ネクラで眼鏡でキモオタな優等生は“受け”るとイイよ!

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[レビュー]デビュー作に続き、へたれ駄目男攻め(外見は超俺様デキる奴)×けなげで頑張り屋さん受け…シリーズ化希望! 樋口美沙緒『愛の巣へ落ちろ!』


Category: レビュー 小説単行本   Tags: 特徴-ファンタジー  受け-努力家  受け-成績優秀  ●ハ行-樋口美沙緒  
愛の巣へ落ちろ! (白泉社花丸文庫)愛の巣へ落ちろ! (白泉社花丸文庫)
(2010/04/20)
樋口 美沙緒

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 長年BLを読んできて、作家さんごとのこだわりというか「究極命題」とでもいうべきものがあるなぁと思うようになりました。
 別の言い方をすると「原風景」?
 この作家さんはこれを描かずにはいられない…というものが、必ず一つはありますよね。
 大抵の場合、それは作家さんのデビュー作の中に色濃く出ていますが、例えば島あさひ先生や藤崎こう先生だったら「圧倒的な存在感を放つ帝王のような攻め」だったり、遠野春日先生だったら「凛として孤高の美貌なインテリ受けキャラ」だったり、木原音瀬先生だったら「自己中心的で友達がいなくてひとりぼっちな嫌われ者」だったり、水島忍先生だったら「けなげに頑張る男子高校生」だったり、それぞれの作家さんのそーゆーものがあると思うわけです。

 昨年、花丸文庫で、ヘタレな貴族のボンボン×けなげな従者っ子というカプのデビュー作『愚か者の最後の恋人』を出された樋口美沙緒先生の2冊目となる最新刊『愛の巣へ落ちろ!』が先月発売されたのですが、ブログ主は一読してニマニマしてしまいました。
 樋口美沙緒先生がBLで書きたい“究極命題”はこれか! と思って。
 中世ヨーロッパに範を求めたファンタジーだったデビュー作と違い、本作は昆虫と人類が融合した巨大隕石落下による文明滅亡後の地球と思しき、昆虫擬人化学園ものファンタジーとでもいうべき舞台設定になっていますが、そこで描かれている主人公2人の姿は、デビュー作での2人とかなり通じるものがあったのでした。
 一読み手の感想としては、こーゆー芯がある作家さんのほうが生き残っていく率が圧倒的に高いと経験的に感じているので、大変喜ばしいことだと思ってます(笑)。

 樋口美沙緒先生のデビュー作『愚か者の最後の恋人』については当ブログですでにレビューさせていただいているので、そちらをご参照いただくとして、まずは最新作『愛の巣へ落ちろ!』をゆっくりとご紹介していくといたしましょう!

 ちょこっと書いたとおり、本作は昆虫擬人化BLです(ゆるやかですが)。
 巨大隕石が落下して文明が滅亡したと思しき地球で、人類は昆虫と融合することで進化し、生き延びています。
 主人公(受)の青木翼(あおき・つばさ)は、小さくて弱いシジミチョウ出身の少年です。
 この世界では、さまざまな昆虫と融合した人類が暮らしており、カブトムシや毒蜘蛛、スズメバチといった強い昆虫出身の人類は“ハイクラス”と呼ばれ、高い特殊能力とともに優遇されて暮らしています。
 対して、翼のような弱いシジミチョウ出身の人類は“ロウクラス”と呼ばれ、身体も弱く、よい職業にもつけません。
 翼が入学しようとしている高校「星北学園」も、本当はハイクラス種しか入れない特別校ですが、翼は数々の試験を突破して特待奨学生として入学が認められたのでした。

 翼の両親は、「ハイクラスの人間が集まるそんな学校へ行ってもいじめられるだけだ」と翼を必死で止めたのですが、大好きな両親の制止を振り切ってまで翼が入学を決心したのには理由がありました。
 テレビの番組で「星北学園」が紹介され、一人の男子生徒が登場してインタビューを受けていたのを見たのです。
 ある理由で身体が弱く、いつ死んでもおかしくないと医者に言われていた翼は、テレビで見た男子生徒が喋る言葉の数々に勇気をもらい、自分も同じ学園に行き頑張ろうと決心したのでした。
 入学して、男子生徒に「勇気をくれてありがとう」とお礼を言いたい。
 その一心で入試を突破したのです。

 入学して早々、翼はいじめられます。

「ぼうや、来るとこ間違ったんじゃない? ここは星北学園だよ。ロウクラスの子なんていないんだけど」

 受付員の言葉に、周りがくすくすと笑い出した。
 明らかにバカにされて腹が立ち、翼は大きな瞳できっと受付員を睨みつけた。

「おあいにくと間違ってねえよ。さっさと手続きしてくれませんか?」

「うわ、すごい言葉遣いだね。品がない。親御さんは学費、ちゃんと払えるのかなあ」

「心配してもらわなくても、俺は特別奨学生枠で入ったんだから大丈夫です」

「お利口なんだねぇ~」

 受付員の一人がからかうように肩を竦める。

「バカ、奨学生枠希望者なんてロウクラスのシジミチョウくらいしかいないだろ」

(なんだよ、こいつら!)

 ロウクラスだと分かったとたん手の平を返した受付員へ、翼は怒りが湧いてきた。

 ここでのやりとりを見るとわかるように、翼は結構口は悪いです(笑)。
 気の強い頑張り屋の男の子。
 でも、本当は身体が弱く、明日をも知れぬ身体で頑張って星北学園へ来たのでした。
 そんな勇気をくれた一人の男子生徒に会うために…。

 その男子生徒こそが、ハイクラス中のハイクラスであるレッド・タランチュラ出身の上級生・七雲澄也(なぐも・すみや)です。
 もちろん彼が本作の攻めキャラですよ。
 作中ではこんな感じに描写されてます。

 七雲澄也が振り向いた。
 背が高く、男らしく引き締まった体躯に長い足。
 赤みがかった黒髪の下で、振り返った双眸が琥珀にきらめく。
 甘いのにどこか鋭い美貌には壮絶なほどの色気とハイクラスとしての威圧感が溢れ、見る者を圧倒する。

(これが、タランチュラなんだ…)

 翼はごくりと息を呑み、しばらくは言葉を忘れた。
 この学園にいるのはハイクラスばかり。
 誰もが華やかで身体も大きく、支配する種としての存在感を持っている。
 けれど美しく優雅なスズメバチである真耶にも、逞しくおおらかで昆虫界の王者カブトムシの兜にも、澄也が持つまがまがしいほどの凄みと毒気はない――。

 街子マドカ先生のイラストがまた格好いいんですが、ええ、三次元には興味のないブログ主でもちょっと惚れちゃいそうな男子です、この攻めキャラ・七雲澄也という男は(笑)。

 ところが!!!!

 こんな風に登場してきたら、さぞ七雲澄也という男は立派で器の大きい男だと思うでしょう?
 ちーがーうーんーでーすー(笑)。
 もちろん外面は格好いいし男らしいし立派なんですけど、その中身は決して褒められたものじゃないんです。
 主人公(受)・翼が学園の食堂で初めて澄也と出会い、呼びかけるシーン。

「す、澄也先輩!」
「あの、俺、去年先輩が出てる番組見ました、そこで…先輩の言葉に勇気づけられて、この学園に入って、先輩に会えたら、俺、お礼が言いたくて」

 でも澄也は、こんな必死な翼の呼びかけは冷たく無視します。

「俺はシジミチョウは嫌いだ。覚えておけ」

 という容赦ない一言とともに…。

 というわけで本作の前半は、このあたりが読みどころになりますよ!
 必死でけなげに澄也先輩に近づこうとする翼と、それを冷たく拒絶する七雲。
 なぜ澄也は「シジミチョウは嫌い」なのか?
 翼に冷たく当たるのか?
 読み進むにつれ読者がそのあたりの答えを得ていく仕掛けです。

 でも、もちろんその部分はネタバレになるので詳しくは書きませんが、答えを知るころになると、読者はみ~んなこう言うと思います。
 「七雲澄也! おめー、しょうがねぇ男だなぁ!」と(笑)。
 ぶっちゃけ、ヘタレなんです、この人。
 ハイクラス中のハイクラス、レッド・タランチュラ出身で威風堂々のはずなのに、もう人間としてダメ。
 つかカッコつけで弱いだけ。
 いやもちろん野性的で格好いいことは格好いいんですが、内面が弱すぎる。
 なんかメンヘラ寸前的な…。
 だから翼にも辛く当たるんです。

 でも、翼は目標にしていた澄也へのお礼は果たせませんでしたが、「馬鹿なハイクラスのヤツらなんて気にするな」と言っていつも気に掛けてくれる美人の先輩・真耶や、とても友達思いのルームメイト・央太たちと出会い、一生懸命学園生活を送っていきます。
 でも忍び寄る病魔の陰と、成績のいいシジミチョウ・翼のことを妬む陰湿なハイクラスたちのいじめ…。
 ああ、口は悪いけどこんなに頑張り屋さんでけなげで可愛い翼ははたしてどうなっちゃうの!? …というのが本作の以後の読みどころでありまするー(笑)。

 で。

 “優等生受け”大好き視点でいくと、本作はこう読めます。
 頑張ればきっといいことがある! とけなげに努力する主人公(受)・翼がそんな思いを裏切られ、自分だけの心の恩人と信じていた先輩・澄也に凌辱されてしまう物語と。
 暗いですか?(笑)
 いやいやいやいや、読んでいただければわかりますが、とっても甘いんです。
 初対面で思いもよらず冷たい態度を取られショックを受けた翼でしたが、じつは澄也は名うての遊び人でもありました。
 学園内の美人たちを手当たり次第に食い散らかしていたのです。
 偶然、寮内の澄也の部屋の前を横切った翼は、部屋の中で繰り広げられていた澄也と恋人(?)の痴態を目にして固まってしまいます。

「…お前も食ってやろうか?」

「食えるもんなら、食ってみろ」

「たまには、いかもの食いも悪くないな」

 そう言うと澄也は、毒蜘蛛族の特殊能力である糸を吐き出し、翼の身体を絡め取り自由を奪います。

「食い尽くしてやる。光栄に思え」

「縛るなんて卑怯…ん、あっ」

 不意に澄也が翼の首筋に噛みついてきた。

(えっ…ちょっと、なに!?)

 噛まれたところから、痛みではない甘い震えがじわりと広がり、下腹部にも熱が灯る。
 同時に幼い性器がふくらみ、翼はびっくりして息を呑んだ。

(なに? 殴るんじゃ…ないの? なんだよ、これ…っ)

「乳首は朱鷺色か。遊んでないな」

 小さく慎ましやかな胸の飾りを指先でつつかれ、翼はびくん、と震えた。

「や…、な、なんでそんなとこ…あ」

 もう一度言いますが、一生懸命頑張ればきっといいことがある…そんな風に思っていたいい子ちゃん・翼が自分の力ではどうにもならない現実と魅惑的な先輩・澄也に出会い、ぐずぐずにされちゃうのが本作です(笑)。
 その意味で本作はとーっても“優等生受け”です!
 翼は澄也の甘い魅力と(そしてネバネバする糸)に絡め取られ、「こんなことしちゃダメだ…」と思うのに、澄也に命じられると反抗できずに身体を任せてしまいます。

「う、うん、せんぱ…」

 ついばむように口づけられ、小さな頭をかき抱かれて撫でられるとなぜか安心し、翼は知らず知らずのうちに腹を緩めていた。
 すると、澄也がゆっくりと中へ入ってきた。

「ん、ん…っ、んっ」

 それでもきつくて、涙がこぼれた。
 澄也の手が慰めるように、翼の膝頭を撫でている。

(この人…ちょっとだけ、優しい)

 あんなに意地悪だったのに、翼が本当に怖がるとまるで恋人にするように甘くなった。
 澄也の性器が全て入ると、翼の中が息苦しいほどいっぱいに感じられる。

「ち…ちゃんと入った…? せんぱい…」

 未経験なことに不安になった翼が訊くと、一瞬驚いたような顔をした澄也が、くっと苦笑した。
 意地の悪い冷笑ではなく、もっと、困ったような笑みだ。

 な・の・に!
 エッチが終わると、やっぱり最初の時のように冷たくなる澄也に、翼はわけがわかりません。
 いやー、いったい澄也は何を考えてるんでしょうねぇ。
 先程も書いたとおり、この澄也はホントしょうがないヤツなんですが(ネタバレの場面では本気でこいつ情けねぇなあとブログ主も感動した)、でも、けなげで頑張り屋のいい子ちゃんがぶち当たる“壁”、優等生受けBLで必須である主人公が乗り越えなければならない対象として出てくる攻めキャラとしては、なかなか頑張ってくれてるんですよ。
 ハイクラス中のハイクラスにしてモテモテ、成績優秀、運動万能、家柄も最高級という。
 翼は、つねにこんなスペックの澄也に対して、口では「ロウクラスだからってバカにするな!」と言いながら、どこか一歩負い目を感じて接しています。
 この煩悶が…イイ!
 シジミチョウだから好きになってもらないのかな…とか翼は苦しむわけですよ。
 たまらんですね、ぶっちゃけ(笑)。
 そしてクライマックス場面でフタを開けてみれば、そんな“巨大な壁”かと思われた完全無欠の攻めキャラが、じつはとんでもないヘタレというかクソ野郎というかチンケなただの高校生だったという(笑)。
 でも、翼にとっては、そんなことがあっても、最初から最後まで“大好きな澄也先輩”なんですね。
 なんせ自分に生きる気力を与えてくれた恩人ですから。

 そして、最初に書きましたが、樋口美沙緒先生のBL作家としての“原風景”こそ、これなんだなぁとブログ主は思いましたですよ。
 外見は貴族の御曹司だったり、ハイクラス中のハイクラスであるレッドタランチュラの万能高校生だったりするのに、じつはどうしようもないほどダメ野郎でヘタレで読者がビックリするくらい見かけ倒しだという攻めキャラと、そんな男を驚くほどの辛抱強さと無私の精神で支えつづけ愛しつづけるけなげな受けキャラ。
 この組み合わせなんだなーと(笑)。

 後書きにて、樋口美沙緒先生が書かれてるこの一言にそれが凝縮されてるといえましょう。

「俺様が情けな~く受に跪(ひざまづ)くのが快感な私なので、許してください。」

 デビュー作の2人もそうでしたし、本作の澄也×翼もまさにそう。
 …でもここまで言えば、本作の攻めキャラ・澄也が、じつはどんなダメ野郎なのか興味出てくるでしょう?(笑)
 クライマックス場面で、コイツの本音が出たときにはブログ主は本気でビックリしました。
 だって、BLの攻めキャラが守るべき最低線の倫理(?)ってあるじゃないですか。
 ほら、ヒーローはこんなこと言っちゃだめとかやっちゃだめとか。
 ある意味、そういうラインを超えた感じのことを澄也は言うんです(笑)。
 えっ、それ言うの!? みたいな。
 これはぜひご自分で読んでみていただきたいですねー。
 でも、そんなヘタレ駄目男に、翼はけなげについていくんですね。
 優等生としての自分を粉々に砕き、屈辱を与えてくれたはずの男なのに。
 うーん、この関係性は癖になるなぁ。

 こうなると次作でも樋口美沙緒先生はやはりこの路線で来るのか気になるところですが、ブログ主としては本作のシリーズを続けていただきたいですね!
 これ、「星北学園」シリーズとしてどんどん伸ばしていってほしい~。
 とくに、主人公(受)・翼をいつも守ってくれた美人で女王さまな先輩・真耶が受けキャラのBLを読んでみたい…!
 あんな高慢ちき(いい意味です・笑)で気高い女王さまの真耶を「ハァハァ」言わせる相手は誰なんだろうと思うと、ブログ主は夜も眠れません…というか誰でもいいから「ハァハァ」言わせてあげてほしい(笑)。
 うん、あんな強気な性格なのに、じつは真耶先輩も超けなげっ子で、これまた駄目なヘタレ攻めに捕まっちゃうのもいいな!

 あまりブログ主の書いたレビューだと伝わらないと思いますが、樋口美沙緒先生はとっても小説を書かれるのがうまいです。
 構成力とか、感情表現とか、小川いら先生を思わせるうまさがあります。
 花丸文庫はいい作家さん見つけてきたですねぇ!
 コミケでもサークルさんかされてるのをお見かけするので今度は同人誌も読ませてみていただこうと思います。

 本作は、間違いなくオススメできる一冊ですので、もしよろしかったらみなさんお読みになってみてくださいませ!

 あ、書くの忘れてたことが…。
 当ブログの“お正月社説”でですね、今年の商業BL界は、妊娠→出産ブームが来るはずと書いたブログ主ですが、じつは本作ではそれ関連の描写があります。
 ネタバレになるので詳しくは書きませんが…。
 どうやって男子に出産させるのか、そこが作家さんの腕の見せ所だろうとお正月に書きましたが、なるほどこーゆーやり方もあるのかと。
 そんなあたりも要注目です。

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