ネクラで眼鏡でキモオタな優等生は“受け”るとイイよ!

委員長、地味な真面目くん、オタク少年…そんな“優等生受け”BLが大好きな腐男子のブログです~。

 

[レビュー]恋する男子は豹変する! 花が咲いたように美しく変身する男子の姿から目が離せない… 福山ヤタカ『すべては恋によるもの』


Category: レビュー コミックス   Tags: 受け-変人  受け-天才  受け-地味・ダサイ  受け-眼鏡  受け-生徒会長・委員長  特徴-ファンタジー  ●ハ行-福山ヤタカ  
すべては恋によるもの (バーズコミックス ルチルコレクション)すべては恋によるもの (バーズコミックス ルチルコレクション)
(2011/03/25)
福山 ヤタカ

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 その街の小さなパン屋さんは、いつも店の奥に引っ込んで黙々とパンを焼いている地味男子。
 伏し目がちで控えめで、人と話すのが苦手なのか、接客は一緒に店を切り盛りしてくれている高校以来の親友に任せきりです。

 ところが。

 一日の仕事を終えて店を閉めた2人が「お疲れさま」と言って一息つきあうと、彼はずっとかぶっていた大きな帽子を脱ぐのです。
 その瞬間、腰まであるような長く美しい黒髪が、中からすべり落ちてくるではありませんか。
 

 そこに立っているのは、さっきまでの控えめで地味な彼ではありません。
 碧なす黒髪を身にまとった美女のようなたたずまいの男子が、突然そこに出現したのです。

「伸びたね髪…。うるさくない?」

「だってお前がっ」

「そ。俺が切らないでって頼んだんだよね。もったいないって」

「そうっ…だぞ」


 まるで女の子のように長い自分の髪が恥ずかしいのか、彼は頬を赤らめて、そっぽを向いています。
 そんな彼を、大事なものを守るような眼差しで見つめる親友。
 2人の間には、ぎこちないような、でも甘酸っぱい空気が立ちこめて――。

 はううっ!
 表現できない!
 文字だと全然マンガの中の空気感を表せない!
 くそぉぉおおお!!!!!
 上の場面は、福山ヤタカ先生の初コミックス『すべては恋によるもの』の一場面です。
 ただの地味なパン屋さんとしか見えなかった主人公(受)の笹森が、帽子を脱いだ瞬間、まるで花が咲いたように美しい男子に変貌を遂げるこの場面はとてもとても印象的で、ちーけんは初めてこのお話を読んだときに、しばし画面から目を離すことができませんでした。

 主人公(受)の笹森は、無口で人付き合いが下手な自分をフォローしてお店を切り盛りしてくれる親友の寿成(ひさなり)に、高校のころからずっと恋をしています。
 でも、決してその気持ちを表に出したことはありません。
 自分とは正反対に、人から好かれる明るい性格と華やかな外見を持ち、大学まで出たのに自分のために街に帰ってきて一緒にパン屋さんを開いてくれた寿成のことを、笹森は自分が彼の未来を縛ってしまったのではないかと、後悔の気持ちでいっぱいだからです。
 でも、大好きな人と一緒に働き、暮らせる今の生活はとても幸せで、せめてこの毎日だけは続いてくれるようにと、笹森は願っているのでした。

 だから、読者の目には、長い黒髪が滑りおちるとともに美しいたたずまいへ“変身”した笹森の姿は、まるでその秘めている恋心が彼の中から溢れだし、花開いてしまったのではないかと映ります。
 寿成に「この心に気づいてください」と訴えるかのように…。
 「ずいぶん髪が伸びたね」と寿成に言われて頬を染める笹森は、月並みですが「可愛い」としか言いようがありません。

 このコミックス、福山ヤタカ先生の『すべては恋によるもの』が発売されてからすでに3ヶ月は経ちますが、本はいまだにちーけんの枕元に置いてあります。
 しみじみ良いBLマンガなのです。
 何度読んでも。

 ところが、このコミックスはとてもとっつきにくいのです。
 正直なところ、表紙のデザインを見たときは、本屋の店頭で買おうかどうかかなり迷いました。
 BLっぽい表紙に見えるけど中を読んでみたらただのファンタジーマンガだったりするウィングスコミックスやラポートコミックスみたいな雰囲気を漂わせているのです(わかりにくい例えですいません・笑)。

 さらに困ったことに、本を開いてパラパラめくってみても、福山ヤタカ先生のコマ割りやフキダシの置き方には独特の味があって、あまりBLマンガに見えないのです。
 言葉は悪いですが、花とゆめ系の少女マンガにたまにあるような、女の子向けの(エセ)ファンタジーマンガなのかな? みたいな印象を画面からは受けます。
 もしかしたらBL風味なのかもしれないけど、なんかあんまり期待できなさそうだよな~みたいな。

 でも、買ってよかった!!!!!

 読み終わってみれば、上に書いたようなことすべてが、福山ヤタカ先生の中からあふれだすオリジナリティ以外の何者でもないことがよくわかりますし、逆に今のBL界広しといえども、これと似たテイストのBLマンガは一冊もないと断言できます。
 このコミックスでしか読めない世界があるから、ちーけんはいまだにこの本を手元から放せないのです。
 しかも、しっかりと「BL」しているお話ばかりなのが嬉しいところ。
 本当にめっけものな一冊に出会えたと、神に感謝しているちーけんです(嬉)。

 さて、このコミックスは完全な短編集になってまして、8つの作品が収められています。
 上でちょっとだけご紹介した表題作『すべては恋によるもの』以外にも7つのBLマンガが入ってるというわけです。
 どれもお気に入りの作品ばかりなのですが、全部読んでみて、福山ヤタカ先生はある“モチーフ”の扱い方が抜群に上手いなーとちーけんは思いました。
 それは、古来より少女マンガ界に伝わるあの有名モチーフ――「眼鏡を外したら美少女だった!」です(笑)。

 最初にご紹介した、地味男子なパン屋さんの笹森が豹変する場面はまさにその典型ですが、福山ヤタカ先生のマンガには、短いお話のどこかに、読者を驚かせるこの仕掛けが必ず入れられています。
 えっ、このキャラって本当はこんな子だったの…!? という。

 コミックスの最初に収められているファンタジー風な短編『勘違染』でも、このモチーフが活かされています。
 主人公(攻)のニケは、城下の裕福な反物屋の次男坊。
 店を継いだ兄の下で働いていますが、一番大事な仕事は、反物屋が抱える一番の人気染め物作家・タタラナの世話でした。
 タタラナは町中の反物屋が「ウチにも先生の染め物を卸してください!」と押しかけるほどの人気作家ですが、天才という人種にありがちな、街一番の変わり者。
 ニケの家にしか染め物を売らないかわりに、

「今すぐつきたて餅が食べたい。あっまーいきな粉をつけて食べたい」

 とか、

「のどが渇いたから、カナル山の湧き水を飲みたい(=すぐに汲んでこい)」

 とか、

「肩が凝った。整体師の免許を取ってこい」

 とか、無理難題を吹っかけてくるのです。
 でも才能は本物です。
 ニケは、タタラナが染めた反物を初めて見たとき、魂を奪われたように見とれてしまったのでした。
 タタラナの美しい外見を見て女だと勘違いしたニケは、そのまま勢い余ってタタラナの手を握り、こんな告白をしてしまったほどです。

「貴方の染めは貴方自身を映したかのように美しい…好きです」

 勘違いの告白は、タタラナの「みだりに私に触れるな。無礼者」という一刀両断の返答(その声で男だとわかった)で、一瞬にして黒歴史に代わってしまいましたが、実家の反物屋はタタラナの染め物がないと商売になりません。
 こうして今でもニケはタタラナの世話をしに、毎日家へ通っているというわけなのでした。

 でもニケは、城下の他の反物屋を相手にせず、自分だけを相手にするタタラナに、ちょっとだけ優越感を感じています。
 なんのかんの言っても、タタラナが我がままを言うのはニケにだけなのです。
 そして今日も今日とてニケはタタラナの家を訪れてその相手をしているのですが――。

 天才。
 だけどこちらの言うことは聞いてくれず、無理難題ばかり押しつけてくる変わり者。
 ところがストーリーの後半では、このタタラナが、まさに“豹変”するんです。
 花の咲くような美しい変身を遂げた笹森と同じように…いやそれ以上の!

 今回は、あえてその場面の詳細は書きません。
 ぜひ、みなさんにご自分の目で読んでいただきたいから。
 でも、ちょっとだけ種明かしをしておくと、タタラナはニケの勘違いの告白を受けた時から、もうずっと自分はニケの恋人になったつもりでいたのです(可愛い!)。
 だって、その時のタタラナのセリフを思い出してみてください。
 「触るな。無礼者」とは言ったけど、告白を断ってはいないでしょう?(笑)
 人付き合いの下手な、変わり者で天才のタタラナは、そんな自分に真っ正面からぶつかってきたニケの告白を許し、受け入れていたのです。
 勝手になかったことにして“黒歴史”にしていたのはニケのほうだけ。
 タタラナは、もうニケと恋人になったつもりで毎日を過ごしていたのです。

 ところが、当然のことながら、それが“勘違い”だったことが発覚する日が来てしまいます。
 だって、ニケは女と間違えて告白しちゃっただけで、そんな気はさらさらなかったんですからね。
 そこで、大変なすったもんだがあった後――ここの部分のお話がまた読者の胸を悶えさせる素晴らしいものなのですが――、タタラナはそれまでお話を読み進めてきた読者がとても想像もできなかったような“本当の姿”を見せてくれるのです。
 とても恥ずかしそうに、でも大胆に。
 ちーけんは、この場面でもノックアウトされてしまいました。
 タタラナが花開かせたこの可愛さは何なんだ、と!
 変わり者の“優等生”が、たった一人の男のためだけにふんわりと咲かせたこの綺麗な花は、あまりに美しくて、コミックスの画面をちょっと正視できないくらいです(笑)。
 福山ヤタカ先生の術中に完全に読者はハメられてしまうのでありました。

 今回のレビューではあえて「優等生受け」という言葉をあまり使わないようにしましたが、上の2作のあらすじを読んでいただくと、どちらの作品もちーけんが愛好するそーゆー系統の作品だというのはわかっていただけたんじゃないかと思っていますが、いかがでしょうか。
 そして、ちーけんがBLにおいて「優等生」というキャラに求めるのは、まさにこの“豹変”なのです。
 地味だったり、ネクラだったり、変わり者だったりするクラスの優等生が、たった一人の男によって、まったく別の生き物に変わってしまう。
 福山ヤタカ先生が、ちーけんと同じ意味での“優等生受け”をお好きかどうかは作品からはすぐには判断できないのですが(もっともっといろんな要素が福山ヤタカ先生のマンガには詰まっています)、“優等生受け”を好きな読者が読むと、「ああ…求めていたのはこれなんだ」と膝を叩き壁を叩き天に叫びたくなるようなワクワク感がこの中には詰まっています。

 じつは、コミックスの最後に収録されている学園ものの短編『こうそく日和』は、主人公(受)がまさにクラス委員長という設定だったりもします。
 お勉強ばっかりで人間知らずで地味眼鏡な「委員ちょ」が、同じクラスの「不真面目なのに成績がよくて、女性にだらしがないのに人気はある男」(委員ちょ本人談)な同級生に、不思議なことを仕掛けるお話なのですが、またこの作品での委員ちょの豹変ぶりがたまりません。
 これは福山ヤタカ先生のすべての作品に言えますが、ストーリー全体をとても幸福な感情が覆っていて、読み終わった後は、ちーけんは思わずバンザイをしたくなりました(笑)。

 さて、最初にご紹介した控えめで可愛いパン屋さん・笹森と、親友である寿成の恋は、最後どうなったのでしょうか。
 まるで心の中に隠していたものが溢れだしたように変身した笹森の恋心は、寿成に届いたのでしょうか。
 ぜひ、ぜひ、その結末はみなさんの目で確かめてみてください。
 その時あなたは、“恋する男子”の本当の可愛さというのがいったいどんなものなのか、恐るべき破壊力とともに身を以て知ることができると思います(笑)。

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