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BL本と「青少年健全育成条例」の関係を考える――各地で次々とBL本は有害指定されており、さらに広がる動きがこの数ヶ月で見えてきた


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 昨年12月15日に、マンガやアニメに新たな規制を導入する東京都の青少年健全育成条例の改正案が都議会で可決・成立してから、約2週間が過ぎました。

 今回の都条例改正のような、日本国憲法で保障されているはずの「表現の自由」の範囲を、国や都といった権力側の人々が少しでも狭めようとして作る法律のことを、大きくまとめて「表現規制法制」と呼びます。
 以前の記事でも書きましたが、98年に警察庁が「インターネット上のポルノの氾濫から子どもたちを守る」という大義名分のもと、初めてネット上での「表現の自由」を規制した風営法改正を国会で強行した際に、ある縁があって、ちーけんはその反対運動に関わりました。
 以後、一般市民の電話や電子メールを警察などの捜査機関がのぞき見することを認める「通信傍受法(盗聴法)」の反対運動や、同じく市民の自由な表現を規制する内容を持つ「共謀罪法案」などの反対運動にも関わりました。
 そんな経緯もあり、自分は「表現規制法制」については多少なりとも詳しいほうだろうと思っていましたが、不勉強なことに、都道府県レベルで制定されている青少年健全育成条例については、ロクな知識を持たないままでした。

 そういうわけで、今持っている知識は、3月の「非実在都条例」騒動の際に慌てて勉強したものです(恥)。
 学んでわかったのは、東京都に限らず、青少年健全育成条例というものが、非常にわかりにくい法律だということでした。

★青少年健全育成条例は、そしてとくにBL本との関係はとてもわかりにくい

 私、大学は法学部で学んだので、学位は法学で取ってます。
 多少は真面目に勉強したほうで、それなりに自信もあったのですが、いやまあ青少年健全育成条例というものの、複雑怪奇なこと。
 私と同じく、今回初めて、東京都の青少年健全育成条例の条文を実際に読んでみたという方は多いですよね。
 読むとわかりますが、もともとの条文に、時代が進むに連れて新しい条文がどんどん付け加えられたため、さまざまな概念や制度が入り組んでいて、まるで建て増しを繰り返して従業員ですら火事になったら逃げ出せなくなってる田舎の温泉旅館みたいな構造になってます(笑)。

 さて、これまでさまざまな方が指摘されていますが、今回の改正都条例でもっとも影響を受けるのは、当ブログがメインテーマにしています「ボーイズラブ(BL)」でしょう。
 BL界は、今年施行される改正都条例に対峙しないとならないだけでなく、これからは、都条例を成立することを許した世の中全体の空気とも向き合っていかないとなりません。

 ところが、青少年健全育成条例について学んでみると、これがBL本にはどのように適用されるのか、今いちよくわからないところがあります。
 「有害指定」(=不健全指定)ひとつとっても、東京都の青少年健全育成条例の中で「表示図書」という仕組みがある男性向けのエロマンガと、そのような制度を持たないBL本とでは、本来は同列に論じることができません。
 また別の問題として、私ちーけんも以前から言ってますが、BLマンガにおける性描写が刑法上の「わいせつ物頒布罪」に当たるのではないかという危惧もあります。
 また、それらのことを考える前提として、「男性同士の恋愛ストーリーを主に女性読者が読んでいる」というBL本の特殊性をどう考えるかという問題もあります。
 
 なぜBL本だけが、「今いちよくわからん」ということになるのでしょうか。

 BLが商業誌の世界で一つのジャンルとして確立されてからほぼ15年ほどが経ちましたが、当初は「日陰のジャンル」として、BL本は世間の目にあまり触れることがありませんでした。
 その結果として、各地の青少年健全育成条例や刑法上の「わいせつ」関連条文など、さまざまな「表現規制法制」の中で、BLというものがどのように位置づけられるのか、はっきりしないまま、ここまで来てしまったのです。

 ところがその間に、BLは商業的にも大きな市場になりました。
 本来は、その過程で法的な折り合いがだんだんに生まれてくるものですが、BLについていえば、いまだ「コミック10社会」のような横断的な組織もありません。
 業界最大手のリブレは、日本雑誌協会にも加盟していませんが、BLの各レーベルが横のつながりなく出版活動を営み、「ジャンル」として無防備なままで市場が大きくなってきたこの最悪のタイミングで、今回の都条例のような“荒波”をざぶーんと被ることになったわけです。

 誰もが感じていますが、この荒波は今後さらに全国的に強さを増してきます。
 しかし既存の、そして新たな「表現規制法案」の中で、BLがどのように位置づけられるのかは、あまりにも不明確なのです。

 今回、ちーけんは、その点について何かまとめられた文献や論文がないか探しましたが、BLをメインにして論じたものには寡聞にして行き当たりませんでした。
 そこで今後の自分の活動のためにも、自分なりにまとめておこうというのが、この記事の趣旨です。
 法律の話が多くなることもあり、語句や概念の説明も丁寧に入れていくつもりですので、かなり長くなると思いますが、お時間とご興味がおありの方は、お付き合いいただければ嬉しいかぎりです。

★「BL本」と各地の「青少年健全育成条例」…そして「表現の自由」

 というわけで、まずはほとんどの都道府県で制定されている「青少年健全育成条例」とBL本の関係について見ていきたいと思います。
 都道府県ごとの条例として制定されているために、各都道府県で微妙に違う中身になっているのが、この「青少年健全育成条例」です。
 ここでは、代表例として、東京都の青少年健全育成条例をもとに、両者の関係を見ていきたいと思います。

 まず、基本のキとして理解しておかないといけないのが、BL出版社が発行するBL本がどんなにエロいものであっても、日本国憲法第21条1項が保障する「表現の自由」「出版の自由」が出版社にはあり、それを出版する自由が認められているということです。

 これに対して、男性器や女性器丸出しの写真集(=わいせつ物)を発売することが「社会の善良な性風俗を乱す」として許されないのと同じく、もしBL本の中身が「青少年の健全な育成を妨げる」ようなものだとしたら、出版するのは自由だけど、青少年に販売しては駄目ですよということになっています。
 これを条例の形で各都道府県が定めているのが「青少年健全育成条例」です。

 憲法で定められている「表現の自由」を規制する条例(=表現規制法制)ですから、「青少年健全育成条例」には慎重な運用が求められます。
 それが、「憲法が何より大事」という法律の世界のルールだからです。

★「有害図書」と「表示図書」の違いをまず理解する

 東京都の青少年健全育成条例では、BL本を含むすべての書籍の中で、「青少年の健全な育成を妨げる」ものについては、都知事が「有害図書」に指定するように定められています。
 じつは、全国的には「有害図書」と呼ばれているこの手の本ですが、東京都の青少年健全育成条例では「不健全図書」と呼ばれています。
 両者の違いは、呼び方の違いだけと思っていただいて大丈夫です。
 「有害図書」=「不健全図書」とは同じものだと思っていただいてOKなのですが、以下では「有害図書」に統一して説明を続けますので、ご了承ください。

 さて、都知事が「有害図書」の指定をするとはいえ、もちろん知事が自分でBL本を読み漁って「これは有害」「こっちはOK」と決めるわけではありません(笑)。
 学者や有識者を集めた「青少年健全育成審議会」が調査、議論したうえで、「有害図書」にする本を選び出すように決められています。
 ある本が「有害図書」に指定されたら、青少年に閲覧させたり、販売することも許されませんし、そもそも青少年の目に触れにくいように、書店でも一般書籍の本棚と区別して陳列(=区分陳列)しないといけません。
 これがBL本だけでなくすべての本にとって、大きなダメージになることは、わかっていただけると思います。

 しかし。

 ある本が「青少年に有害か」というような、人によっていくらでも答えが違ってくるようなことを、都知事や都庁のお役人といった“お上”=行政側の人間の手で決めてしまうことは、非常に危険です。
 行政側の気に入らない本を好き勝手に「有害図書」に指定される可能性があるからです。
 最初に書いたとおり、これは出版社側の「表現の自由」を規制するものですから、何よりも慎重な運用が必要なのです。

 そこで東京都では、90年代に入ってから、新たに「表示図書」という制度ができました。
 出版社側が、性描写のあるような男性向けエロマンガなどについて、本の表紙に「成人向け」という表示を自主的に入れ、このような「表示図書」は、青少年に販売しないようにして、本屋でも成人向けに区別された棚に区分陳列することにしたのです。

 すでにおわかりかと思いますが、「有害図書」と「表示図書」は、指定されたことによる“効果”にほとんど代わりはありません。
 どちらの場合も、青少年には販売できず、店頭では一般書籍と違う棚に区分陳列されるという点でも同じだからです。

 違うのは、行政側が強制的に「有害図書」に指定するか、出版社側が自主規制として「表示図書」として発行するのかという点だけです。
 しかしこれが大きなそして重要な違いであることは、先程ご説明したとおりです。

 一般書籍 > (出版側が自主的に選ぶ)表示図書 ≧ (行政が指定してくる)有害図書

 現在では、東京都側も出版社サイドの自主規制を尊重して、「成人向け」の表示がある「表示図書」については、「有害図書」指定の対象にしないことになっています。
 そして、東京都以外の道府県においても、東京都の例にならい、「成人向け」の表示がある「表示図書」については、自分たちの県でも「有害指定」にはしないのが、全国的な慣例になっています。

 いま書店に行くと、アダルトコーナーには、男性向けエロマンガがたくさん並んでいますよね。
 あれはすべて「成人向け」の表示が表紙に入っている「表示図書」です。
 決して、「有害図書」ではありません。
 繰り返しになりますが、出版社側が自主的に「成人向け」の表示をしたものについては、区分陳列したうえで青少年に販売しないというルールが書店で厳格に守られていますから、東京都側もそれを尊重して、重ねて「有害図書」に指定することはしないルールができているからです。
 つまり、現在の男性向けエロマンガは、実際のところは「有害図書」に指定されるものは、ほぼゼロです。
 それ以前に、すべて「表示図書」として発売されているので。
 この後、BL本について考えていくとき、この部分が重要なポイントになってきますので、よーく理解しておいてくださいね。

★では、BL本の場合は?

 では、いよいよBL本について見ていきましょう。

 みなさん、BL本の表紙に「成人向け」とか入ってるのを見たことあります?
 ないですよねー、もちろん私もないです(笑)。

 しかしこのことがとても重大な意味を持つことは、上の説明をお読みいただいた方ならおわかりかと思います。
 そうです。
 BL本には「表示図書」の制度がないのです。
 現状、BL本はすべて「一般書籍」として書店に流通しており、当然ながら青少年に販売してもいいですし、区分陳列する必要もありません。
 書店の店頭で、コロコロコミックスの隣でもジャンプコミックスの隣でも、好きなところに陳列して構わないわけです。

 ところが、BL本の中には、男性同士の恋愛を描くストーリーの必要上、なかなか激しい性的描写を含むものが珍しくありません。
 というか、今のBL本で性描写がまったくないもののほうが少数派ですよね、みなさんよくご存じのとおり(笑)。

 では、この状況の中で、東京都や他の道府県のマンガ担当のお役人が、エロ~いBL本を見つけてしまい、「こ、こ、これは青少年の健全な育成によろしくないっ!」と頭に血をのぼらせてしまったとしたらどうなるでしょう。

 男性向けエロマンガの場合は、「表示図書」の制度があることで、実際には「有害図書」に指定されるエロマンガは一冊もないことは、先程ご説明しました。
 しかし、BL本には「表示図書」の制度がないのです。
 必然的に、エロ~いBL本は、一足飛びに「有害図書」に指定されてしまうことになります。

 一般書籍 > (出版側が自主的に選ぶ)表示図書 ≧ (行政が指定してくる)有害図書

 「青少年健全育成条例」とBL本の関係を見るとき、まず考えなければいけないのが、このようなBL本の“特殊性”です。
 こうして起こったのが、2010年4月に大阪府がBL雑誌8冊を一挙に「有害図書」に指定した“事件”だったのでした。

 さて、みなさんよくご存じとは思いますが、この2010年4月の大阪府によるBL雑誌の一斉有害指定について、簡単に振り返っておきましょう。
 “事件”は、4月27日付けのasahi.comが一報を報じたことから始まりました。
 『drap』『ボーイズラブ』『ボーイズピアス』『麗人』『キャラセレクション』『ダリア』などのBL雑誌の当月号が、「青少年の健全な育成を妨げる」とされて有害指定を受けたことが明らかになったのです。
 すぐにネット上では腐女子腐男子が大騒ぎになりました。
 以上が、ものすごく簡単ですが、この“事件”のあらましです。

★大阪府のBL雑誌一斉有害指定は、“初めて”ではなかった

 しかし、大事なのはここからです。
 この大阪府によるBL雑誌の一斉有害指定がおこなわれるまで、私ちーけんを含めた一般の腐女子腐男子は、以下のように思いこんでいたところがありました。

「男女のセックスを描いた男性向けエロマンガと違って、主に女性読者向けに同性愛を描くBLは、青少年の健全な育成を妨げるようなものではないはず。だから有害図書に指定されることはないはずだし、実際これまでもされてないよね」」

 そうです。
 恥をしのんで告白しますが、ちーけんはこの大阪府による有害指定が、BL本に対する史上初のものだと勝手に思いこんでいたのでした。
 そんな思いこみをしてたのはオマエだけだと言われると返す言葉もないのですが(涙)、みなさんの中にも同じ誤解をしていた方は多いのではないでしょうか。

 しかし、事実は違っていたのでした。

 事件直後に、評論家の三崎尚人さんがご自分のサイト『同人誌生活文化総合研究所』で書かれていたとおり、早くは2002年の東京都による指定(『コミックJUNE』1月号)をはじめとして、各地の青少年健全育成条例に基づき、じつはすでに何度もBL本の有害指定は行われていたのです。
 先程書いたとおり、BL本に「表示図書」の制度がない以上、「有害図書」の指定が法的にはいつあってもおかしくないとはわかっていたのですが…。
 実際にBL本が「有害図書」の指定を受けていたとは、恥ずかしながらちーけんはまったく知りませんでした。

 さて、このようにじつは以前からBL本の有害指定が全国の都道府県でおこなわれていたとなると、「BL本は青少年健全育成条例による『有害図書』指定の対象にはそもそもならないはず!」などという甘い議論は吹っ飛びます。
 実際に各地で有害指定がおこなわれているんですから!

★すでにこんなに各地で行われていたBL本の有害指定

 こうなると気になってくるのは、大阪府の一斉有害指定より前に、多くの腐女子腐男子が知らない間に、どれだけのBL本が、どこで、どのように有害指定されていたかということです。
 その一端を明らかにしてくれるのが、大阪府の一斉有害指定の直後に、ジャーナリストの昼間たかしさんが大阪府に情報公開請求をおこなって入手した資料です(『同人誌生活文化総合研究所』で10年末現在も公開中)。
 これは、大阪府がBL本の一斉有害指定を行うに先立って、他の都道府県でのBL本の有害指定の状況を直近の2年間につき調査した結果をまとめたものです。

 これを見ると、2008年~2009年の間に、北は青森県から南は沖縄県まで、20県でBL雑誌が有害指定されていたことがわかります。
 具体的にどんなBL本が有害指定されたかを見ると、複数の県で何度も名前が挙がっているのが、以下のBL雑誌4誌です。

『ボーイズラブ』(ジュネット)=青森、宮城、山梨、岐阜、奈良、宮崎、鹿児島、沖縄など
『ボーイズピアス』(ジュネット)=青森、福島、栃木、富山、福井、滋賀、宮崎など
『コミックJUNE』(ジュネット)=宮城、山形、滋賀、奈良、大分、宮崎、鹿児島など
『ビーボーイGOLD』(リブレ)=宮城、秋田、山梨、滋賀、奈良、大分、鹿児島など

 他にも、『drap』(コアマガジン)や『コミックアクア』(オークラ出版)、『恋JUNE』(ジュネット)などの誌名も散見されますが、上の4誌が「有害指定」のほとんどを占めています。

 さて、上のデータを見て、みなさんはどう感じられたでしょうか。
 ぶっちゃけて言えば、上記の4誌は、BL雑誌の中でもエロ描写が激しいほうですよね。
 その意味では、この4誌が有害指定されるのはしょうがないか…という方もいるかもしれません。
 また、その裏返しとして、いわゆるメジャーBL誌である『ビーボーイ』や『花音』、『GUSH』の名前が出ていないのを見て、「そっか、やっぱり『ビーボーイ』ぐらいのエロさなら『有害図書』にはならないんだ。安心した!」なんて人もいるのではないでしょうか。
 このあたりの雑誌ごとのエロ度の感覚は、実際にBL本を読んでる腐女子腐男子でないとわからないとは思いますが…。
 実際、ここまでのデータを見て、ちーけんとしても、「そうか、『ビーボーイ』本誌や『花音』ぐらいの性的描写なら、有害指定は受けないのか。これからのBL雑誌は、このへんのラインに収束して、有害指定を受けずに一般書籍としての販売を続けていく道を模索することになるのだろうか」などと、またもや勝手に思いこんでいました。

 ところが!!!

 今回の記事を書くに当たって、上に挙げたデータにくわえて、じつはちーけん自身も各都道府県のサイトで「青少年健全育成条例」関連のページを回り、その都府県で「有害図書」に指定された書名が発表されていないかチェックしてきました。
 そこで明らかになったのは、上の資料がカバーしている時期よりも後、つまりこの1年ほどの間に、BL雑誌の有害指定が明らかに従来より範囲を広げておこなわれるようになっていることです。

 そもそも、大阪府の一斉指定の際に、『drap』や『キャラセレクション』といった、BL雑誌の中でも比較的エロ描写が穏やかな雑誌が有害指定の対象とされたこと自体も驚きでしたが、ざっと見つけたところを挙げても、2010年11月に岡山県で『ダリア』10月号が有害指定を受けていたり、滋賀県では同年5月にブライト出版のBLアンソロ『恋せよ少年~たとえ大人でも~』vol.2が有害指定されています。
 滋賀県では、同年10月には『麗人Bravo!』2010年秋号も有害指定されていました。
 また、長崎県では、雑誌だけではなく、ジュネットのコミックス『社長はエロシック』や、ハルヒ同人誌のBLアンソロジー『北高男子の寝室 蜜夜編』(オークス)までもが有害指定されています。
 また、これは2009年の指定ですが、宮城県では『ビーボーイ』本誌の2009年7月号が有害指定されてもいます。

 以上を見ていただくとわかるとおり、BL本の有害指定については、昨年まではジュネット系3誌+『ビーボーイGOLD』の4誌が繰り返し指定されてきたところ、この1年ほどは、この4誌以外の、腐女子腐男子には「エロ少なめ」と思われているBL雑誌への有害指定が出始めていることがおわかりかと思います。

 特に、宮城県での『マガビー』本誌の有害指定は、『ビーボーイ』本誌が文字どおりBL界のトップ雑誌であることを考えると、BL好きの1人として、ちーけん自身、軽いショックを受けるところです。

★「個別指定」と「包括指定」の違い ――すごく重要です!

 さて、ここまでBL本の有害指定について、それが一般に思われているよりもはるかに多くこれまでおこなわれてきたことや、この1年ほど、さらに対象となる雑誌が広がる兆しがあり、大きく状況が変化しはじめているのではないかと疑われることを書いてきました。

 ここで、またもや一つ、青少年健全育成条例について、その理解に必要な法的概念を理解していただかないといけません。
 「個別指定」と「包括指定」の違いについてです。

 ここまでずっと、一口に「有害指定」と書いてきました。
 ですが、じつは各地の青少年健全育成条例による「有害指定」には大きくわけて2種類のやり方があります。

 一つは「個別指定」です。

 みなさんが頭の中で考えておられる「有害指定」のイメージは、たぶんこの「個別指定」によるものだと思います。
 都庁や県庁のお役人が書店を回って、「こ、こ、これは青少年の健全な育成によろしくないっ!」というBL本を見つけたとしましょう。
 そうなると、これらのBL本は、各都道府県に設置されている「青少年健全育成審議会」という、学者や有識者が集められた審議会にかけられ、そこで審議会の委員が「うん、これは有害指定!」と判断すると、都知事や県知事の手で「有害図書」に指定され、それ以後の青少年への販売が禁止されるとともに、区分陳列の対象になります。
 このように、個別のBL雑誌やBL本について、「この本は有害図書」と一冊一冊指定していくことを、有害指定制度における「個別指定」といいます。
 この辺については、みなさんよく制度をご存じだと思います。
 上のほうでさまざまなBL雑誌の名前を挙げて「○○雑誌が××県で有害指定」されたと言ってきたのは、すべてこの「個別指定」によるものです。

 これに対して、もう一つまったく違う方法で、BL雑誌やBL本を有害指定する方法が、ほとんどの道府県で定められています(話がややこしくなるので端折りますが、東京都ではこの「包括指定」の制度はありません)。

 例えば、福島県の青少年健全育成条例の条文を見てみましょう(なぜわざわざ福島県を例にとるかは後でわかります)。

第18条第2項 次に掲げるものは、青少年に有害な図書類とする。
一 書籍又は雑誌であつて、全裸、半裸若しくはこれらに近い状態での卑わいな姿態又は性交若しくはこれに類する性行為(以下「卑わいな姿態等」という。)を被写体とした写真又は描写した絵で規則で定めるものを掲載するページの数(表紙を含む。以下この号において同じ。)が二十ページ以上のもの(当該書籍又は雑誌の内容が主として読者の性的好奇心をそそるものでないと認められるものを除く。)又はページの総数の五分の一以上を占めるもの


 長くて読みにくい条文ですが、ざっとまとめると「エロいページが20ページ以上、または全体の5分の1以上ある雑誌や本は有害図書だよ」ということです。

 みなさんも、この手の条文はこれまで見たことがあると思います。
 でも、誤解していませんでしたか?
 この基準は、青少年健全育成審議会が、ある本が有害図書かどうかに当てはまるのを判断するための基準だと。

 違います。

 上の条文が言っているのは、次のような意味です。

「あー、審議会が1冊1冊調べて有害指定するチンタラした制度があるらしいけどさ、俺の条文のほうが優先だから! エロが20ページ以上、もしくは全体の5分の1がエロな本は、審議会が判断するまでもなく、ぜ~~~~~~んぶ有害図書だから、そこんとこヨロシク」

 これが「包括指定」という制度です。
 文字どおり、一定の基準を満たす本については、「包括」的に有害図書とみなしてしまう制度です。
 …これ、凄い制度ですよね(笑)。
 思わず笑っちゃうくらい。

★「個別指定」は県が指定 「包括指定」は書店が判断

 しかも、「個別指定」の場合は、各道府県の青少年健全育成審議会が一冊一冊中を見て、それが有害図書に当たるかどうか判断しているわけですが、こちらの「包括指定」では、それを判断するのは、実際に本を売る書店の人間がやることになってます。

 つまり書店の店員さんは、本来は、売る本の中身を自分たちでチェックして、エロいページが20ページ以上ないか、もしくは本全体の5分の1以上ないか、調べないといけないのです。
 そして、その基準に当てはまると“思った”本については、それは上の条文にあるとおり、即「有害図書」ということになりますから、区分陳列して、青少年に売ってはいけません。

 でも、すぐに疑問が湧きますが、エロいページかどうかなんて、一応、条例の施行規則に具体例が定められているとはいえ、見る人によって判断が違いますよね。
 本によっては、「うーん、このページがエロだとすると20ページになるけど、微妙だな…」というのが必ずあります。
 でも、書店の判断で「これは有害図書じゃない…はず!」といって、それを一般書籍で売った際、後から行政や警察に「いや、これは有害図書でしょう」と言われ、最悪の場合は逮捕される可能性も条例上はあります。
 このように不明確で曖昧な内容を含む条例は、どう考えても日本国憲法下では違憲だろうとちーけんは思いますが、今のところは各地で「包括指定」は実際の制度として運用されています。
 うーん、恐ろしい…。

 ここまで読んでいただき、「包括指定」という制度を理解していただくと、じゃあ最初に出てきた「個別指定」って何なの? と思われる方もいると思います。
 はい、それが当然の疑問ですし、じつはこの2つの制度の関係は、BL本と有害指定について考える際にも重要だったりします。

 先程も書きましたが、多くの方が誤解されていると思いますが、よく青少年健全育成条例で出てくる有害指定の基準「○ページ以上、または全体の○分の1以上は有害図書」という条文は、じつはすべて「包括指定」の際にだけ有効な基準です。
 審議会が、「これは…!」と思うBL本の中身を審議する「個別指定」の際には、まったく関係ありません。
 「個別指定」では、同じく福島県青少年健全育成条例でいうと、以下の条文が、有害指定するかどうかの判断基準になります。

第17条 (略)
一 著しく青少年の性的感情を刺激し、その健全な育成を阻害するおそれのあるものとして規則で定めるもの
二 著しく青少年の粗暴性又は残虐性を助長し、その健全な育成を阻害するおそれのあるものとして規則で定めるもの
三 著しく青少年の自殺又は犯罪を誘発し、その健全な育成を阻害するおそれのあるものとして規則で定めるもの


 おわかりでしょうか。
 「個別指定」の際には、ページ数などは判断基準ではありません(上の条文にも書いてないですよね)。
 逆にいうと、エロいページが1ページしかなくても、審議会として、その本が全体として「著しく青少年の性的感情を刺激」し、「その健全な育成を阻害するおそれのある」ものだと判断すれば、その本を「有害図書」に個別指定することが可能なわけです。

 非常に単純化すれば、このようになります。

●まずは「包括指定」
→エロが○ページまたは全体の5分の1以上あったら審議会で判断するまでもなくすべて有害図書(=基準はエロのページ数)

   ↓

●「個別指定」
→包括指定の基準には達しないけれど、これは有害指定したほうがいいと審議会が考える本や、包括指定されている本の中でも、特に本の名前を挙げて「個別指定」したほうがいいと審議会が考える本を有害指定(=基準は審議会が「有害」と考えるかどうか)

 このあたり、本当に難しい法律の話が続きますが、だいたいご理解いただけたでしょうか。

★BL本は「包括指定」の対象になるのか?

 さて、長くなりましたが、各地の「有害図書」の指定における2つの制度、「個別指定」と「包括指定」について、だいたいのところをご理解いただけたということで、次の話に進んでいきます。

 「包括指定」という制度が、非常にわかりにくく、問題がある制度だということは、いまお話しました。
 上で書いたとおり、ある本でエロいページが一定基準以上あれば、それは審議会で個別指定されるまでもなく、すべて有害図書とみなすというのが、この「包括指定」の制度です。
 でも、考えてみましょう。
 各都道府県の青少年健全育成審議会が一冊一冊を調べたうえで有害図書に「個別指定」した場合は、その結果が必ず何らかの方法で県民に発表されます。
 2010年4月の大阪府によるBL雑誌一斉有害指定も、今も府のHPに行けば、「『有害図書類』指定一覧」のページに雑誌名が掲載されています。

 ところが、「包括指定」の場合はどうでしょう。

 先程書きましたとおり、「包括指定」というのは、ある雑誌や本の中に、エロいページが○ページ以上あるか、または全体の○分の1以上あるかどうかで自動的に有害図書とみなすという制度ですから、見る人によって判断が違ってくるのです。
 しかも、「個別指定」のように審議会で一手にまとめて有害図書かどうか判断されるものでもありませんから、「この雑誌が今月の『包括指定』の対象になりました」という発表自体、府や県がおこなうようなものでもありません。
 繰り返しますが、「包括指定」は県の青少年健全育成審議会がやるのではなく、書店の店員さんが自分たちで雑誌や本の中身を見て、「うん、これは○ページ以上のエロがあるから有害図書だね」と判断する制度なんですから。

 今、ここを読んでくださってるみなさん、腐女子腐男子のお手許には、何冊か最近のBL雑誌があると思います。
 そして、みなさんがお住まいの道府県のほとんどには、青少年健全育成条例で有害図書の「包括指定」の制度があります。
 つまり、そのいまお手元にあるBL雑誌は、もしかしたら「○ページ以上のエロ、または全体の○分の1以上のエロ」という、あなたがお住まいの道府県の青少年健全育成条例で定められた基準によって、じつは自動的に有害図書として「包括指定」されているかもしれないのです。
 福島県であれば、先程挙げたとおり、「20ページ以上、または全体の5分の1以上」ですが、より厳しい岐阜県や奈良県の青少年健全育成条例では、エロが「10ページ以上、または全体の10分の1以上」と定められています。

 さあ、どうでしょう。
 パラパラとBL雑誌をめくってみて、エロいページを数えてみましたか?
 じつはみなさんのお手許にあるBL雑誌は、そのページ数によっては、すでに「包括指定」の対象として、じつは法律上は「有害図書」と自動的にみなされているものかもしれないのです。

 念のために書いておくと、少なくない道府県の青少年健全育成条例は、その施行規則で、「同性間の行為も含む」と定めていますし、定めがないとしても、BLであることを理由に、「包括指定」の対象から外れることはありません。

 じつは、ちーけんが青少年健全育成条例について勉強し始めて以来、ずっと頭を悩ませていたのが、この「BL本は『包括指定』の対象になっているのか」ということでした。
 たしかに、上で見てきたように、さまざまな都道府県で、すでにBL本、BL雑誌は有害図書の「個別指定」を受けてきました。
 そうだとすれば、その「個別指定」されたBL雑誌“だけ”が、法律上の「有害図書」ということになりますが、BL本が「包括指定」の対象になるとすれば、その対象となるBL雑誌の範囲は飛躍的に広がります。
 つまり、現在は書店の店頭で、多くのBL雑誌が一般書籍として売られていますが、それがじつは「包括指定」の対象になっていて、法律上は「有害図書」に自動的にみなされているとしたら、その法的な影響は甚大です。
 いま一般書籍の棚に並べられているBL雑誌のいくつかは、本当はそこにいてはいけないものになっているのかもしれないのです。
 これまで実例はありませんが、じつは「有害図書」扱いになっているBL雑誌を店頭で青少年に販売した書店員が、青少年健全育成条例違反で摘発される可能性は、法的には間違いなくあるわけですから。

 そう考えると、作家さんや出版社としても、その対抗策を考えざるをえなくなります。
 過度に表現が事前抑制されたり、いつの間にかエロがBL雑誌から消えるということだって、ないとはいえません(あくまで可能性の話ですよ)。
 特に最近は、リブレの『シトロン』や、新創刊された祥伝社のBLアンソロジー『on BLUE』など、ほぼエロ描写がないBL本も増えているなか、何か関係があるのかとつい思ってしまうちーけんとしては(気にしすぎ?・笑)、BL本が法的に「包括指定」の対象になるのかどうかは、とてもとても気になるところなのです。

★ネットをめぐって実情を調べてみると…

 今回、ちーけんがネットで各道府県の青少年健全育成条例関連のページをめぐり、有害図書の指定状況をざざっと調べてみたことは、先程も書きました。
 じつはその中で、BL本が「包括指定」されているいくつかの例に出会うことができました。

 まず、神奈川県の「有害図書」関連のページでは、年に数回、「<包括指定>有害図書類の例示」という文書の発表があります。
 上に書いたとおり、ある本が「包括指定」の対象になるかどうかは、県が決めるものではなく、現場の書店の店員さんたちの判断に任されていますが、神奈川県では、あくまで「例示」として、「ここに挙げた本は神奈川県の基準で包括指定の対象になる本なので、あくまで一部の例だけど、HPで告知しておくね! でも、ここに名前が出てないからといって「包括指定」の対象になってないわけじゃないよ!」ということで、この掲示を行っています。

 これを現場の書店員さんの立場からすると、少なくともここで書名を「例示」されたものについては、「自分で中を見たけれど有害図書だとは思わなかった」と言っても逃げられません。
 そして、この神奈川県のサイトでは、2006年以後の「<包括指定>有害図書類の例示」を見ることができます。

 ちーけんは、ここを見て驚きました。
 だって、一番早いものだと、06年12月調査分から、BL雑誌が「包括指定」の対象になっているとして「例示」されているんですから。
 ちなみに、神奈川県の「包括指定」の基準は、上に挙げた福島県と同じく、「20ページ以上、または全体の5分の1以上」のエロです。
 いくつか例を挙げると、まず06年12月分で『drap』が包括指定の対象として「例示」されています。
 その後も、07年6月分で『麗人』が「例示」されており、08年12月分では、それまでは「コミック誌」の一つとしてBL雑誌が「例示」されていたのですが、この時は独立した「ボーイズラブ」という区分ができたうえで、『ボーイズJAM!』(新書館)や『コミックJUNE』などが「包括指定」の対象として「例示」されています。
 2010年に入ってからは、BL雑誌だけでなく、よしながふみ先生のコミックス『1限めはやる気の民法』の第2巻が3月分で有害図書の「包括指定」の対象として「例示」されてもいます。

 BL本が有害図書として「個別指定」されるだけでも、腐女子腐男子としてはショックを感じずにはいられませんが、この神奈川県による「例示」で明確に示されているとおり、一定の基準で有無をいわさず「有害図書」とみなしてしまう制度である「包括指定」の対象にまで、やはりBL本はなっていたのでありました。
 しかも、よしながふみ先生の上掲書は、お読みになった方も多いと思いますが、決してエロ主体のコミックスではありません。
 ここまでアウトになるのか…というのが正直な感想です。

★福島県ではさらに事態が悪化していた

 もう一つ、ちーけんがショックを受けた例を挙げましょう。
 先程から例として挙げてきた福島県の「青少年育成室」という部署のページに、ごく最近ですが、2010年12月7日発表の「優良書籍の推奨及び有害図書類の指定を行いました」という告知があります。

 ここを見ると、福島県において、『ビーボーイ』2010年12月号が、「20ページ以上、また全体の5分の1以上」という基準に引っかかったということで、有害図書の「包括指定」の対象になったことが「例示」されています(繰り返しますが、「個別指定」ではなく「包括指定」です)。
 いやはや、これはかなりショッキングです。
 何度も言いますが、やはり『ビーボーイ』本誌はBL界のトップ雑誌です。
 ぶっちゃけ、ジュネット系のH描写が激しめな雑誌が「包括指定」の対象になっていると県に言われても、ちーけん自身がジュネット系の雑誌が大好きなので納得できないとかそういうことは措いておいて(笑)、事実としての性的描写の多さを見れば、県がそのような例示を行うこと自体はわからないでもありません。
 しかし、BL界のフラッグシップでもある『ビーボーイ』本誌までもが、「包括指定」の対象としてはっきり「例示」される時代が来ようとは…。

 一応、ここで書き添えておきますと、福島県でジュネット系の『ボーイズピアス』『コミックJUNE』などの性描写が激しい雑誌が「包括指定」の対象として「例示」されていないのは、すでに08年や09年にこれらの雑誌は有害図書として「個別指定」されており、県としては「これらの雑誌については、すでに個別指定したことで有害図書としての周知が済んでいるため、包括指定の対象には例示するまでもなく入っている」という判断だからです(前掲・昼間たかし氏が情報公開請求した大阪府作成の資料による)。
 このへん、話が難しいですよね(笑)。
 わからなかったら、とりあえず先まで読んじゃってみてください(すいません)。

 さて、何度も書いてるとおり、福島県においては、エロい描写が「20ページ以上、または全体の5分の1以上」ある時に「包括指定」の対象として「有害図書」と自動的にみなされます。

 では、問題の『ビーボーイ』2010年12月号は、実際どのぐらいの描写があったのでしょうか。
 つい1ヶ月前まで書店に並んでいた号ですから、お手許にある方はご自分で確かめてみてもいいかもしれません。
 これは印象論、感情論の領域になりますが、ざざっと同誌をパラ読みした時、これが「有害図書」だと言われるのはかなりの抵抗があります。
 実際に、ちーけんが数えてみると、『ビーボーイ』2010年12月号のデータは以下の通りです。

 全体のページ数          566ページ

 うち性的描写のあるページ数    36ページ(6.6%)

 さらにその中で、性器が描か
 れているページ数         16ページ


 あるページが「性的描写」かどうかは、もちろん福島県の青少年健全育成条例施行規則に従って判断したつもりですが、これは本当に判断に迷います。
 ストーリーの流れでは、2人ともベッドの上で全裸のはずだけど、そのページでは胸から上しか描かれていなくてキスだけしてるコマとかは、迷いましたが「性的描写」には入れてません。
 最低でも、どちらかが服を脱いでいて、乳首や胴体への愛撫などの場面の絵が実際に描かれているものを「性的描写」として数えました。
 あまりはっきりとディテールが描かれてなくても、フェラチオや指による性器愛撫の場面であれば、一応「性的描写」に含んでいます。
 というか、前にも書いたとおり、こんなのを一般人が判断すること自体、どだい無理ですよ。
 本当におかしな制度というか、こんな条例は違憲だと思うんですが…。

 ともあれ、ちーけんが数えたデータに基づいてとりあえず話を進めましょう。
 そんなに大きな数え間違いはないだろうとは思いますので。

 さて、上のようなちーけんによる「性的描写」かどうかの判断基準を見て、青少年健全育成条例に詳しい方は、「厳しく選びすぎ」と言われるかもしれません。
 もっと露骨な場面だけを「性的描写」に含めれば、現行の法解釈上は十分なはずだと。
 ちーけん自身、その考え方を妥当と思いますが、ここではあえて、福島県の青少年健全育成条例施行規則を最大限に解釈して、『ビーボーイ』当月号に「性的描写」が何ページあるかを数えてみました。
 つまり、もっとも厳しく見て、この号の『ビーボーイ』の「性的描写」は36ページぐらいのはず…ということです。

 先程も書いたとおり、こうやって厳しく数えてみても、全体のわずか6.6%(15ページに1ページの割合)しか性的描写がないわけですが、それでも条例の「20ページ以上」のエロという要件に該当するので、『ビーボーイ』2010年12月号は「包括指定」の対象になる旨を「例示」されたのだと思われます。

 わざわざ、その中でもとくに「性器の描写」があるページ数を数えたのは、これまで有害図書の「個別指定」の基準として、「性器や体液の露骨な描写」がひとつの判断材料になっているという指摘があるため、もしかしたらこの『ビーボーイ』2010年12月号でも、そのようなかなり直接的な描写が「20ページ以上」になってしまったために「包括指定」の対象になったのではないかとも仮定してみたからです。
 しかし、ご覧のとおり、これも数え方で多少の増減はあると思いますが、ちーけんが見るかぎりでは、『ビーボーイ』当月号で露骨な性器描写があるのは、16ページだけでした(もちろんすべて修正は入っています)。
 つまり、「性器描写がなければエロページには含まれない」というのは、単なる希望的観測(少なくとも福島県においては)にすぎなかったということになります。

 以上のようにデータから考えていくと、ひとつの結論が得られます。

 一切エロがない『シトロン』などのBL雑誌を除き、これまでのBLマンガにおいて「ごく普通のエロ含有率だよね」といわれてきたほとんどのBL雑誌が、現状の青少年健全育成条例の下では、ほとんどすべての道府県で、「包括指定」の対象として自動的に有害図書とみなされているはずだということです。

 問題の『ビーボーイ』2010年12月号が「包括指定」の対象となるならば、他のBL雑誌、例えば『GUSH』であり『花音』であり、『ディアプラス』であり、『drap』であり…といった、ほとんどのBL雑誌が、今や自動的に「有害図書」扱いされてもおかしくないというのは、腐女子腐男子のみなさんならば実感としてよくわかると思います。
 繰り返しますが、ある本が「包括指定」の対象になっているかどうかは、第三者の目にははっきりとわかりません(本当におかしな制度ですが)。
 一部の道府県で、このような「例示」という形で、ごく一部の対象雑誌が告知された場合には、当該雑誌が間違いなく「有害図書」としてみなされているということがわかるわけですが、ここで例示されていないからといって、「包括指定」の対象になっていないとは言えないことは、これも何度も繰り返してきたとおりです。
 行政側による「例示」は、あくまでそこで名前をあげられた雑誌が有害図書であることのお墨付きでしかないのです。

★ほとんどのBL雑誌が法的には「有害図書」とみなされている?

 実際、この『ビーボーイ』2010年12月号と同じ時期に発行されていた、他のBL雑誌について、試しにちーけんが同じ基準で「性的描写」があるかどうか数えてみたところ、以下のようになりました(すいません、ちーけんが買ってない雑誌は手元にないので、持っている雑誌のみです)。

『GUSH』12月号     33p/494p =6.6%
『ディアプラス』12月号   27p/498p =5.4%
『drap』12月号     46p/494p =9.3%
『ダリア』12月号      35p/722p =4.8%
『リンクス』12月号     36p/622p =5.7%
『花音』12月号       54p/456p =11.8%
『コミックJUNE』12月号 81p/340p =23.8%
『ボーイズラブ』12月号   86p/352p =24.4%
『ビーボーイ』12月号(再掲)36p/544p =6.6%


 『ビーボーイ』が「包括指定」の対象になるのであれば、ほとんどの雑誌が同じ扱いになることが、よくおわかりいただけると思います。
 現状、ほとんどのBL雑誌が、じつは多くの道府県で「包括指定」の対象となっている可能性があり、しかし書店ではそれに気づかず(?)、一般書籍の棚に置いて青少年にも販売している状態というのは、例えると、クルマの運転で時速40キロ制限の一般道を、とくにスピード違反している意識もないまま、他のみんなも飛ばしてるからいいや…という理由で、気づかぬうちにスピード違反しているドライバーのようなものです。
 捕まる人は多くはありませんが、取り締まる側は、いつでも好きなドライバーを選んでスピード違反で摘発できるフリーハンドを持っているということです。
 このような法的なグレーゾーンに、現在のBL雑誌のほとんどが置かれている(はず)というのは、大変重要な事実だと思うのです。

 ここまでお読みいただいて、まだ地方の一自治体である福島県で、『ビーボーイ』が包括指定の対象として一回だけ「例示」されたぐらいで、危機感を煽りすぎだという方もいらっしゃるかもしれません。
 しかし、最初にも書きましたが、BL業界はあまりにこのような状況の変化、それも国や都道府県といった権力に対する態勢の整備がなされていないのです。
 昼間たかしさんが情報公開請求して明らかにした大阪府の資料を思い出してください。
 あの資料は、大阪府が昨年4月の一斉指定を行う前に、他の道府県でBL本がどのように有害指定されているかを参考のために調べたものです。
 なぜ大阪府がそんなことをするかといえば、彼らはお役人ですから、他の自治体での前例があれば安心して自分たちも同じことをできますから、その資料として調査したのです。
 09年ごろまでは、ジュネット系3誌+『ビーボーイGOLD』に集中していた各都道府県での有害指定(個別指定)が、この1、2年で『ビーボーイ』などの性描写の面では比較的穏当と思われてきたBL雑誌に広がりつつあることは、今回ご紹介したとおりです。
 そしてついに、「個別指定」ではなく、「包括指定」の「例示」という形で、『ビーボーイ』本誌2010年12月号が有害図書扱いにされたことは、ちーけんの目には、ここからまた新しい動きが始まることの予兆に見えます。

★まとめ――今までどおりにやっていたら、BL界に未来はない

 詳しくは、明日以後の別記事でまとめようと思いますが、青少年健全育成条例でのBL本のこのような「有害指定」だけでなく、刑法上の「わいせつ物頒布罪」の適用がBL本に近づいているのではないかということも含めて、これからのBL業界は、法律という容赦ない世界で大きな、そして新たな波と向き合わなければなりません。
 しかし残念ながら、BL出版社の側で、何かそれに備えた動きがあるとは、いまだ読者に伝わってきていません。

 何度もブログでも書きましたが、ネット上含めて腐女子腐男子が大騒ぎになった大阪府による昨年4月の一斉有害指定の際も、ほとんどの対象誌で誌面での読者への説明などはありませんでした。
 しかし、出版側がこのまま何もしなければ、これまでは有害指定されていなかったBL雑誌までが次々と有害指定(個別指定)を受け、また「包括指定」の対象となることがより明確化されていき、その結果として、BL雑誌が書店の店頭に並ばなくなってしまう日が来ることすら、夢物語ではないのです(大阪府の一斉指定の際、有害指定を受けた『drap』などが大阪府の一部書店から翌月以後も撤去されたことを思い出しましょう)。

 一つのやり方としては、BL雑誌各社が集まって業界団体を作り、規制当局とのしっかりした話し合い(抗議含む)を業界全体としてやっていくこともあるでしょう。
 また、従来の「表示図書」の制度を利用して、「成人向け」の表示を一部のBL雑誌に入れることで、有害指定の対象から外れることを選ぶ道もあります(非常に残念なやり方ではありますが)。
 従来の「表示図書」だと男性向けエロと一緒になってしまい弊害があるというのならば、「女性の大人向け」などの表示マークを備える新たな「表示図書」の制度を模索してもいいかもしれません。
 また、完全にエロ重視のBLと、エロなしのBLを媒体として分けてしまうというのも、これはこれで表現の萎縮として問題がありますが、現実的にはないやり方ではないでしょう。

 しかし繰り返しますが、BL業界でそのような今後を見据えた方策が推進されているとは、まったく聞こえてこないのです。
 ちーけんが知らないところでじつはそれが進められていて、これが単なる杞憂だというのならば、それは心の底から万々歳です。
 それがまったくおこなわれていないとしたら…。
 都条例が改正され、さらに各地の青少年健全育成条例の厳しい運用と、都条例に倣った改正が見込まれるなか、BL本にあるのは、「有害指定」の草刈り場になり、流通にダメージを受けて市場が縮小していく未来だけかもしれません。
 もう、BL本が「女性向けだから」とか「市場が小さいから」といって、見過ごされていた時代は過去のことです。
 ちーけんは、このようなBL本を取り巻く現状に、大きな危機感を持っています。
 これまでどおりのことをこれまでどおりに進めていくだけでは、必ずBL本というジャンルそのものが危機に瀕する時代がやってきます――それもそんなに遠くない未来に。

 年頭から暗い話になって恐縮ですが、これを読んでいただいたみなさんの一つの考え方のよすがにでもなればと思い、めっちゃくちゃな長文ですが、書かせていただきました。

 ぶっちゃけ、長々と書いてきましたが、本当に青少年健全育成条例とそれをとりまく制度というのは複雑怪奇で、ちーけんの理解が足らなかったり行きすぎているところもあるかと思います。
 その点、詳しい方からのご叱正をいただければ嬉しいかぎりです。
 文章は詳しくない方にも理解いただくことを最優先にしたため、かなりバッサリと概念の説明を単純化したり、省略したところが多々あります。
 その点、ご了承ください。
 また、私ちーけんとしては、そもそも有害指定という制度自体を違憲かつ不適当なものと思っています。
 しかし、現実としては今回の記事で書いたとおり、各地で青少年健全育成条例が施行され、有害図書の制度が運用されている以上、まずはその中での現状を把握せねば、何もできません。
 そのため、制度自体の可否は措いて、とりあえず事実を中心にまとめました。

 ところどころで引用文献としてお名前を出しましたが、三崎尚人さんのサイト『同人誌生活文化総合研究所』における大阪府BL一斉有害指定についての記述および、昼間たかしさんが情報公開請求で明らかにされた大阪府作成のBL本有害指定に関する調査結果、また長岡義幸さんの著書『マンガはなぜ規制されるのか』(平凡社新書)については、本記事を執筆するうえで非常に参考にさせていただきました。

 (果たしているかどうかわかりませんが)ここまでお読みくださった皆さまには、本当にありがとうございました。

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分かりやすいです 
こんにちは!

ちーけんさんのブログはちょくちょく見ていて、レビューをきっかけに買った本多数ないづなと申します。

法律の用語ってとっつきにくいですけど、ちーけんさんの例えの文が分かりやすくて条例の危うさがより具体的に分かった気がします。

私も議員さんに手紙出すぐらいしかできませんが、大好きなBLのため今後の拡大解釈を防ぐため、出来る努力をやっていきます。
 
ありがとうございます 
都条例が成立してしまって、BL関係がどう扱われるのか、気を揉んでいたところだったので、分かりやすく書いていただいて助かりました。
それだけでなく、表現規制一般に対しても、ポイントを押さえてくれているように感じました。

これからも反対運動を続けていかなければいけませんね。
あ、僕はライトな腐男子だと自認しています。
 
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