エロティックエゴイスト (カルト・コミックス X-kidsセレクション) (2009/10/23) いさか 十五郎 商品詳細を見る |
やっぱり“優等生受け”の醍醐味は、孤独で頑ななインテリくんを、ぐずぐずのメロメロにしてしまうところにあると思っているブログ主ですが、まさにそんな一作が発売されました!
いさか十五郎先生の最新刊『エロティック エゴイスト』に収録された『クールな姫に恋して』です。
この作家さんは、優等生スキーな視点で見ると、思いっきり“優等生受け”な作品を描いてくださるかと思えば、真逆のヒゲオッサン受けが飛び出したりという、なかなか扱いづらい(?)マンガ家さんなんですが、今回のコミックスも全体で見るとそんな振り幅の大きさが思いっきり出てまして、今回ご紹介する『クールな姫に恋して』が載っているかと思えば、短髪顎ヒゲの教師が受けキャラという『生徒の本分』というマンガも載ってたりとやっぱり百花繚乱でした。
では、とにもかくにもまずは『クールな姫に恋して』からご紹介していくといたしましょう!
主人公(攻)の大学生・江口は、短髪ツンツンでいかにも大ざっぱそうな雰囲気を漂わせた今時の青年です。
大学の学生課で紹介されたバイトで、同じ大学内の研究所に向かうと、出てきたのは神経質そうな上司の教授・高原セツでした。
この受けキャラ・高原がですね、目つきも口も悪くて、自分以外の人間をつねにバカにしたような口調で話すインテリさんなんですな!
すげープライド高そうです(笑)。
「履歴書は見た。俺の足を引っ張るなよ」
そして冷たい視線でそう言い放つ高原に、江口の反骨心はメラメラと盛り上がります。
(うわー、高慢な態度)
(絶対ギャフンと言わせてやりたい)
といいつつ、じつはこんな思いも江口の心の中に湧き出てきてるのが、とってもBL(笑)。
(しかし凄ぇ美人だったな…)
たしかに高原は白衣が似合う繊細な感じの男なんです。
外界から隔絶された研究所の中で“純粋培養”されてる感じだし。
えへへ(笑)、ブログ主としてもとっても心躍るタイプの受けキャラですよ。
翌日から、江口は高原に言われたことを遮二無二やり遂げ、なんとか見返そうとします。
もう大学そっちのけで、バイトに全力を傾注している感じです。
級友からもこう言われます。
「日に日にやつれていくなぁ。お前」
「キツすぎんだろ。限界超えてんじゃねぇ?」
対して、江口は「絶対負けねぇ!」みたいな感じで目を三角にして言い返しますよ。
「いや! 例えこの身が朽ち果ててもやめはしねーぜ!!! あいつに礼を言わせるまでは!」
というわけで、だんだん掴んできていただけたかと思いますが、怜悧なインテリ教授を何とか振り向かせようと、お馬鹿な(?)年下学生が頑張っちゃうという関係性が、本作の基本ストーリーになってるんですね。
“優等生受け”にこだわる当ブログとしては、“怜悧なインテリ教授”がどんなタイプの怜悧さなのかというところが重要になってくるんですが、ほら、いろいろあるでしょ?
怜悧な教授っていっても。
本当に冷酷で人間にまったく関心がないタイプなのか。
単に天然でぽやぽやして世間から浮いてるタイプなのか。
その点、本作の高原はですね、すごく気を張って仕事をしているんですが、どこか危うい感じを漂わせていて、「この人、こんなに仕事に没頭していて大丈夫なのか?」と周囲に思わせちゃうタイプなんですね。
つまり、側で働いているお馬鹿な大学生が、いつの間にか「こいつは俺が支えてやらねーと!」と思っちゃうような。
「ミスタイプしたら、1文字×100円、給料からマイナスするから」
「はあ?(怒)」
だから、こんなやりとりを繰り返しつつも、江口はできるだけ高原の仕事を助けてやろうと、無理難題をふっかけられても、頑張ってやり遂げたりしちゃいます。
そして、働きに働いて倒れそうになっている上司・高原のことを横で見つめて、江口はこんなことを心の中で呟いちゃうんですね。
(しっかし本当に仕事好きなのな)
(細い腕…折れちまいそう)
(疲れてる割にキレーな顔してるし…)
(まじ30越えてんのかぁ?)
そして、いつしか高原という人間に惹かれている自分に気づき、でも同性の上司になんかするなんてありえるわけもなく、これまでどおりの毎日を送る江口ですが、そこで“事件”が起こって――。
というところで、ここから後はぜひご自分でコミックスで読んでいただきたいんですが、もう少しだけ、“優等生受け”視点的にいいなぁと思うところだけ、ちょびっとご紹介させていただきましょう。
あ、その前に上のセリフで「細い腕」って出てますが、やっぱり優等生はこうでないとね!(笑)
閑話休題。
以下、“優等生受け”視点でいいところをご紹介していきましょう。
まず、馬鹿だけど明るくて面倒見がいい江口には、バイト中もたくさん電話がかかってきたりするんですが、それを見て高原がちょっと拗ねたように言ったりするんです。
「彼女か?」
「え? さっきのっすか? 友達っすけど」
「――友達か」
「友達かって…。セツって友達いないの?」
「…必要ない」
「!」
うわー、これぞ優等生という告白ぅ(笑)。
このやりとりから見え隠れする卑屈な高原の心の可愛さよ!
成績は優秀、偏差値は高くて今では研究所の教授にまでなっているインテリさまが、「友達なんか必要ない…」って口にしちゃうこのコンプレックスよ!!!
そして、そんな高原を見て、江口はいかにも明るい感じで、こんな言葉をかけるんですよ。
「じゃあ、友達んなろう! 俺あんたのこと知りたいし」
「! 年齢が違いすぎる」
「関係ねーよ」
「私は上司でお前は助手だ」
「外に出たら、江口荘太と高原セツだろ?」
「…勝手にしろ」(目元を赤くして)
ブログ主は前から思ってるんですが、こーゆー場面の何がイイって、同じ話題を話している両者の“温度差”だと思うんですよね。
江口にとっては、「誰かと友達になる」なんてことは簡単なことで、この場面だって、「えっ、友達いねーの? じゃあ俺と友達なろーよ!」ってぐらいのセリフかもしれないわけですよ。
でも、言われた高原はまったく違いますよね。
誰も自分のことなんか好きになってくれないまま大人になり(と本人は思ってる)、このまま誰とも心を通わせることなく死んでいく人生だと諦めていたら、目の前に突然現れた太陽のような年下の男。
そいつは何でもないような顔で、「じゃあ、俺と友達になろう!」なんてことを言ってくるわけです。
地獄で天から一筋の光が差し、「汝は救われる」という神の言葉が聞こえたような状況ですよね、これって。
高原の人生において、ここからはこの江口の言葉だけが“生きる希望”になってしまうわけです。
どーですか、この差は(笑)。
この言葉を言われた瞬間、どれほどの歓喜が高原の体内を駆けめぐったかを想像するだけでもう…。
そして万一、万一ですよ!!!
こんなことを言ってくれた相手である江口から、なにか手酷い裏切りでも受けちゃったりしたら、いったい高原の心はどうなっちゃうのでありましょうか。
そ、想像するだけでヨダレが涙が…!!!!!!!
あああああ!
このあとのストーリー展開をもうこれ以上教えられません!!!!!
こんなに純粋で可愛い高原があんなことやこんなことにぃぃいいい!
江口、お前はなんということをしてくれたんだあああああ!(ヨダレ
えー、ほんとにネタバレになるので、お嫌な方はここで読むのを中止していただきたいのですが、この後のクライマックス場面で、いよいよ高原が江口に“陥落”するところも、“優等生受け”視点では相当に美味しい描写になってます。
あの冷酷で口の悪い教授サマが、顔を真っ赤にして江口への思いを吐露するんです。
「俺はお前のことなんか嫌いだ!」
「居なくなれ! 何も手につかない。休んでるときも、仕事中もお前のことばかりで!」
うわー、可愛い(笑)。
そして、江口に抱きしめられた高原は、キスされると「ふっ…」なんて喘ぎ声を漏らしつつ、可愛い反応を見せまくるんですよ。
あ、余談ですが、このエッチ場面はですね、教授室のいかにも高そうな革張り椅子の上で繰り広げられてまして、これもインテリ受けっぽくてとても得点が高いです(笑)。
「駄目だ、そんなくっついたら――あっ」
「セツ…大きくなってる」
「やだっ」
うわ、あの偉そうなインテリ教授が「やだっ」ですってよ、奥さま!(笑)
「駄目っ…いやぁ…あぁっ!」
「こんな良さそうなのに?」
「変なトコ舐めるな…っ」
「…はっ やべ…気持ちいい」
「ふぁ」
「セツ、やじゃない?」
「うん…」
さあ!
そして!!!
この次のコマで、もう超絶に可愛い高原の行動が飛び出します!!!
…さすがにもうこれ以上は書きませんが(笑)。
このコマはですね、数々の“優等生受け”を読んできたと自負しておりまするブログ主も相当やられました~(笑)。
えっ、高原ってここまで可愛くなっちゃうの!? という。
ぜひみなさんもコミックスで確かめていただきたいと切に思います!
そしてですね、本作にはなんと続編がありまして、もちろん同じコミックスの中に収録されてます。
こちらは恋人のなったあとの2人の日常編ですね。
まあ、一言を以てその内容を言い表すとしますと…。
エッチの最中のあまりの高原の言動の可愛さに、若い江口があっというまに発射させられてますよ(笑)。
まあ、それだけラブラブな内容っちゅーわけですよ。
ぐずぐずになって甘えちゃう優等生が堪能できる一作になってます。
はぁ~、よかった(笑)。
さーて、そしてですね、今回のコミックスには他にもたくさん魅力的な作品が載っていますよ。
もちろん当ブログ的な意味で!
まず絶対オススメなのが、短編マンガ『強引な恋人』です。
これは“優等生受け”のもう一つの基本形である、“自信満々な王様が、突然目の前に現れた全てにおいて敵わない男に屈伏させられ、大嫌いなはずなのに惹かれてしまう自分に悶えちゃう」というタイプのお話しです。
主人公(受)・辻恵(つじ・めぐみ)は、高校インターハイで優勝したこともある柔道部の主将です。
といっても軽量級の選手なので、上背もそんなないですし、見た目はごくごく普通の男子高校生ですが、それなりに自分には自信がありますし、同じ高校生ならば自分に勝てる相手などいないと思っていました。
そこに転校してきたのが、誰が見ても「カッコイイ!」と声をあげてしまいそうな眉目秀麗な同級生・笠井総司(かさい・そうし)です。
転入の挨拶のときに、妙に笠井から「見られてる…」と感じた辻は、柔道部主将の余裕で笠井の視線をやりすごしますが、放課後、練習に道場で励む辻の前に姿を現したのが、昼間ガンをつけ続けてきた笠井本人だったのでした。
笠井は、辻と柔道の一本勝負を申し込んできたのです。
「笠井! 丁度いい所に来た…。ずっと人のことネチネチ睨みやがって…。望むところだ!」
ずっと笠井の視線が気になっていた辻は、もちろん自分が負けるとは思っていませんから、勝負の申し入れを受け入れます。
ま、インターハイ優勝の自分にガンをつけるとは何様だ! とずっとムカムカしていたんでしょうね(笑)。
ところがですよ…。
笠井はとんでもない条件を付けてきたのです。
「じゃあ、俺が勝ったらお前を頂く。俺の恋人になれ」
「な、なんだよお前…ホモなの?」
「そういうわけじゃないが、お前に興味が湧いた。勝てる自信がないのか?」
「! はっ、面白いこと言うな。先に言っとくけど、俺、インハイ優勝者だぜ? ――何でもやってやるよ!」
だがしかし…!!!
勝ったのは笠井でした。
それもあっという間。
なすすべなく畳の上に転がされた辻の上に覆いかぶさるように押さえつけてきた笠井は、息一つ乱していません。
「はい…一本だね」
「!」
「約束通り抱かせてもらうよ」
というか、笠井に押さえつけられた体は、びくともしないのです。
じたばた暴れる辻に、笠井は笑いながら言います。
「なんだ…怖いのか? …童貞くん?」
さあ、インハイ優勝のプライドもずたずた、そして男としての自信、貞操もずたずたにされてしまった辻は、笠井の手でどうされてしまうのか!!!!
というところで、さあ、こちらも続きが超気になるでしょう~(笑)、ぜひコミックスでご覧になってくださいませ!
ほんの数分前までは、自分こそが一番強いと思っていた男の子が、圧倒的な力を持つライバルの手で組み伏せられ、体を自由にされちゃうばかりか、まるで女の子みたいに喘がされちゃうというここからの展開は、えー、本気の本気で萌えまくります(笑)。
そして、次の日からも当然ながら“恋人同士”にさせられちゃった辻ですが、笠井のことなんか大嫌いなはずなのに、ふとした瞬間に守られたり大事にされたりすると、つい嬉しくて笠井相手に「ゾクッ」としたりしちゃうんです。
そんな“彼女モード”になっちゃった自分がわからなくて混乱しちゃう辻は、いやもう真っ赤っかで可愛すぎ。
あげくのはてには、笠井が自分以外の女の子とも付き合ってると誤解しちゃって、泣きそうになっちゃう辻とか、自分が一番だったはずなのにメロメロにされちゃう王様像、つまりは“優等生受け”を読む楽しみが、この中にはパンパンに詰まっています!
いやー、ラブい(笑)。
これ、本当にオススメの一作ですよ。
あー、あとですね、あんまり記事が長くなって申し訳ないんですが、『恋の種』というマンガもオススメです。
これは、平凡っ子受けBLに分類される作品ですが、この手の“平凡受け”BLはですね、ストーリーのキモはこんな点にあるとブログ主は思うわけです。
つまりは、ごくごく普通の男の子が、いかにして学校のスーパースターとかに“選ばれちゃう”のか、その理由付けこそが重要であると。
全然目立たない男の子なのに、カッコいいアイドルに好かれちゃって…というのが“平凡受け”BLを読む醍醐味なわけで、それには、なぜそんなにも平々凡々な子が選ばれてしまったのかという部分をきっちり書いてくれないと、読者はストーリーに没頭できませんからね!
その点、本作はそこの部分の処理が素晴らしくうまくいってます。
主人公(受)は、本当にどうということもない男子高校生なんです。
特筆すべきところといったら、見かけによらず気が強いところぐらいかなぁ。
そんな主人公(受)が、なぜか演劇部の人気抜群の先輩にまとわりつかれちゃうというのが基本のお話しです。。
演技がうまくて、実力派の演劇部員として学校の内外で人気のあるその先輩のことは、なんだか見た目も話し方も怖そうなのでちょっと敬遠していた主人公(受)。
でも、ひょんなことから怒らせてしまい、怖いんでさっさと謝って逃げようとしたら、真剣な顔で抱きしめられて「俺と付き合え」なんて囁かれちゃうという。
ええー、何の接点もなかったのにどうして!!?? というのが読みどころになってます。
なぜ主人公(受)のことを、先輩が好きになったのか、その謎は本作のストーリーの一番のキモになってますので、これはご自分でコミックスにてお確かめください~。
あうー、あとは表題作の『エロティック エゴイスト』も少しだけ…。
これも面白いです。
大企業に勤める幼馴染み2人が主人公カップルですが、片や高卒で入社して現場仕事をやっている頑固な男の子(受)。
片や、大卒で本社に入って現場を監督する部署にいるという設定です。←こっちが攻めキャラ
この2人、じつはすでに恋人同士なんですが、同じ会社とはいえ、敵対しがちな現場と管理部門に別れていて、いろいろすれ違いもあってちょっとした危機を迎えてしまいます。
受けキャラの職人くんは、頑固でぶっきらぼうで口数も少なくて…というタイプ。
そんな受けキャラの様子に、攻めキャラは「俺のこともう嫌いになったの!?」なんてアワアワしちゃいますが、じつは…というお話しです。
受けキャラ可愛いです(笑)。
頑固で寡黙な男の子が、最後に甘えっぷり全開になっちゃって。
というわけで、すいません、えらく長い記事になってしまいましたが、本書はとってもオススメです。
まっっっったく“優等生受け”と真逆な顎ヒゲオッサン受けなマンガも入ってたりしますが、そこはまあご愛敬(笑)。
ぜひぜひ読んでみていただきたいなぁと思います!!!
- 関連記事
-
- [レビュー]地味で真面目、どんなことでもニコッと微笑みながら受け入れちゃいそうな優等生クンが、最悪最低男と出会って… 上田規代『嘘つきは恋をする』
- [レビュー]恋人も友達もいない人生を送ってきたインテリ教授の前に、太陽のような学生が…インテリがメロメロに! いさか十五郎『クールな姫に恋して』
- [レビュー]“ニューウェーブBL”の旗手がかっ飛ばした「王道」作品集! 性格破綻者たちが山盛りです(笑) 恋煩シビト『愛のポルターガイスト』