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「改正都条例」成立から1年で調べてみた――ページ数では約3割の大幅減! BLマンガの「性的表現」に大きな変化が出ていた


Category: 表現規制問題   Tags: ---
 昨年12月に東京都議会で青少年健全育成条例が可決成立してから、早くも1年が経ちました。

 ご存じのとおり、この「改正都条例」についてはマンガ界を中心に多くの反対の声がありました。
 それは、この条例がマンガやアニメに関して新たな「表現規制」を課す内容だったからです。

 条例では、(1)強姦など刑罰法規に触れる性交もしくは性交類似行為、(2)近親相姦の2つを「不当に賛美し又は誇張するように」描いていることが、「不健全図書」(いわゆる有害図書)指定の基準に新たに加えられました。
 マンガ雑誌やコミックスが「不健全図書」に指定されると、書店は本にヒモを掛けたりしたうえで「区分陳列」して販売しないといけません。
 いわゆる「十八禁」扱いです。

 こうなると、出版社やマンガ家からすれば本の売れ行きにも大きく影響しますから、「この場面は描かないほうがいいんじゃ…」と考えて、表現を必要以上に控えてしまいます。
 有名なマンガ家の先生方がそろって「自由な表現を規制する改正都条例には反対する」と声を挙げ、記者会見までされて反対運動を繰り広げたのも当然です。

 さて、この「改正都条例」でもっとも大きな影響を受けるのではと言われたのが、BL(ボーイズラブ)本の分野でした。
 くわえて、以前の記事でも書いたとおり、全国各地でBL本が「有害指定」されるケースが最近目立つようになってきています。
 この記事では、「改正都条例」の可決から1年という節目を受けて、BLマンガの分野で「性的表現」にどのような影響が出ているのかについて調べてみようと思います。

★BL雑誌で「エロ描写のあるページ数」は減った? 増えた?

 現在、BLマンガの分野では、月刊のコミック雑誌が5誌あります。
 『BE×BOY』『GUSH』『花音』『ディアプラス』『drap』の5誌です。
 まずは、これら月刊BL誌において、エロ描写の“ページ数”が「改正都条例」の前後でどのように変化したかを見てみようと思います。
 5誌全部…といきたいところですが、『drap』については我が家の書庫でバックナンバーが一部見つからなかったため(すいません…)、今回の調査からは除外しました。
 『BE×BOY』『GUSH』『花音』『ディアプラス』の4誌を、2009年10月号~12月号(=都条例成立の1年前)と、2011年10月号~12月号(=同じく1年後)について、ブログ主が手作業でページをめくって、エロ描写が何ページあるかを数えます。

 ここで問題となるのは、何をもって“エロ描写”とするかですが、各地の青少年健全育成条例において「不健全図書」の「包括指定」の基準に定められている程度の描写であるかどうかを基準としました。
 これは、例えば福島県の青少年健全育成条例では以下のように定められています。

第18条第2項 次に掲げるものは、青少年に有害な図書類とする。
一 書籍又は雑誌であつて、全裸、半裸若しくはこれらに近い状態での卑わいな姿態又は性交若しくはこれに類する性行為(以下「卑わいな姿態等」という。)を被写体とした写真又は描写した絵で規則で定めるものを掲載するページの数(表紙を含む。以下この号において同じ。)が二十ページ以上のもの(当該書籍又は雑誌の内容が主として読者の性的好奇心をそそるものでないと認められるものを除く。)又はページの総数の五分の一以上を占めるもの

 さらにざっくばらんに言えば、こんな感じです。

・キスはいくら激しくてもキス。エロ描写には数えない
・服の上から乳首をつねったりチンコを揉むのも、エロ描写には数えない
・快感に喘ぐ顔のアップだけでは、エロ描写には数えない
・明らかにセックスした後の場面でも、ピロートークだけならエロ描写には数えない
・オナニーはエロ描写に数える

 それでは、BL雑誌合計24冊を三日三晩かけて数えた結果を早速発表しましょう。
 それぞれの数字は、エロ描写のあるページ数/雑誌全体のページ数、になってます。

 誌名     09年10~12月号   11年10~12月号
-------------------------------
『ビーボーイ』 117p/1528p → 49p/1682p
『GUSH』  115p/1482p → 73p/1482p
『花音』    124p/1180p → 95p/1370p
『ディアプラス』 98p/1572p → 111p/1520p
-------------------------------
 4誌合計   454p/5762p → 328p/6054p


 BLを読んでる方ならおわかりのとおり、この4誌はBL界を代表すると言っていいメジャー雑誌ですが、なかなか興味深い数字が出てきました。
 『ビーボーイ』『GUSH』『花音』の3誌では、雑誌の総ページ数が維持または増えているにも関わらず、エロ描写のあるページ数は顕著に減っています。
 『ディアプラス』のみ、エロページ数が増えていますが、4誌合計では、エロ描写のあるページ数は27.8%減という結果になりました。
 『ビーボーイ』について言えば、エロ描写のあるページ数は、じつに半分以下になっています。

★「エロ描写のある作品数」も都条例改正前後で大きな変化が

 次に、同じ4誌で、「エロ描写が出てくる作品数」も数えてみたので、これも結果を発表します。
 ある作品の中で、1コマでもエロ描写があれば「エロ描写あり」として数えました。

 誌名     09年10~12月号   11年10~12月号
-------------------------------
『ビーボーイ』  24作品/54作品 → 13作品/53作品
『GUSH』   26作品/44作品 → 16作品/44作品
『花音』     22作品/43作品 → 25作品/57作品
『ディアプラス』 29作品/56作品 → 26作品/55作品
-------------------------------
 4誌合計  101作品/197作品 → 80作品/209作品


 この表を見ると、BL雑誌では“エロなしBL”な作品が増えていることがよくわかりますよね。
 BL読者のみなさまの“皮膚感覚”でも実感されているところではないでしょうか。
 『花音』のみ、エロ描写ありの作品数が増えていますが、これは総掲載作品数が増えているためで、実質的には減っているのはすぐおわかりいただけると思います。

 さて、ここまでで2つのデータを算出してみたわけですが、この数字を見て、みなさんはどう思われたでしょうか。
 ブログ主としては、「ほら見ろ!『改正都条例』のおかげでBLではエロが激減しているんだ!」とズバリ言いたいところですが(笑)、ここではあえてそのような結論は出しません。
 それは、現象としてメジャーBL4誌でエロ描写が減っていることは確かだと思いますが、BL雑誌の編集者たちが「改正都条例」に萎縮して、自分たちの雑誌からエロ描写を減らそうとしたのかどうか、ブログ主にはわからないからです。
 早急な決めつけはよくないですよね。
 もちろん、疑いは持ってますけれど(笑)。

★BLの歴史から見ても、特筆すべき事態が起きている

 ただ、このような「エロ描写のあるページ数」ならびに「エロ描写のある作品数」が大きく減ったことは、BLの歴史から言うと、非常に重要なことではあると思います。

 じつは、3年ほど前に、ブログ主は今回と同じような“手作業でページ数を数える”という方法を使って、ある調査をしたことがあります。
 それは、1996年に発行されたBLマンガ&小説と、2006年に発行されたBLマンガ&小説を比較して、エロ描写の量がどれだけ増えたかを比較してみるというものでした(記事はこちら)。
 その時わかったことは、BLマンガにおいては、一冊の単行本の中で出てくる“エロ場面”が、10年間で2.9回→6.3回へと約2.2倍になり、BL小説においては、2.9回→5.1回と約1.8倍になっていたということでした。
 ブログ主は、BLの歴史とは一面ではエロ描写の量と質の開拓の歴史だったと常々思っています。
 その意味で、十分に実感と合う結果が出て非常に満足したのですが、このようにBLというものが本格的に世の中で読まれるようになって以来、ほぼ一貫して増えてきていたBL本でのエロ描写の「量」が、「改正都条例」の成立の前後でついに減少を見せたことは、ある意味ではBLの歴史においてターニングポイントとなる重要な出来事だと思うわけです。

 少し細かいことについても言及しておきましょう。
 上のほうで、月刊BL4誌における「エロ描写のあるページ数」と「エロ描写のある作品数」を出したわけですが、この2つのデータを使うと、それぞれの雑誌における「エロ描写のある作品1作あたりのエロ描写のページ数」が計算できますよね(わかりにくくてすいませんが割り算すると出てきます)。

 たとえば、『ビーボーイ』だと、エロ描写のある作品では、09年には1作あたり4.9pのエロ描写があり、11年には1作当たり3.7pのエロ描写があったということが計算で出てきます。
 つまり、『ビーボーイ』においては、全体のエロページ数が減った(117p→49p)だけでなく、1作あたりの“エロページの長さ”も減っているということになりますね(笑)。
 大ざっぱに言えば、09年には、ひとたびエッチが始まると大体5pは続いたのに、11年にはそれが1pちょっと短くなってしまったということになりますから。
 1回のエッチの描写の長さが減ると、当然そこの中で描かれるあれやこれやのパターンも減りますから、ブログ主としては“エロの濃さ”も薄まっているのではないかしらと思う次第です。

 そして、『花音』でもこの傾向は同じです。
 09年には、エロ描写のある作品においては、1作あたり5.6pのエロ描写があったのですが、これが11年には1作あたり3.8pになってしまいました。
 ほぼ、1回のエロページの長さが2p減った計算になりますね。
 『花音』も、雑誌全体のエロページを減らしたのみならず、作品ごとのエロページ数も減らしているわけです。

 ところが、『GUSH』で同じ計算をしてみると、逆の傾向が出てきます。
 09年には、エロ描写のある作品においては、1作あたり4.4pのエロ描写があったのに対して、11年にはそれが1作あたり4.6pと微増しています。
 つまり、『GUSH』は雑誌全体のエロページは減らしつつも、作品ごとの“エロの濃さ”は維持しているというわけです。

 そして、4誌の中で唯一、雑誌全体でのエロページ数が増えていた(98p→111p)『ディアプラス』では、エロ描写のある作品における1作ごとのエロページ数も、09年が3.4pだったのに対し、11年には4.3pと大きく伸びています。
 『ディアプラス』は、他誌でエロ描写がどんどん減っていく中で、全体のエロページ数も、1作あたりのエロページ数も増やしていたというわけです。
 ただ、絶対的な数値で見ると、もともと09年時点での『ディアプラス』は他誌にくらべてエロページ数が少なく、ブログ主の印象としても「エロが少ない雑誌」というイメージでした。
 そのため、4誌で唯一エロページが質量ともに増えたとはいえ、これでようやく他誌並みになったというのが正しいところかとブログ主は思います。

★さらに、BLマンガに登場する「性器描写」の数にも異常が起きていた

 少し、本題と外れる話が長くなってしまいました。
 ここまで読んでいただいて、「改正都条例」の成立前後で、メジャーBL誌全体としてはエロ描写が減っていること、その中で各誌がそれぞれの方向でエロの量や濃さを増減させてきていることはご理解いただけたと思います。

 先ほど、このような“エロ削減”の動きを、「改正都条例」と関係があるかどうかは内部の事情がわからない以上、早急に決めつけるべきではないと書きました。
 BL出版社や編集者の“意図”がわからない以上は、速断すべきではないと。

 ところで、上に書いた調査のために“手作業でのエロページ数え”をやっているなかで、ブログ主はあることに気付きました。

「BLマンガに出てくるちんこの数が減っている気がする…」

 BL好きには常識ですが、BLマンガでは結構あられもなく同性同士の性描写が描かれます。
 それにもかかわらず、いわゆる「十八禁」扱いではなく一般図書として販売されていることが、そのことに対する是非は別として、現在のBL本をめぐる最大の法的な問題点なのですが、これまでBL本のなかで「ちんこ」=性器描写はごく普通に描かれてきました。

 そこで、ブログ主は上記4誌のなかで描かれる「ちんこ」の数が「改正都条例」の成立前後でどう変化したのかも今回数えてみました。
 結果は以下の通りです。

 誌名     09年10~12月号   11年10~12月号
-------------------------------
『ビーボーイ』   73本      →   15本
『GUSH』    84本      →   39本
『花音』     121本      →   30本
『ディアプラス』  50本      →   60本
-------------------------------
 4誌合計    328本      →  144本


 もちろん、性器描写の多くには大なり小なり「修正」がくわえられています。
 今回は、修正があろうとなかろうと、とにかく画面の中にちんこが描かれていれば、1本として数えました。
 マンガ家さんがもともと描いてないような場合、例えばうまく腕や足やシーツで性器部分を見えないようなアングルにしてあったり、なんて言うか女性の股間のようにすべすべに最初から描いてあるような場合は、これはちんこが描かれてないものとして、本数には数えませんでした。

 上の結果を見ると、これも顕著に「BLにおける性的表現の減少」の一側面がデータとして表れていると思います。
 4誌全体で見ると、じつに56%の大幅減です。
 とくに、『ビーボーイ』においては、画面上からちんこが絶滅する危機に瀕していると思います。

★BLにおけるエロ描写に質的な変化も起きているのか?

 先ほども書いたとおり、この「ちんこ」の本数、上品に言えば「性器描写」の数を数えてみようと思ったのは、最初の“ページ数え作業”をやっている時でした。
 11年発行分の各雑誌をめくっていると、09年発行の雑誌と比べて、明らかに性器の描写されたコマが減っている気がしたのです。
 つまり、性的描写の生々しさが減り、何だか昔の少女マンガにおける「エッチ」の表現を見ているような感覚があったのでした。
 そこで、またもや一晩かけて全誌のちんこの数を数え直してみたのですが、これほどはっきりと数字に出るとは思いませんでした。

 先ほどの「エロ描写のページ数」が、BL本におけるエロ描写の“量”をあらわすデータだとすれば、その中で描かれている「ちんこ」の本数は、それぞれのエロ描写がどれだけ“ハード”なのかについてのメルクマールになっているとブログ主は考えます。
 それは、性器描写が出てくるシーンというのは、例えばフェラチオを描いた場面だったり、お互いの手による性器愛撫の場面だったり、挿入された性器のアップの場面だったりと、どちらかといえば、主人公2人の崇高な愛の交わりとしてのエロ描写ではなく、肉体的な接触による快感描写としてのエロを描いている場面であることが多いからです(わざわざ力説するようなことでもないですが・笑)。

 そう考えていくと、「エロ描写のあるページ数」が09年と11年では全4誌合計で454p→328pとなり、じつに27.8%の大幅減になったことは先ほどご報告したとおりですが、その中で描かれる性器描写の数が、328本→144本の56.1%減という、ページ数のマイナス幅を大きく大きく上回る減少となったことは、BL雑誌におけるエロ描写が“淡泊”になりつつあることを表しているのではないでしょうか。
 たしかに、ブログ主の感覚としても、最近のBL雑誌のエロは生々しさがないなぁとはずっと思っていたところでした。

 そして、本数だけではありません。
 今回、ちんこだけに注目して「ちんこが1本~ ちんこが2本~ ああ…1本足りないぃいい(何がだ)」とえんえんBL雑誌のページをめくって数えるうちに気付いたことがあります。
 09年と11年のBL雑誌では、そもそも登場する性器描写の数が減っただけではなく、性器描写に対する「修正」の度合いが激変しているのです。

 09年のメジャーBL4誌では、画面に描かれる性器はほぼ無修正ですが、11年に発行されたBL誌においては、逆に性器全体が大きな白抜きやボカシなどで消されています。
 読者にはそこに性器が描かれているということはわかりますが、性器の輪郭線すらほとんど見えないようになっていることがほとんどなのです。
 もし、お手許に09年以前のBL雑誌と最近のBL雑誌をお持ちの方がいたら、ぜひ見比べてみてください。
 とくに同じ作家さんのマンガで“前後”を比べてみると、最近のBL雑誌での性器部分への修正がどれだけ大きくなっているかがよくわかると思います。

 これは本当に隔世の感がある「変化」です。
 09年のBL雑誌においては、性器部分のアップや、中には性器に走る血管までが描かれた作品もありました。
 基本的にちんこの輪郭線は、ほとんどの作品でわかるようになっていたのです。
 対して、11年のBL雑誌においては、修正が大きすぎて、よーく目をこらさないと、ちんこを見落としてしまうことがしばしばでした。
 だって、完全に消されちゃってるんですもの(笑)。
 だから、攻めが受けのちんこをシュッシュしてあげるような場面でも、攻めの手と、その手が動いていることを示す効果線だけがコマの中に残っていて、肝心のちんこは消されてしまっているために、攻めの手が何もない空間で輪っかを作ってシュッシュしているように見えちゃったりする場面がたくさんあります。
 また、ちんこから発射された精液だけが残っていて、肝心のちんこは修正で消されてしまったために、突然虚空から精液が飛び出して受けの顔にかかっちゃってるように見えるコマもありました。

 つまり、BLマンガの分野においては、「改正都条例」を挟んだこの2年間で、そもそも性器描写のある場面自体の数が減ったうえに、そこで描かれるちんこも修正で消されて、あるんだかないんだかわからないという状態になっているというわけです。

 ブログ主が数えた際の感覚としては、とくに『ビーボーイ』などでは、09年にはそれなりにあったフェラチオ場面などが激減したという印象があります。
 また、これは4誌すべてに言えますが、いわゆる「ずっちゅずっちゅ」なんていう擬音とともに描かれる、受けキャラの後孔に攻めキャラの肉棒が出入りする場面のアップ、あれが激減したように感じています(きわめて真面目な話ですよ・笑)。

★都条例改正が問題になるにつれ、性器への修正がどんどん大きく…

 では、このような性器描写の数の減少および、性器描写に対する修正面積の増大については、これをどのように評価するべきなのでしょうか。

 前者については、最初の調査と同じく、BL編集者が作家の先生方に「すいません、『改正都条例』も施行されますので、ちんこを描く数を減らしていただけますか…」と頼んだかどうか、ブログ主にはまったくわかりませんから、これをすぐに「改正都条例」の影響によるものと言うことはできません。
 しかし、後者については、性器描写に対する修正の面積が大きくなったことを以て、これを「改正都条例」の影響だということは、決してこじつけではないと思います。

 それは、このような「性器描写への修正面積の拡大」がいつごろから始まったのかを確かめるとよくわかります。

 『ビーボーイ』と『GUSH』のバックナンバーを遡(さかのぼ)ってみましょう。
 そうすると、『ビーボーイ』についてはだいたい2010年の6月号くらいから、『GUSH』については2010年の11月号くらいから、急に大きな修正が性器描写に対しておこなわれるようになったことがわかります。

 東京都議会に都条例改正案が最初に出されたのが2010年の2月でした。
 その後、一度は「非実在青少年」という定義が問題になって6月に都議会で改正案が否決されたものの、再度提出されて最終的に可決成立したのが2010年12月です。
 「改正都条例」が騒がれていくのと、BLメジャー各誌で性器描写への修正が大きくなっていくのは、軌を一にしているわけです。
 それ以前の2010年の3月号くらいまでは、従来どおりの“ほぼ無修正”だったものが、「改正都条例」の問題が騒がれるにつれ、急に修正面積が大きくなっているのです。

 その間には、6月に大阪府でBL雑誌が一斉に「有害指定」された事件もありました。
 その際に、『drap』が誌面でコマの半分以上を白く消してしまうような(セックスを描いた場面で腰から下が全部消されたりしていた)過剰修正をおこなって問題になったことは、みなさんもよく覚えておられると思います。
 性的な描写が社会的に問題になると、性器描写への修正を大きくして「対策」とするのは、BL業界に共通した「手法」のように思います。

★問題は「改正都条例」だけではない…根本的な対策が必要

 今回の調査で、「改正都条例」の成立と前後して、(1)エロ描写のあるページ数も作品数も減った、(2)性器描写の数も減った、(3)性器描写への修正が“ほぼ無修正”から“ほぼ全消し”に変化した、の3点について大きな動きがあったことを確認してみました。
 そして、ブログ主の考えとしては、(1)と(2)についてはそれが「改正都条例」による影響かどうかは決めつけられないけれど、(3)については「改正都条例」の成立を受けてBL業界側が「対策」としておこなっているものではないかという推論をしました。

 昨年来、マンガ界そしてBL界を騒がせる都条例改正問題については、ブログ主は何回かブログで記事を書いてきましたが、そのたびに同じことを書いています。
 それは、

「BL業界は何の対策もしてなさすぎ。そして、読者への情報公開をしてなさすぎ」

 とゆーことです。

 都条例改正の動きと合わせるように、全国各地でBL雑誌やBLコミックスが「有害指定」されてきたことは、以前の記事でも書いたとおりです。
 BLというジャンルは、誕生してから長い間、出版界の隅っこですくすく育ち、人目に触れない(とみんなが思っていた)なかでいつの間にか大きな成長を遂げてきました。
 それが今では、才能ある作家さんを輩出するマンガ界の注目分野にもなり、市場的経済的にも無視できない存在になっています(書店でBL本が置かれている棚の広さを見てみましょう)。
 そうなれば当然、社会的なさまざまな規制の網にも引っかかりますし、より強制力のある法的な規制の対象にもなってきます。
 ところが、これも以前の記事で詳しく書きましたが、BL本というものの法的な位置づけは非常に不明確です。
 いわゆる「十八禁」扱いではないのに、激しい同性同士の性的描写が描かれ、一般図書として未成年にも普通に販売することが可能だからです。
 かつて、一般書店でBL本が置いてある場所を探すこと自体が大変だった時代は、それでも問題は起きませんでしたが、今ではそうはいかなくなっています。
 BL本は、ここらで一度きちんと“決着”をつけなければいけない問題をたくさん抱えているのです。

 ところが、寡聞にしてブログ主は、このような問題についてBL出版社サイドが、何か動いているということを聞いたことがありません。
 いまだ、BL業界には出版社の業界団体はおろか、懇談会さえありません。
 都条例が改正されて環境が激変したから…というだけではなく、より大きな枠組みの問題としてBL本というものをどうしていくのか、それを曖昧なままにしているBL業界の現状こそが、さまざまな問題の元凶だとブログ主は思っています。

 「改正都条例」の問題にしてもそうでした。
 BL本の誌面で、この問題への反対の声を挙げたBL雑誌は微々たるものでした。
 あとは、リブレや白泉社がHPで反対の声明をアップしていたくらいでしょうか。
 また、2010年6月に起きた大阪府によるBL雑誌への一斉「有害指定」に際しては、『drap』が誌面に過剰な修正を施して騒ぎになりましたが、マンガのコマの半分以上を白消しするような異常な修正をおこなったことについて、どのような事情でどのような意図があったのか、編集部からはその後も何も説明はありませんでした。

 そのような状況のなかで、今回調べてみると、やはりと言うべきか、メジャーBL4誌の誌面では、性的描写に関して大きな変化があったことがわかりましたが、読者はこれを「はい、そうですか」と静かに受け入れなければいけないものなのでしょうか。
 ブログ主はいまとても不安です。
 自分が大好きなBLというものが、自分ではどうしようもないところでいつの間にかこれまでと違ったものに変化させられてしまうのではないかと思ってしまうからです。
 たかがエロ描写だろ、と笑うことはまったくの間違いです。

 BLというジャンルが確立したごく初期、1990年代の半ばまでは、BL本にエロ描写があることは決して一般的ではありませんでした。
 そこから、作家さんの新たな分野への開拓精神や、出版社の戦略、読者のニーズなどさまざまな要因が絡まって、BL本は現在のような形になってきたわけです。
 では、今のようなエロ描写が「普通」なBL本から、エロがなくなっていってもそれは昔に戻るだけなのだから、気にするようなことではないのでしょうか。
 それは違います。
 作家さんが新たな挑戦として誰も描いたことがなかったようなエロを描こうと思えば描けた時代と、頭の上に見えない天井がかぶせられていて、描こうと思っても描けない時代とでは、出来上がるものは同じかもしれませんが、それは「表現」としては全く異質なものです。
 「表現の自由」を守るとは、こういうことです。
 描こうと思えば描ける状態を、自らの手で勝ち取ることが「表現の自由」を守るということです。
 しかし、今のBL界を見ると、だんだんと狭くなっていく周囲の状況に合わせて、どんどん身体を縮めているだけのように見えます。

★「性器への修正」を大きくしても、有害指定に対しては無意味

 また、これは声を大にして言いたいですが、「青少年健全育成条例」による「有害指定」を避けるための対策として、性器描写への修正部分を大きくしたのだとしたら、まったくの勘違いもいいところです。
 先ほど、福島県の青少年健全育成条例を一部載せましたが、条文からもわかるとおり、「有害指定」になるかどうかは、マンガの中で性交や愛撫の場面が描かれているかが問題とされるのであって、そこに性器が描かれていてもいなくても、「有害指定」に指定されるかどうかについては関係ありません。
 「有害指定」を避けたいのなら、ちんこを隠すのではなくて、エッチ場面そのものを減らさなければいけません。
 性器への修正の有無が問題とされるのは、刑法上の「わいせつ物頒布罪」との関係です。
 BLマンガでの性器の描写に大きな修正を入れることは、「わいせつ物頒布罪」などに問われないようにするためには有効な手段ですが、「青少年健全育成条例」による「有害指定」について言えば、本質的には無関係なのです。
 この点についても、ブログ主としては、「改正都条例」の成立と前後してBLマンガでの性器描写への修正が極端に大きくなったことは、いったい何を目的としてのことなのか、理解に苦しみます。
 もしBL出版社サイドが本気で、「改正都条例」や全国でのBL雑誌への「有害指定」への対策として、性器描写への修正拡大をおこなっているとしたら、それは単に世の中や権力機関へ「とにかく自粛」の姿勢を見せるだけの意味しかありません。
 これは単なる「おもねり」です。
 「表現の自由」を主張すべき者として、一番やってはいけないことです。

 今回調べてみてわかった前掲(1)(2)(3)のようなBLマンガの画面におけるさまざまな変化が、単にブログ主の“気のせい”によるものだったら万々歳です。
 しかし、もしBL出版社や編集者の何かの意志の結果としてこのようなことがおこなわれたのだとすれば、そろそろその意図について読者に何か説明があってもいいころではないでしょうか。
 繰り返しますが、知らぬ間に自分が毎日読んでいるBL本というものの表現の中身が変質してしまっているとしたら、ブログ主には耐えられないからです。
 待ってさえいれば嵐は通りすぎる、とにかく身体を小さくして我慢しよう――。
 そのような思考の結果が、今回の調査結果として現れたものではないことを、ブログ主は強く強く願っています。
 BLに今必要なのは、世の中に従って身体を小さくすることではなく、自分たちが思い切り手を振り足を動かせるような場所を確保することなのです。

 「改正都条例」の成立から1年。
 BLマンガにおいてもしかしたら何か「表現」の変質が起きているのではないか、ということしか、ブログ主の立場では言うことができません。
 そして、これからさらにどのような方向へBLマンガが進んでいくのかも、わかりません。
 この問題について考え続け、そしてそれぞれの立場で行動を起こせる人間が1人でも多くいることだけが、BL本の未来についての助けになるとは思いますが、半分諦めに似た気持ちもあります。
 はっきり言えば、今回ここに書いたようなことは、エロ表現がBL雑誌で減っているというところからして、BLを読んでる人間にはすでに常識ともいえることでしょうし、あらためて長々書く必要があるのかとも思いましたが、何か目に見える形で紹介する意味はあるだろうと思い、記事にしてみました。
 そうしないと、ずるずると何もなかったかのように世の中が進んでいってしまいそうだったからです。

 このような現状報告が、ここまでお読みくださったみなさまの思考の一助になれば、そしてそこから新たな何かが生まれる契機にでもなれば、記事を書いたものとしては、これにすぐるものはありません。
 相変わらずの長文記事で恐縮ですが、お読みくださってありがとうございました。

※BL本と「青少年健全育成条例」「有害指定」については、制度が非常に複雑でわかりにくいことこの上ありませんが、もし詳しく知りたい方がいらっしゃいましたら、こちらの記事でわかりやすくまとめてあります。

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Comments

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乙っした!
 
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作業お疲れ様です。
とても良い参考になりました。
 
あざっす、そしてヤバス 
ども。初めてあなたのブログを読みました。関東の僻地に住んでいる腐女子です。最近条例の動きが鈍くなったので、油断していたのですが、まさかこんな事になっているとは思いませんでした。「クチコミ」という投稿雑誌を読んでいるのですが、毎号新刊案内が載っていて、「あ、立ち消えになったのかな」と思っていました。しかしまさかBL雑誌の規制がこんなに厳しくなっていたとは………。
 

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