ネクラで眼鏡でキモオタな優等生は“受け”るとイイよ!

委員長、地味な真面目くん、オタク少年…そんな“優等生受け”BLが大好きな腐男子のブログです~。

 

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[レビュー]“一人リバ”の傑作にして革新作! 攻めとして生きてきたエリート医師が、若い男に組み敷かれて… 西江彩夏『純情な人のように、さよなら』


Category: レビュー 小説単行本   Tags: 特徴-社会人  受け-エリート  受け-眼鏡  特徴-年下攻め  ●ナ行-西江彩夏  
純情な人のように、さよなら (ビーボーイノベルズ)純情な人のように、さよなら (ビーボーイノベルズ)
(2010/01/20)
西江 彩夏

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 まったく期待していなかった本でした。
 東京・神保町の高岡書店で平積みしてあるのを見たときも、最後の最後まで買おうか、買うのやめようか迷いましたし…。
 それがこんな大当たりだったとは…!
 BL本の購入というのは本当に難しいですよね。
 あー、あの時に買うのやめてたらと思うとゾッとするー。
 本書のいったいどこにそんなに心惹かれてしまったのか、そのあたりをレビューさせていただこうと思います!

 ただ!

 本作を読んで、ブログ主と同じような忘我の境地を誰もが味わえるかどうかは、保証できませんー(笑)。
 本作が万人に受ける本かどうかは、ぶっちゃけブログ主にはよくわかりません。
 本書は、“好きな人にはたまらない!”という類の一冊、読み手を選ぶ傑作だと思うんですよね。
 なので、どーゆーBLが好きな人なら本書に没頭没入できるか、そのあたりを丁寧にご紹介できればいいなーと思います。

 まずズバッと申しますれば…。

 本作は、最近BL界でちょっとした流行語になっている“一人リバ”の傑作です。
 この“一人リバ”というのは、小説ディアプラスのインタビューで、人気BL小説家の和泉桂先生が語られた言葉です。
 ゴミ部屋のどこに埋もれてるのか、当該号が見つからないので記憶で書きますと(情けない…)、いっぱしの攻めのつもりでいる主人公の前にある日、何もかも自分を上回る凄い男が現れるわけですよ。
 すると、哀れ自分が攻めのつもりでいた主人公クンは、有無をいわさずスーパーマンの軍門に降らされ、受けキャラとしての自分を開花させられてしまうんですな!
 でも、スーパーマンに抱かれながらも、もともとは攻めキャラでいた“本当の自分”を捨てきれず、葛藤に煩悶しちゃうという――そんな状態を“一人リバ”と言うのだそうです。

 ブログ主は、小説ディアプラスでこのインタビューを読んだときに、ハタと膝を打ちました!

 常々ですね、ブログ主がこのブログにおいて、“優等生受け”の本質はこれだと主張していたことと同じだからです~(笑)。
 “優等生受け”BLの醍醐味ってのはですね、自分こそが成績トップ、誰にも負けないと思いこんでいた優等生クンの前に、ある日、どうやってもかなわない頭脳を持った凄い転校生が現れ、優等生クンが一敗地にまみれるところから始まるわけですよ。
 自分から栄光のトップの座を奪った憎き転校生。
 でも、優等生クンは屈辱にまみれながらもそいつに惹かれてしまう自分を抑えられないわけです。
 この相反する苦しい感情の動きにこそ、“優等生受け”を読む楽しみがあると。

 どーですか!
 まったく同じ構造ではないですかー!

 そして、今回ご紹介する西江彩夏先生の最新刊『純情な人のように、さよなら』は、まさにそんな“一人リバ”にして“優等生受け”な傑作になっているんですな!
 読み手を選ぶといったのは、とりあえずはそーゆー意味でありまする。
 主人公(受)は、エリート医師として大病院に勤務する整形外科医の柚木智大(ゆぎ・ともひろ)です。
 今年30歳になった柚木は、表面上はものわかりよくにこやかな医師として患者からも絶大な人気がありますが、じつはそれは単なる仮面です。
 内心では、看護師や同僚医師、患者に至るまでを冷たい目で眺め、でも表向きはにこやかに対応しているのは、「はい」「はい」と言ってるのが一番ラクな方法だとわかっているから。
 本当は、自分以外の他人をバカにしきってるようなエリート医師です。

 ゲイである柚木は、そんな人生哲学をもちろん恋愛にも適用してこれまで過ごしてきました。
 面倒くさい相手は嫌い。
 セックスだけ楽しめて、後腐れ無く抱き捨てられるような若い男を取っかえ引っかえして、これまで生きてきたんですね。
 だから、つい先週も、付き合っていた大学生の男の子に浮気がバレ、

「あんたみたいな人でなし、見たことないよっ! もう死んじゃえ!」

 なんて言われながらシャンパンを掛けられたりして、それで別れちゃったりしてます。
 まあ酷い人生を過ごしてきてるんですな!
 でも柚木は、別に痛くもかゆくもありません。
 そもそも、そーゆー他人からの感情をまともに受け止めず、「バカなやつだ」と思うだけの人間なのです。
 実際、他に何人もセックスを楽しめる若い男の子もいるので。
 つまるところ、何をやっても正しいのは自分、そう思いこんでる鼻持ちならない攻めキャラ様が、主人公(受)の柚木という男なんですね。

 さて、ストーリーはここから本格的に始まります。

 ある日、柚木は都心の駐車場で一人の若い男・前岡を拾います。
 男はちょっと見たことがないような美しい顔をした精悍な若者で、「たまにはこういうヤツも抱いてみるか…」なんて興味を持った柚木は、自宅まで連れ帰ります。
 ところが…。
 ベッドの上で組み敷かれたのは、若い男ではなく、柚木のほうだったのでした。
 はい~、それではまず柚木の“攻めキャラ”“男”としてのプライドがずたずたにされる場面をお楽しみください~(笑)。

「なにを勘違いしてる。悪いけど僕は抱かれる方はご免だ。そっちの経験はほとんどない。というか初めてだ。…離せ」

 前岡は少しだけなにかを考えるような素振りを見せたが、じきに無表情で言い捨てた。

「それは奇遇だな。俺もだ」

 両腕を高く持ち上げられ、ネクタイを抜かれる。

「なっ…」

 あっという間に両手を頭の上で縛り上げられた。
 獰猛な獣のような動きと口元に浮かんだ薄笑いに唖然とする。
 なによりも腹が立って、柚木は力任せにその脇腹を蹴り上げた。

「なんの真似だっ。いい加減にしろっ」

「ちょっと黙ってろよ」

 面倒くさそうに言い捨てられ、かっとなる。
 また脇腹を蹴ったら、苛立ったのか突然頬を張られた。
 …ひっと声が漏れる。
 痛いというより熱いような感じがして虚を衝かれ、出し抜かれたせいで反撃が遅れた。

 その間にシャツのボタンを外され、気がつけば脱がしにかかられていた。

「…おいっ」

 それでも柚木は暴れた。
 どうしても譲れなかった。
 抱く方はいいが、抱かれるのは趣味に合わなかったからだ。
 「女」にはされたくない。
 ゲイであっても柚木が30年間守ってきた矜持だった。

 単純に、男に組み敷かれるのが不本意だからだ。
 同じ男にそうされると自分が弱くなって、負けの立場に立たされたような気分になる。
 まさかこんな若造に…と思うと目の前が真っ暗になる。


 最近は、本当にこーゆー表現がBLでタブーじゃなくなりましたよね。
 この一文です。

 「女」にはされたくない。

 この場面では効果的な一文になってますよね~。
 主人公(受)・柚木の気持ちをひと言で言い表してます。
 ブログ主は先程から書いてますとおり、「自分こそ一番」と思いこんでる男子が死んだほうがマシという屈辱にまみれつつ、でも自分に屈辱を与えるその相手に抱きついちゃうというシチュエーションが、それこそ死ぬほど好きなので、こーゆーですね、堂々たる男子が「女にされる」なんていう表現は、ずきゅーんと萌え心を刺激されるんです。
 だから、ついに柚木が前岡に女として抱かれてしまった次の場面でのこんな描写が、とっても心を震わせます。

「うっ…うっ、うっ」

 どんなに柚木が嫌がっても前岡はごく嬉しそうな顔をしていた。
 …時々ついばむようなキスをされる。
 手首を縛られたままで腕を高く上げさせられ、上等なシャツはしわくちゃ。

 胸元をはだけて乳首に噛みつかれ、音を立てて吸われる。
 でも痛かったのは最初の方だけだった。
 前岡はすぐに噛むのを止め、舌先で胸の突起をちろちろと嬲りながら全身への愛撫に移っていった。

「あっ…あっ」

 前髪を梳(す)かれて、きっと自分以上に大きな手の平で扱かれる場所にどうしても声が漏れる。
 それでも快感を認めたくなくて、二の腕を噛んで必死で声を押し殺した。

 ブログ主の心が、どの一文に震えてしまったか、わかりますか!
 乳首も、キスも、アレを扱かれるとかもどうでもいいんです!!!
 ブログ主の心の琴線が震えたのは…。

 前髪を梳(す)かれて、

 の一文です。
 え、そこなの? という(笑)。

 これ、男がされると、とっても屈辱的な仕草なんですよね~。
 完全に子供扱いというか、お前のことなんか対等と思ってないよ! というポーズですから。
 直前まで「俺がお前を抱くんだ!」なんて突っ張ってたエリート医師サマが、泣きそうになって快感に喘いじゃいながら、前髪を撫で撫でされちゃってるのがこのシーン!
 いやー、エッチの最中に攻め→受けで頭を撫でる、髪の毛を梳いてあげるという場面は、BLでは、わたしゃ初めて読みましたよ!
 みなさんもご記憶ないでしょー!?
 これは新しい!
 ある意味、非常に動物的な行為ですよね。
 俺が上位、お前が下位というのを知らしめる行動なわけですから。
 そんなのをエッチの最中に、元・攻めキャラ男子に向かってやらせる西江彩夏先生のあざとさよ(笑)。
 いやー、でもこの短い一文にブログ主は死ぬほど萌えました。
 この場面、頭を撫で撫でされた柚木はどんな屈辱に震えたんでしょうねぇ…!
 ああああああああ、想像するだけでヨダレが…(笑)。

 で、そんなことまでされちゃった最後は、

「もう…いやだ」

 と言いながら、柚木はぽろりと涙を零し、完全に前岡の軍門に下ってしまうんですね。
 その場面、女の子みたいに喘がされちゃってる柚木の様子はノベルスを買うとたっぷり読ませていただけるわけですが(笑)、いやまあ可哀想なくらい「あんあん」言わされてまっせー(悪)。
 30男が、ずっと年下の若造に腰を使われてねぇ…。
 ううう…、その瞬間の柚木の屈辱を思うと、もう可哀想で可哀想でつい目からヨダレが…!!!!!

 さて、こう読んでくると、まさに本書は“一人リバ”の典型みたいなストーリーになってますよね。
 自分こそが攻めキャラだと思っていたエリート医師が、若造に抱かれ女にされちゃって煩悶するという。
 こーゆーBLがお好きな人にはたまらないと思うわけですが、ここであえてブログ主はちょっと異を唱えたいなぁとも思うんですな!

 というのは、ずーっと昔からじつは気になっていたんですが、そーゆー“一人リバ”のBLってのは、究極的にはアンハッピーエンドでしかありえないと思うんですよ。
 だって、“本当の自分”を無理やり捨てさせられた主人公(受)が、えんえん屈辱と煩悶の中で生きていくというお話しなわけでしょ?(笑)
 暗いですよ、これは!

 というかですね、ちょっと大きな話になりますが、現代のBLはですね、ブログ主のようなラブラブイチャイチャBL大好き主義者からすると、“ツンツン男子”に力を入れすぎだと思うわけです。
 攻めキャラから「好き」「好き」言われても、「うるさい!」「好きって言うな!」とかツンツンしちゃう受けキャラが多すぎなんですよ、今のBLは~!!
 ヘタすると、コミックス一冊丸々、最後までツンツン男子が「俺も好き…」って言わないまま終わってしまう話ってザラじゃないですか。
 うへー。
 そんなの読みたくないー。

 で、“一人リバ”に話を戻しますと、現在のところのですね、BL界における“一人リバ”の扱われ方というのは、基本的にこの“ツンツン男子”至上主義に基づいたものになっちゃってると、ブログ主は思うわけです。
 つまり、本来は攻めキャラなのに、自分よりも強い男の手で受けキャラに落とされちゃった後、この“一人リバ”子ちゃんはですね、残りの人生を一生ツンツンして生きていくわけですよ。
 「俺は本当は攻めなのに…」という悔しさを抱えたまま、相手の男に抱かれ続けるという。

 ぎゃー!
 俺はそんなBLは嫌いだー!
 もっといちゃいちゃラブラブしたのが読みたいんじゃー!!!!

 ――というわけで(笑)。

 ここでですね、ブログ主は今後はあえて逆方向から“一人リバ”を読み解くべき時が来たと思うんです。
 というか、本書を読んでそう思いました。
 もう“一人リバ”の主人公が、嫌々受けキャラにされちゃったと考えるのは古い!
 ここは発想を逆転させて、“一人リバ”っ子は、本当は自分より凄い男に抱いてほしかったのに、そんな欲望を隠して、もしくは自分で気付かないままこれまでの人生を攻めキャラと生きてきちゃっただけの、“本籍・受けキャラ”な男子だったのだと!
 今後はそーゆー風に“一人リバ”について考えていきたいと思うのですが、みなさまいかがでございましょーか(笑)。

 こう考えると、“一人リバ”っ子のその後の人生は完全にハッピーエンドになるわけですよ。
 本当の自分――つまりは、自分よりもっと強い男から「女にされたい…」と思っていた自分の欲望を完全に満たしてもらえるわけですから(笑)。
 これまでの“一人リバ”解釈では、彼は“本当の自分”を否定されて生きていくと考えていたのに対して、この新“一人リバ”解釈では、主人公は“本当の自分”を取り戻して幸せの中で生きていくということになります(笑)。・

 なんというコペルニクス的転換! ←自画自賛

 本作でいえば、柚木というエリート医師サマは、もともと自分より強い男にすがりついて可愛がられたいという欲望を持っていた人間なんです。(と考えてみましょう)
 でも、これまでの人生では、自分が抱えるそんな欲望から無理やり目を背け、攻めキャラとして若い男の子を抱いて生きてきたわけです。(と考えてみましょう)
 それが、前岡という男との出会いによって、強制的にその仮面を剥がされ、“本当の自分”であるところの「女のように抱かれて喜ぶ」自分を初めて受け入れ、解放できるようになったんですな!(と考えてみましょう)
 なんという自己実現!(笑)
 こりゃ今後の柚木の人生はハッピー満載ですよ。
 本当の自分といっしょにラク~に生きていけるわけですから。
 でもこう考えると、ストーリーの中でこのあと次々出てくるエッチ場面も、「嫌々抱かれてる」んじゃなくて「喜んで抱かれてる」と思えるので、読者としてもとってもエロスな感じで読んでいけるわけなのです。

 え?
 そんなのは詭弁だと?
 一つの事実を無理やり逆から解釈してるだけだと?

 いやまあそうなんですけど、BLってのはそもそもファンタジーなわけですよ。
 そんなファンタジー・ストーリーをどう読み解くかは、読み手に与えられた、これこそがまさにBLを読む楽しみそのものだとブログ主は思うわけですよ。
 で、“一人リバ”なBLは、これまでですね、突っ張って生きてきた“ツンツン男子”が一敗地にまみれる様子をニヨニヨして楽しむのが正道といわれてきたわけですが、今後はそれを脱していくべきだと思うんですな!
 本当は、「可愛い」「可愛い」と言われて「女のように抱かれたかった」主人公が、ようやくそれを許してくれる男と出会い、本当の自分を解放する話だと読み解くべきだと思うんです~。

 では、。ブログ主にそんな新思考を授けてくれた本作より、元・攻めキャラの主人公・柚木が前岡に無理やり抱かれちゃった後、いったいどうなってしまったかを、具体的に見ていくとしましょう。

 初セックスの翌日、前岡は柚木に向かって、こんなことを言います。

「指先まで綺麗で、深窓の令嬢みたいに上品」

 それから、ベッドの中での柚木をこう表現します。

「昨日のあんたは可愛かった…可愛かったんだ。その辺の男も女もからっきし目じゃないぐらいに」

 このセリフ、従来の“一人リバ”的解釈では、柚木は言われてさぞや嫌な気持ちになってるだろうな…と妄想する方向に読者の頭は向かってしまっていたわけですが、新しい読み解き方でいけば、こーゆーことになります。
 柚木はこう思ってるに違いないんです。

(うれしい…)

 と(笑)。

 いやいや、もちろん実際のストーリー中で柚木がこんな気持ちを吐露しているわけではないので念のため。
 あくまでブログ主が勝手に柚木の気持ちを読み解いてるだけですからー(笑)。
 でも実際、文中でですね、前岡から「可愛い」と言われた柚木は、こんな心情を吐露してます。

 ――可愛いなんて言われたってあまりにも不釣り合いで不似合いな形容詞すぎて対処に困る。
 誰も自分には言わなかった言葉だ。
 言ってほしいなんて期待もしなくなった言葉だった。

 ほら!
 ほら!! 
 ほら!!!(笑)

 本当はコイツ、「可愛い」って言われたいんですってば!
 間違いない!(古)
 でも、誰も言ってくれないんでスネてただけなんですよ! 絶対!
 そうなんです。
 柚木という男は、本当は周りから「可愛い」「可愛い」と言ってほしかった男なんですよ。絶対そう! ←強引だな
 でも、誰も言ってくれないのでスネちゃって、それなら俺は抱く方に回るぜ…ってなもんで、これまで攻めキャラとして生きてきただけなんですよ、絶対(笑)。
 逆にいうと、言ってほしかったのに言ってもらえなかった「可愛い」という言葉は、柚木にとっては秘かな自分のコンプレックスを象徴する単語でもあるんですね。
 言ってほしいけど、言われたら恥ずかしい…という。
 ああー、この微妙な二律背反、そして煩悶…。
 言われて赤くなってるだろう柚木を想像すると、ブログ主は興奮してたまらないんですが(笑)。

 ではストーリーをさらに見てみましょう。
 さらに、前岡から連日抱かれ続けるなかで、柚木はこんな境地に達していきます。

 日が経ってくると、案外と女の立場になるのも悪くなかった。
 押し入れられる時の違和感と圧迫感には今でも呻くような声が出るが、馴らされて揺さぶられているうちに心が変化する。

 甘い声で前岡を煽り、締めつける場所に片頬を歪める男を見ていると、肩口を押さえられて征服されている自分に奇妙な陶酔感が湧いた。
 好き勝手され、散々に奥を貪られることで生まれてくるマゾヒスティックな快感と言ってもいい。

 そりゃ本当の自分を取り戻させてもらってるんだもん、気持ちもよくもなりますよね(笑)。
 別の言い方をすれば、前岡とのセックスは、これまでの人生で「可愛い」と言ってもらえなかったコンプレックスを取り除く作業でもあります。
 だから、セックスの真っ最中、柚木はこんなことを思ったり。

 もっと強引に、もっと力づくでもいい。
 なのに、前岡はそうは抱かない。
 どんなに煽られても柚木の身体を守り、ひどい揺さぶりをかけてこようとはしなかった。

 いっそ物足りなくなって、「もっとしてくれ」と挙げ句の果てには言わされる。
 自分から「欲しい」と言い、「動いてくれ」と言わされたように、いつしか柚木は身も世もなく喘いでいた。

「いい…いいから…あ」

 ずるい男だった。
 なにも求めようとしないから、逆に欲しがってしまう。
 こんな三十にもなったような大柄な男が哀願する姿はさぞや滑稽で、さもしいに違いないと柚木はどこかで思った。

(略)

「いいから…すごく、感じるから」

「……」

「あ…んんっ…んっ」

 幸せすぎて、ふっと不安になるんでしょーな!
 望み通りに自分を「可愛い」と言って抱いてくれる男が目の前にいるからこそ。
 こんな自分はさそや滑稽でさもしいに違いないとか自虐的なことを思っちゃう柚木の心が可愛いとお思いになりませんか、みなさん!

 というわけで、この後のストーリーは、ラストまでですね、「女にされてしまった」自分を恥ずかしくも嬉しく思いつつ前岡に抱かれる柚木の、けなげで卑屈で可愛らしい感情の揺れを楽しむことができるんですな。
 いやー、至福のひととき(笑)。
 一冊まるまるこれですから。
 ストーリーの後半は、だんだんと芸能界で成功して人気俳優になっていく前岡のまぶしい姿に、今やすっかり可愛い受けキャラちゃんになった柚木が、気後れしたり、自分は邪魔なんじゃないかと悩んだり、そっち方面でも美味しい姿が描かれてます。
 ああー、卑屈な受けキャラ…!
 やばい、俺がそーゆーオーラを主食にして成長する宇宙怪獣だったりしたら、今ごろ体長4千メートルの富士山よりでかい怪獣に成長できる自信がある!!!!(笑)
 このレビューの最初のほうで、読み手を選ぶと書きました意味がおわかりいただけましたでしょーか。

 さて、ここまで賞賛しておいてなんですが、本作は細かいところを見ていくと、まだまだ若書きというか、もっとそこを掘り下げてほしいのに…! という箇所がいくつもあります。
 でもそれを上回る、作者の愛する世界を読者の眼前に展開させる筆力が、ここにはあるんですね!
 上でいくつもご紹介させていただいた名場面の数々、これは西江彩夏先生だから書けたと言っていいものばかりです。
 髪をなでさせたり、前岡にしつこいくらいに柚木へ「可愛い」を連発させたり…。
 ぐいぐい引き込まれちゃいますよ、ほんとに!
 これは一度ひたってみて、絶対に損はないと思います。
 以下は完全に感覚的な感想なんですが…。
 西江彩夏先生の小説には、新時代の匂いがします。
 何かが新しい。
 なにかこれまでのBLとは違う、“違和感”があるんです。読んでると。
 これが大きく結実するか否か…。
 西江彩夏先生自身の今後を占う意味でも、ブログ主はとっても注目していきたいと思っています。

 とりあえず西江彩夏先生の次の新刊が出たら、今度は迷わずにレジへ直行することにするといたしましょう~(笑)。

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Comments

 
 あけましておめでとうございます。本年がちーけんさんにとって良い年になりますように。

 ”一人リバ”、なるほど…。深い!
 攻が受になるとか大好きなんですが、こんなに考察したことはありませんでした。
 そもそも腐キャリアの最初はBLカップルにゲイという言葉が出てくると、それがひとつのキャラクター説明として取り扱われていて(つまり説明不要として取り扱われている部分があって)それじゃあさっぱりわからんワイ、と思い、いわゆるノンケ×ノンケばっかり読んでいましたが、ちーけんさんの考察を拝読すると、なるへそ~という補完でBLがより楽しめる気がします。
 私の大好物は、主人公カップルの受の彼氏だった、もしくは当て馬として華麗に登場するようなわりと偉そうなの(元・攻)が、更に横から出てきた第四の男的若いの相手に受になるというスピンオフ展開なのです。
 これが意外とないような気がしていたので、今回のレビューにはつい興奮してしまいました…!
 
 それから、昨年中、ちーけんさんのレビューを参考にさせていただいて購入したもの及び派生のご報告をさせていただきます。
 読んだ後、ちーけんさんありがとう!と何度思ったことか。

 日高ショーコさん「足りない時間」「シグナル」:優等生・オブ・ザ・イヤーでした、三上くんが。
 鈴木ツタさん「3軒隣の遠い人」:幼なじみものに開眼しました。幼なじみすごい!
 木原音瀬さん「Don't Worry Mamaシリーズ」:ブサイク受…いい…と思ったところで、「脱がない男」で撃沈。主人公の男(攻)があんまりにも怖いやつで、しばらくリーマンものが読めないと思いました。が、半年後にはなぜか続編の同人誌が手元に。その間にちーけんさんの「ダメ人間がBLで」という記事を拝見して、なるほど、BLで見なかっただけか、と安心したせいでもあります。
 ダメ人間という意味では、たとえばホームズなんかも相当だもんなあ、と納得しまして。
 ところで、同作家さんの「夜を渡る月の船」を読まれましたか?
 オッサンものなのでちーけんさんは読まれないかなとも思ったんですが、読まれたら感想をぜひ伺いたいです。
 私はといえば、あまりの緊迫感にヒーヒー言って読了しました。

 重ねてちーけんさん、本当にありがとうございます!助かってます!
 これ読めてよかった!というBLに出会えると本当に潤うんです。
 その証拠に、しばらく忙しくてBLが読めなかった頃、家人に「カムチャツカ半島のヒグマ」だの「人相違反」だのさんざん言われた私が上記BLを読み、宝くじのCMの人に心持ち似ていると言われるまでに福々しくなりました。
 そろそろメタボと老眼が兄弟分になりつつあるような気がしてなりません。
 ちーけんさんには、レビュー自体を楽しみに、かつ、お仕事関係はエールをお送りします。
 当初私はちーけんさんのモーレツ会社員っぷりよりも「会社からBL本買いに行って戻る」「会社のデスク周辺にBL」「トイレでBL」というのに「どうか他の社員さんにバレませんように!」とハラハラしていたものです。
 まさか結婚式でバラしたいという野望をお持ちだったとは!
 しかし、妹周辺の女性の腐女子率の高さを見るにつけ、すかさずそこで花嫁さんが「私もよ、ちーけんさん!」とかなんとかいうことになりそうな気もします。
 

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