的考え方の根本命題です。
 そして自分の現状を考えれば、宿無しで文無しで何のメリットも伊原木に与えない自分の姿は、まさに競争社会では不必要なものとして切り捨てられなければいけないものでした。
『伴茶夢』からの帰り道、そんな疑問を知らず知らず伊原木にぶつけていた三島は、伊原木からこんな告白をされて、混乱の極みに達します。

「理由ならある」
「一目惚れだったんだ」
「最初に島であんたの姿を見たときから、ずっとあんたのこと忘れられなかったんだ。だから島から戻らずにあんたの姿捜して、病院に運んで、再会した時も無理矢理捕まえて」
「その時からもう好きだったけど、一緒に暮らすうちにどんどん、もっと好きになった。利益とかそんなもん考えたことねえよ。俺は要さんのことが好きだから、だから一緒にいたいって、そう思った」

 いやー、でも残念ながら新自由主義者というのは、政治的には極めて保守的なスタンスなんですよね(笑)。
 なので、当然ですが三島はこう言って伊原木の告白を拒絶してしまうのです。
 三島はこんな極めて優等生的な言辞を言いつのります。

「き…君は、おかしいんじゃないか。私は男だぞ、男で、君も男で」

「知ってるよ」

「知っているのに、どうしてそんな…。異常だ。あっていいことじゃない!」


 激高する三島に、伊原木は静かに答えます。

「俺のことが気持ち悪いなら、出て行っていい。少しキツくはなってたんだ。黙ってようと思ってたのに、こんな簡単に本音漏れるくらいにはさ」

 年下だけど大人な伊原木の真情あふれるセリフですね。
 三島の負担にならないようにと気遣ってあげて…。
 でも、頭がぐちゃぐちゃになった三島は、出て行っていいと言われて、「自分は伊原木に切り捨てられたんだ」と思いこみ、そのまま出奔してしまうのでした。

 むふっ。
 さあ、この2人の恋の結末はどうなってしまうんですかね(笑)。
 といっても、三島の側ではまだ恋すら始まっていないような感じですけれど。
 そのあたりのかなり胸キュンなストーリー展開は、実際に本を買って確かめていただくとして、ストーリーの最後、本書の“貴種流離譚”としての本性がついに現れるシーンがあります。

 万策尽きて立ち退かざるを得なくなった『伴茶夢』。
 ところが、三島が救世主として、いやまさに『黄門さま』として、そこに登場してくるのです。

「屋敷を買ってきた」

 なんと近所で評判になっていた近所の“廃墟屋敷”を、『伴茶夢』の移転用に三島が現金で買ったというのです。
 もちろん驚く『伴茶夢』のメンバー、そして伊原木たち。

「待て、待ってくれ。あんた一文無しじゃなかったのか!?」

 混乱した頭を片手で押さえながら、伊原木が三島を問い詰める。

「手近なところにすぐ使える現金がなかったんだ。家を追い出されるとき、妻が勝手に頼んだ業者に荷物も運び出されてしまった。カードの入った財布も株券も土地の権利書もまとめてトランクルームに放り込まれてしまって、私は何だかどうでもよくなって、その荷物を放っておいてしまったし」


「だ、だ、だって、仕事も家庭も全部なくなったって」

「資産がすべて奪われたわけじゃない」

 全員、言葉もなかった。

 むははー!
 出ましたよ、『黄門さま』の印籠が!
 じつは私は白鳥の子だったんです~という“正体暴露”の瞬間こそ、“貴種流離譚”最大の見せ場シーンですよね(笑)。
 ここに至って、三島も自分がじつは格差社会の“勝ち組”であり、不当にこんな底辺を放浪していただけというのを明かすわけです。
 はは~っと平伏する負け組のみなさん(笑)。
 胸のすく大どんでん返しってやつですかね。
 こうして主人公が元の身分にめでたしめでたしと本書もラストシーンへと続いていくわけです。

 今回、ちーけんにしては珍しくエロいシーンを全然紹介していませんが、渡海先生は基本的に非常にエロもうまい方なので、もちろんその辺も本書はおさおさ怠りありません。
 何てったって、現代の『水戸黄門』です。
 若くて美人でちょっと気位が高くて、でも最後はみんなのために一肌脱いじゃう『黄門さま』が、ぐっと年下の若きカメラマンにメロメロになってるわけですから、ええ、そりゃあもう(笑)。
 もちろん三島は初心っ子なわけですよ。
 奥さんとのセックスは義務的にこなしていただけで、伊原木と会って初めて本当に気持ちのよいセックスというのを教えられるわけです。
 年下攻めが好きな人には、けっこうたまらないと思います。
 ツンな美人受けが好きな人にも。

 さて、めでたしめでたしとなった本書ですが、本物の水戸黄門は、結局は自分が所属する徳川幕府という権力組織のあり方には何の疑問も抱かぬまま、次から次へと日本中を旅していくわけですが、三島は伊原木と、そして『伴茶夢』のみんなと出会ったことによって、これまでの自分の人生と、その基盤になっていた“強い者が勝つ。弱い者は負ければいい”という“勝ち組の論理”=新自由主義的経済思考に別れを告げ、新たな生き方に入っていきます。
 じつはそのあたりのエピソードが、本書には続編として掲載されています。
 結局、最後まで人間的なあり方としては優等生くんのままで、逆にまたそこが愛らしい三島なのですが、伊原木と出会ったことで確実に何かが変わったわけです。
 ある意味、ホリエモンになり損ねた男が本書の三島なわけですが、現実の日本社会にたくさんいるであろうそんな人たちに、これからの生き方を模索する一環として、ぜひ本書を読んでいただきたいものです(嘘)。
 それにしても、同じ“勝ち組”人間とはいえ、ちーけん的には、「ホリエモン受」や「村上世彰受け」はちょっと生理的に無理ですね。
 「ビル・ゲイツ受」なら、ギリギリ?
 どうでもいいんですけれど(笑)。
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