ネクラで眼鏡でキモオタな優等生は“受け”るとイイよ!

委員長、地味な真面目くん、オタク少年…そんな“優等生受け”BLが大好きな腐男子のブログです~。

 

[レビュー]なんと続編まで出てたとは…! ツンデレ優等生の凄いシーンが満載な超名作 神奈木智『NEWSなオレたち』


Category: レビュー 小説単行本   Tags: 受け-眼鏡  受け-真面目・カタブツ  受け-生徒会長・委員長  特徴-高校生  ●カ行-神奈木智  
NEWSなオレたち (ダリアノベルズ)NEWSなオレたち (ダリアノベルズ)
(2000/10)
神奈木 智

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 こんなにスゴイ本だとは全然思ってませんでした!
 次に“珠玉の一冊”でどの本を取り上げようかな~と思って、ふと思い出したこの本を本棚から取り出したのですが…。
 読み直してビックリ。
 レビューを書くため、100円ショップで買った付箋紙を、胸キュンポイントに貼り付けながら読み進めていったら、あまりに貼りすぎて、なんと付箋がなくなりそうになってしまいました(笑)。

 いやー見くびってました、この本!

 なんでかわからないけど、もっとつまらない記憶があったんです。
 “優等生受け”的な意味で。
 なんたる記憶違い!
 これ、俺の読んだ“優等生受け”BEST10に間違いなく入ってくる一冊じゃん…。
 あー、損した!
 ずっと読み返してないで損した!
 しかもこの点に関しては、後でさらに恐ろしい事実が発覚するのですよ…。
 悔やんでも悔やみきれない!

 とにもかくにも、00年にダリアノベルスから発売された神奈木智先生の名作“優等生受け”小説、『NEWSなオレたち』をたっぷりとご紹介いたしましょう!

 本作は、ほどよいミステリー仕立てになってます。
 あくまでBLとしてのラブストーリーがメインなんですが、それに緊張感をうまく盛り上げてくれる“謎解き”がくっついているというわけです。
 主人公(攻)の棚橋夏(たなはし・なつ)は、名門・宝祥学園に転校してきた高校生。
 抜群のルックスと明るい性格、そして時々見せる17歳とは思えない大人っぽさを武器に、女の子と遊びまくってきた女たらしです。
 夏は、女性とは行きずりの関係しか結びません。
 方々の街で、その街にいる間だけ女の子を夢中にさせては、用が済むと女の子との関係も綺麗に清算して街を去っていきます。
 高校生が「方々の街で」とはいったい――。
 じつは、夏は全国の高校の生徒会から依頼を受けてトラブル処理に動く「なんでも屋」として、各地の学校を転々としては依頼を解決し、高額の報酬を受け取る生活をずっと続けているのでした。

 宝祥学園に転校してきたのも、生徒会から依頼を受けたからです。
 同校では、昨年から女子生徒が突然退学し、住んでいた街からも姿を消してしまうという出来事が続発し、すでに数人の女生徒が学園を去っていました。
 一般生徒たちは激しく動揺し、困り果てた生徒会が秘密のルートを通じて夏に解決を依頼してきたというわけなのです。

 学園に潜り込むため、転入試験を受けることになった夏は、学校に向かう途中、重い荷物を持ったおばあさんを一人の生徒が手助けする光景を目にします。
 きっちり制服を着こんだ彼を見た夏は、驚きました。
 自分が理想とする完璧な美形が服を着て歩いているような高校生がそこにいたからです。

 その1時間後。
 転入試験の監督官として教室に入ってきたのが、その彼でした。
 偶然を喜んだ夏は、軽い感じを装って、試しに声を掛けてみます。
 といっても、別にあっという間に一目惚れしたわけではなく、あまりに好みの顔なので、ちょっとからかってみようかぐらいの行動です。

「あの、質問があるんだけど」

「何か?」

「名前、なんていうの?」

「は?」

「だから、名前だって。そっちは、俺の名前を知ってるわけだし。だったら、君も名乗らなきゃ不公平だと思わない? そうだ、ついでに学年をクラスも…」

「俺の名前が、この試験と何か重要な関係でも?」


 ところが、とりつく島もない態度で、そんなヒマがあったら、さっさと問題を解けとばかりに眉間にシワを寄せて怒る彼に、夏は空欄をすべて埋めてある答案用紙をひらひらと見せます。
 そう、夏は17歳にして「なんでも屋」稼業をやっているだけあって、頭のデキもピカイチです。
 高校の転入試験くらいは朝飯前。
 試験官の彼も驚きます。

「次の英語は、10分あれば楽勝だよ」

 試しに挑発的な口をきいてみたら、相手がムッとするのがわかった。どんなに澄ました顔をしていても、中身はかなりの負けず嫌いらしい。夏は内心ほくそ笑みながら、もう一度「なぁ?」と声をかけてみた。

「俺が残りの科目を全部10分で解いてみせたら、名前を教えてくれるってのはどう?」

「何をバカなことを…」

「なんでさ? 単なる取引だよ。英語と現国、あと二科目だけだし」

「…そこまでムキになられると、逆に教えたくなくなるな」

 案の定、彼は偉そうに腕を組むと、冷ややかな眼差しで夏を見下ろしてくる。

 結局、全教科で95点以上を取れば…という条件で、夏は試験官の彼に「名前を教えること」を認めさせます。
 このあたりのいかにもカタブツっぽい彼と夏とのやりとりは、まるでフランス料理のフルコースの食前酒のように、“優等生スキー”の我々の食欲を、いやが上にも盛り上げてくれますねぇ(笑)。

 で、この試験官の彼こそ、本作の受けキャラ優等生・藤原冬耶(ふじわら・とうや)です。
 宝祥学園の風紀委員長である冬耶は、校内で敬遠される存在です。

「教師より、よっぽど厳しいんだ。綺麗な顔してるからってナメてかかると、相当痛い目に遭うから気をつけたほうがいいぜ。怒らせると、マジおっかないからな」

 一般生徒からは、こんな風に見られているのが冬耶ですが、じつはそれだけではありません。
 冬耶には、学校中の人間が知らぬ者のない噂があったのです。
 それは、かつて気にくわない上級生を、幼いころから習っている合気道の技で痛めつけ、足の骨を折る重傷を負わせたのが冬耶だという噂です。
 規則規則で、いざというときには血も涙もなく仲間を痛めつける冷血人間が藤原冬耶だ――学校中の生徒がそう思い、冬耶のことを敬遠して生活していたのでした。
 そして実際に、冬耶はその噂を実証してでもいるかのごとく、友達もごくわずかしか作らず、校内で規則違反の生徒を見つけては厳しくチェックする日々を送っていたのでした。

 さて、夏の試験結果はといえば――。

 宣言通りに転入試験で全教科95点以上、いやなんと満点を取ってしまった夏が、冬耶に報告に行こうと校舎を歩いていると、当の冬耶が上級生に迫られている場面を見てしまいます。

「頼むから、その手を離してもらえませんか。俺には、本当にそういう趣味はないから」

「待てよ、藤原っ! そういう態度でいいと思ってんのかっ?」

「…そういう態度って? いくらあなたが先輩でも、聞ける望みとそうでないのとがある。悪いけど、この話はこれでおしまいだ」

「勝手に決めるなよ!」

「そろそろみんなが登校してくる時間です。さぁ、離してください」

「離してほしかったら、もう少し俺の言うことを聞けって言ってるだろ。どうして、そんなに拒むんだよ。そんなに、俺が嫌いなのか?」

「嫌いというか…」

「え?」

「少なくとも、好意は持っていません」

 おいおい…と夏がため息をついた瞬間、相手もカッと頭に血が上ったようだ。掴んでいた手首を乱暴に捻ると、そのまま彼の細い身体を無理矢理抱きしめようとした。

(おい、マジかよっ)

 反射的に身体が動き、夏は思わず前へ飛び出していく。だが、一瞬早く彼が身を翻し、上級生の腕からあっという間に逃れてしまった。同時に捕まれていた手首が自由になり、反対に先方の右手首を強く捻りあげる。短い叫びを上げて苦悶の表情を見せる相手を、彼は眉一つ動かさず冷静に見つめていた。

 いやー、本作はどの場面も好きすぎて、どこもかしこも引用してしまうんですが、ここの場面は、冬耶の強さと凛々しさ、でも「細い身体」と書かれているところをご紹介したくて(笑)、長々と引用しました!
 冬耶は、見たまんま“風紀委員長”という感じの外見なんですよ。
 眼鏡に黒髪、高すぎず低すぎない身長に、いかにも文系な細い身体という。
 でも、かつて上級生をボコボコにしたという噂が流れているとおり、祖父の教えで幼いころから合気道の修練をつんでもいます。
 寄らば斬るぞ…とでもいうような怜悧な美貌を持った冬耶というキャラクターを理解していただけましたでしょうか。

 今の場面、冬耶のことを助け損ねた(?)夏でしたが、宣言通りに満点をとった夏のことを、冬耶は少し見直した様子。
 そして始まった学校生活で、ある日、夏は冬耶から屋上に呼び出されます。
 そこで冬耶が明かしたのは、例の上級生に大怪我をさせたという“噂”の真相でした。
 じつは、その上級生も、冬耶に「付き合ってほしい」と言いつのり、無体なことを仕掛けてきたというのです。
 数人がかりで襲いかかられた冬耶は、やむなく彼らを返り討ちにしたにもかかわらず、負けた彼らは冬耶を手籠めにしようとして逆襲されたなどという恥ずかしい事実を知られたくなかったのでしょう。
 理由もなく冬耶に暴行され、足の骨を折る大怪我をしたと言いふらし、周囲もそれを信じているというのでした。
 冬耶は、他の生徒から自分についての噂を夏が耳にする前に、本当のことを聞いておいてほしかったというのです。

「なぁ、冬耶。おまえ、なんで俺に全部打ち明けてくれたんだ?」

 夏はゆっくりと指を伸ばして、冬耶の肩先を優しく叩く。

「俺は誰にもいわないし、今後口にすることもない。冬耶が自分から過去の話をしてくれたのも、マジですげえ嬉しかった。言わないで済ませる方法もいくらだってあったのに、おまえはそうしなかった。真っ正面から嫌な話をしてくれて、少しもごまかそうとしなかった。そういうおまえが俺は大好きだよ」

「な…何、言ってるんだ」

 夏の言葉に困惑し、冬耶は微かに身じろぎする。だが、邪険に振り払われるはずの指先は、静かにその方に留まったままだった。
 片手分に満たないほどの逢瀬しか重ねていないが、夏は冬耶をよく知っている。彼は優しい言葉をかけられたり、柔らかないたわりの手を差しのべられた経験がほとんどないのだ。
 そんな彼を、夏はとても愛しいと思う。触れた指先からこの想いが、冬耶の身体へ温かく流れ込んでいけばいいのにと本気で願う。そうしたら、少しは彼との距離も縮まるかもしれない。

 転入試験でのファーストコンタクトを経て、こうしてだんだんと距離が縮まっているかのように見える2人ですが、そこはそれ、冬耶がカタブツだけあって、ここで引用した文章からみなさんが感じるほどには、じつはまだ2人は親しくなっていません。
 でも、夏に自分のことを話しておかないではいられなかった冬耶と、そんな冬耶の不器用さが可愛くてしょうがない夏。
 このあたりから、グングンと2人のラブストーリーが加速していくのですよー。
 といっても、まだお互いに恋心をはっきり自覚しているわけじゃないのが、もどかしいところでもあるんですが…。
 まあ、このあたりは8年前のBLらしく展開はゆっくりしてます(笑)。

 で、ですよ。

 ここまで長々と2人の出会いと、何だか互いに心を惹かれあって、冬耶が秘密を打ち明けてしまった場面などもご紹介したわけですが、本作の読みどころはここからなんです。
 出会いの場面からしてそうでしたが、冬耶は夏に対して、ずーっとツンツンしてるわけですよ。
 先ほどの場面は、それがちょこっと縮まったかなというシーンなわけですが、じつはその直後にもこんな場面があります。

 夏は一段くだけた口調で尋ねてみる。

「俺にあんな話を打ち明けてくれたってことは、俺の立場も昇格したって意味だよな?」

 夏の問いかけに返事はなかったが、長い沈黙が十分な肯定を示している。夏は満足そうに頷くと、再び冬耶へ向かって口を開いた。

「じゃあ、今日から俺たちは友人だな。もう、単なる顔見知りじゃないだろ」

「“知人”だ」

 一方的な決めつけが面白くないのか、冬耶は冷たく訂正をした。

「友情を感じるほど、棚橋のことをよく知らない。だから、まだ俺たちは知人だ」

「強情だなぁ」

「そういう問題じゃない。事実を言っただけだ」

「わかった。じゃあ、知人だ。それでいいよ。どうせ、名前なんかどんどん変わっていくんだ」

 あんな打ち明け話までして、ぐっと親密の度を増したばかりなのに、この冷たさ(笑)。
 しかも、夏はこれで冬耶と親しくなったつもりでしたが、次の日からも、冬耶の態度は変わらず、廊下ですれ違っても声もかけてきません。
 夏のクラスには、「なんでも屋」としての彼に仕事を依頼してきた生徒会長の慎吾がいます。
 じつは、この慎吾だけが冬耶の唯一の“友人”と言われている男でした。
 明るくて、誰にでも好かれるタイプの慎吾は、夏ともすっかり打ち解けて、昼飯を一緒に食う仲にもなっていますが、冬耶は一日一度、夏と同じクラスの慎吾のところには話をしにくるのに、その時、近くに座っている夏には何も言わずに去っていくのです。

 はい!
 はーい!(笑)

 勘のいい方は気付いたんじゃないですか!(笑)
 さあ、さあ、さあ、ここから以後、大変な冬耶のツンデレ場面ラッシュが始まるのですよ!
 夏に冷たい態度をとり続けてきた冬耶が、初めて心を開いて打ち明け話をしたのが、先ほどの屋上での場面でした。
 そこで、夏は冬耶とぐっと親密になったと思ったわけですが、現実には冬耶は冷たいままだったと。

 ところが!

 毎日、自分のところに来ては無駄話をして帰って行くだけの冬耶の後ろ姿を見て、生徒会長・慎吾は夏に向けて首をひねるのです。

 席に着いた慎吾は、夏を見るなり思い切り不可解な顔をして見せた。

「どうした、慎吾、何かあったのか?」

「いや…。藤原がさ、なぁんか変なんだよな」

「変? 変って何が?」

「う~ん…」

 慎吾は独り言めいたつぶやきを漏らした。

「だってさ…藤原の奴、無理矢理用事を作って俺のとこ来てる感じなんだよ。でも、そんな人なつこいキャラじゃないんだけどなぁ…。なぁんか、前と違うんだよなぁ」

「……」

「もしかして、悩みでもあるのかなぁ」

 そういいながら、慎吾は一人で首をひねりつづけている
 夏は、まるで宝探しのヒントでも見つけたような顔で、目をキラキラと輝かせていた。

 わはははー!
 そうなのです!
 冬耶は、夏に会いたいけど、素直に夏のところに遊びにくるなんて芸当は死んでもできません。
 学校で唯一親しい慎吾が夏と同じクラスなのをいいことに、今まではそんなことをやってもいなかったのですが、一日一度、無理矢理用事を作っては、夏と慎吾のクラスへ姿を見せていたのです。
 なのに、夏には一言もかけないで帰っていくという、このツンデレ!
 うひゃー(恥)。
 ピュアすぎて、読んでるこっちが恥ずかしくなっちゃう!!
 冷たい仮面の優等生が可愛いすぎ!!!

 いやー、本記事の最初で書いたとおり、じつに本書が我が人生BEST10にも入る素晴らしい“優等生受け”BLだと言い切れる理由が、まさにここにあります。
 美貌で冷たくて校内でも嫌われている風紀委員長サマが、夏という男と出会い、その光に照らされるかのように心を溶かし、ツンツンからツンデレに徐々に状態を変化させていくこの描写が本当に素晴らしすぎるのですよ!
 付箋紙が何枚あっても足りなかったわけだ!
 ここから、文字通り怒濤の名場面ラッシュになるのです、本書は。
 ツンツンしてる優等生が、ポロッと見せる可愛い顔…。
 もうここからは、そんな胸キュン場面が連発で、ハッキリ言って悶え死ねます(笑)。
 この萌え場面の多さ、密度、バリエーション、どれを取っても天下一品だとブログ主は断言しますよ!

 このすぐ後にも、明るくて可愛い慎吾のことを、夏がこんな風に評することから始まる胸キュンシーンがあります。

「あいつ可愛いじゃん。素直で。だから、つい構いたくなるんだよな」

 冬耶は、サッと表情を強ばらせた。

「あの…冬耶…?」

「なんだ?」

「いや…なんでもない…」

 多分、冬耶自身も自分の表情に自覚がないのだろう。それなのに、あえてその真意に触れるのは、いくら傍若無人な夏でもできなかった。夏は言葉の代わりに床に手をつき、そっと顔を冬耶へ近づける。思った通り、冬耶は戸惑いに溢れた瞳でこちらを静かに見返してきた。

 うーむ。
 どうですか、他の男のことを「可愛い」と言われて、冷たい優等生が自分でも気付かぬ間に表情を強ばらせてしまうというこのシーン。
 可愛くないですか(笑)。
 そして、傷ついたような表情に魅入られた夏は、そのまま冬耶に顔を近づけるとこんなことを囁いてしまうのでした。

「普通さ…」

「え?」

「これくらい接近してたら、キスされるかな…とか思わない?」

 言うが早いか冬耶の右拳が振り下ろされ、夏の頭で鈍い音をたてた。苦痛にあえぐ夏はすぐには口が開けない。冬耶の非情な足音が去っていくのを、空しく聞いているのだった。

 キスを迫られていることも気づかず、そう言われて初めて赤面し、夏のことをブッ叩いちゃう優等生クン(笑)。
 さらに萌えるのは、この場面が伏線となって、次なる萌え萌えシーンに続くことです。
 翌日、冬耶は慎吾と昼飯を食べることになり、会話をするうちに、いつしか話題は夏のことになっていきます。

「あいつがどれだけ頭脳明晰なのか知らないが、今までの言動を思い出してみろ。人を食ったような口を聞いたり、気の抜けた笑顔で懐柔しにかかったり。挙げ句に人の手を取って握りしめるわ、キスがどうだのとふざけたことをぬかすわ…」

「…藤原」

「え?」

「おまえ、そんなこと…夏にされてんのか?」

「あ……っ」

 反射的に身体を引き、パッと冬耶は顔を赤く染める。柄にもなく興奮したせいで、うっかり余計なことまで口走ってしまった。しかし、一度言葉にしてしまったものは取り返しがつかない。真っ直ぐこちらを見つめる慎吾を直視できず、冬耶は気まずく視線を床へ落としてしまった。

「藤原…」

 これには、慎吾も掛け値無しに驚いた。未だかつて、この綺麗で頑固な幼なじみが他人から目を逸らしたことがあっただろうか。感情の赴くままに言葉を吐き出し、慎吾に突っこまれて赤くなる冬耶なんて、いったいどこの誰が想像できただろう。

 むふふふふ。
 夏のことが話題になった途端、興奮していらないことまで喋ってしまい、慌てて赤くなる風紀委員長サマですよ…。
 この場面、桜城やや先生のイラストがまたいいんだー。

 で、少し飛ばして、今度は冬耶が放課後の教室で、女子生徒と親しそうに話している夏を見てしまうシーン。
 まずこの状況設定だけで、ブログ主なんかヨダレものなんですが(笑)、ここはストーリー全体から見ても、とっても大事な山場の一つになってます。
 教室で話す夏と女子生徒に向かい、『風紀』の腕章をしながら「もう時間だから下校してください」などと命じる冬耶。
 慌てて図書室から去る女子生徒の後ろ姿を見ながら、夏はちょっと冬耶に意地悪してやろうと思い、こんなことを言うのです。

「なんでわざわざ腕章まで付けて、なんで俺の邪魔なんかするわけ? なぁ、答えろよ、冬耶?」

「邪魔って…邪魔って、どういう意味だ」

「そんなの、見てたらわかるだろ? おまえが来なければ彼女といい雰囲気になってたところだったのに」

「そ、そうか…。それは…悪かった…」

「え…」

 予想に反したしおらしい反応に、それまでいい気分だった夏は一瞬言葉に詰まってしまう。てっきりいつもの調子で怒られるか説教されるかと思っていたのに、なぜだか今日の冬耶には覇気がないのだ。少し心配になった夏は、今度は柔らかな声音でそっと名前を呼んでみた。

「冬耶…?」

「いや、本当に…悪かったな。俺は、別に棚橋の恋路を邪魔するつもりはなかったんだ。ただ、これは俺の仕事だし、下校時刻が過ぎているのも事実だから…」

「わかったって。ていうか、あんなの冗談だよ。なんだよ、いつもならガミガミ怒るくせに」

 もちろん、冬耶に元気がないのは、夏が女とイチャイチャしてるところを見てしまったからですよ!
 胸きゅーん!(笑)
 夏は、軽い気持ちで「邪魔しやがって」なんて言ったことを早くも後悔しちゃうんです。
 あまりに冬耶が元気ないので。

 ところが。

 夏が、「あの女の子より、冬耶のほうが俺には大事だよ」と言ってあげると、事態は一変しちゃうのです~。

 冬耶は先刻と同じく数回パチパチと瞬きをする。不思議なことに、段々と瞳の色が明るくなっていくのが、夏にはわかった。目に見えて変わっていく表情に、見ていた夏も思わず引き込まれていってしまう。自分の発した言葉の一つ一つが、冬耶へさまざまな影響を与えているのを、彼は自分の目で実感した。

「もし妬いてるんなら、素直にそう言ってくれよなぁ」

 ため息交じりの言葉と一緒に、夏は目の前の冬耶を抱きしめる。きつく力を込め、右の首筋に温かな吐息を感じながら、彼は思いのほか細いその身体を切なく両腕に閉じこめた。
 激しい拒否が待っているはずだったのに、意外にも腕の中の冬耶はおとなしい。密やかなため息が夏の肩に降り積もり、二人は言葉もなくしばらくそうして佇んでいた。

「…驚かないのかよ?」

 なんだか拍子抜けする思いで、夏は小さく尋ねてみる。冬耶は控えめに吐息をつくと、「これでも、充分びっくりしてる」とやけに無愛想な声で返事をした。

「だけど、おまえに言われたセリフがショックで、身体が動かないんだ。畜生」

「え…妬いてるってヤツ? やっぱ、図星だからだろう?」

「そんなの、わかるもんか…」

 はうー。
 ホントに胸キュンだよー。
 さあ、そして2人が初めてキスをしてしまう場面が次です。
 この段階まで来ると、夏は明確に冬耶のことを恋人にしたいと自覚してますし、冬耶は冬耶で夏のことを考えると苦しくてたまりません。
 夜、家で勉強していても、夏のことを考えると手につかないほどです。
 そんな2人が、放課後の図書室で鉢合わせする場面です――って、じつは夏が冬耶のことを待ち伏せしていたんですけど。

「ん? どうした冬耶? 俺に会えて絶句するほど嬉しい?」

「棚橋…」

 目の前にいるのが紛れもない夏本人だとわかっても、冬耶はなかなかそれを事実として受け入れられない。しかし、それも無理はなかった。教室や廊下で会うならまだしも、ここは校内でもっとも生徒に忘れられている場所だ。それなのに、夏ときたらまるで常連のような顔をして、図書委員でもないのに堂々とカウンターに陣取っている。しかも、その態度は冬耶がやってくることなどとっくに予測済みだと言わんばかりだ。いきなり隠れ家を発見されたような気持ちになり、冬耶は普段の落ち着きを完全に失っていた。

「おまえ…一体こんなところで何をしてるんだ」

 ようやく話しかける余裕を取り戻し、カウンターに近づいた冬耶は夏を問い詰める。転校生の彼が図書委員になれるはずもないし、偶然で片付けるにしてはあまりにも作為的だ。案の定、夏はあっさりと「冬耶を待ってたんだよ」と認め、「でも、おまえも嬉しいでしょ?」などと図々しく同意を求めてきた。

「クラスの図書委員に代わってもらったんだ。邪魔が入らないように、鍵も預かってきたしな」

「鍵? そんな必要がどこに…」

「決まってるじゃないか。冬耶と二人きりになるためだよ」

 赤面もののセリフを平然と口にし、子供のように目を輝かせた夏は古びたカウンターに両肘をつく。尖った顎を手のひらで支え、困惑を隠せない冬耶を彼はニコニコと上機嫌で見つめていた。

「…なぁ、冬耶」

「な…なんだ?」

 次は何を言い出すのかと、冬耶は警戒心でいっぱいだ。けれど、そんな険しい表情さえ夏には心地よく映ってしまう。冬耶が冬耶である限り、もうそれで充分なのだ。冷たく自分を一瞥した面差しですが、綺麗だと見とれたくらいなのだから。

「今度、デートしよっか。俺たち、学校でしか話したことないじゃん?」

「何、寝ぼけたこと言ってるんだ。デートっていうのは…」

「好きあってるヤツらが、仲良くどっかに出かけることだろ。大丈夫。俺たちクリアしてるし」

「いつ、俺がおまえを好きだって言ったんだっ!」

 さあ、冬耶のツンツンも全開ですよ(笑)。
 「デートなんてとんでもない!」と怒る冬耶は、漆黒の鋭い瞳を夏に向けて、その目線はまるで狙いに的を絞る弓のような鋭さです。
 そんな冬耶の美しさを見て、夏はこんな思いにふけるのでした。

 こいつが欲しい、と強く夏は思う。
 あの強情な唇から、切なく名前を呼ばせてみたい。
 そう思った瞬間、夏の指は素早く冬耶のうなじへ伸ばされていた。

「おい…!」

 不意を突かれてうろたえた冬耶が、短く非難めいた声を出す。だが、それ以上無粋な言葉が出てこないうちに力づくで彼を引きよせると、夏はその唇に深く自分の唇を重ね合わせた。
 冷たい視線とは対照的に、甘く柔らかな感触がたちまち夏をうっとりさせる。それは、これまで彼が味わったどんな美女との口づけよりも、大きく胸の震えた一瞬だった。要領のいい夏はわずかな隙を見つけて素早く舌を潜り込ませ、強引に冬耶の舌に絡ませる。思いがけない展開に冬耶の喉が苦しげに隆起し、反射的に口づけを逃れようとした。
 だが、それを場慣れた夏が容易に許すわけがない。彼は触れる指へ更に力を込め、前よりもしっかりと唇を捉えてしまう。角度を変えて何度も深く口づけられ、いつしか冬耶の身体から抵抗の兆しが少しずつ弱くなっていった。

「う…んん……」

 時折漏れる冬耶の声が、静まりかえった室内に余韻を残して散っていく。それでも、夏の舌は巧みな動きで彼を煽り、なかなか解放しようとはしなかった。口腔内を優しく舐めつくし、尖らせた舌先で愛撫を繰り返す彼は、そのままなし崩しに冬耶から理性を奪おうとする。瞳を閉じていても、冬耶のまつ毛が震えるさまを夏は肌に感じ、その気配に一層愛しい行為を駆り立てられた。

「冬耶…」

「離…せ…」

 長い口づけは平衡感覚を失わせる。わずかに唇が離れた瞬間、冬耶はなけなしの力を振り絞って夏の腕から逃れようとしたが、大きくバランスを崩して床に座り込んでしまった。

 キスされて放心状態の委員長サマ…。
 か、可愛すぎるぅ(笑)。
 で、ですよ!
 今の場面、結局最後まで冬耶はツンツンのままのキス場面だったわけですが、じゃあデレはどこに行ったかというと、これが伏線になって、翌日の場面で登場するのです!
 翌日、顔を合わせた2人はこんな会話を交わします。

「いや、成長したなぁと思って…」

「は?」

「今までの感じからいくと、冬耶は絶対に俺を避けると思ったんだ。だけど、こうして普通に話しかけてくれたし、なんだか俺たち仲がいいみたいじゃないか?」

「調子に乗るな」

 窓をピシャリと閉めるように、冬耶は冷たく言い放つ。

「俺が普通に声をかけたのは、昨日のことなんか全然気にしてないからだ。あんなの大した出来事でもないし、おまえのノリでいけば軽い悪ふざけみたいなものだろう? そんなのを真に受けて、いちいち騒いでいられるか」

「悪ふざけ…」

「迷惑だから、二度とご免だけどな。一応、一回だけなら広い心で許してやる」

 口調はいつもと変わらずに偉そうだが、なんだかどこかに違和感がある。
 ふと冬耶の指に目を留めた夏は、そのまま深く胸を衝かれた。
 冬耶の指先が、微かに震えている。表面では堂々と強気な顔を見せているのに、彼の内側は緊張で爆発しそうなのだ。それを知った夏は切なさにひどく胸が痛み、表情を変えずにいることへ多大な努力を払わねばならなかった。
 冬耶が好きだ、と夏はしみじみと思う。

 いやー、この場面も萌えますねぇ…。
 まさに“優等生受け”の醍醐味みたいなシーンですなー。
 で、さっきからツンデレツンデレと連呼してきたわけですが、本作には優等生が可愛い顔を見せちゃってくれるそんなシーンが満載です。
 でも、本書が出た00年当時、まだ「ツンデレ」なんて言葉は世にありませんでした。
 あとがきで神奈木智先生ご自身が書かれていることでもあるのですが、こういうしっかり者だけど不器用な受けというのは、もっともお好きな受けキャラのタイプでいらっしゃるそうです。
 最近のBLでも、ツンデレっぽいキャラは大流行で、毎月出る雑誌をチェックすれば、いくらでもそんなキャラクターを見ることはできますが、当時、ここまで冷たい優等生を主人公にして、デレの部分もしっかりと書いてくれたBLは他にありませんでした。
 冷たい主人公ってのは多かったですけど、みんなデレをちょこっとしか書いてくれないわけですよ。
 それが本作では、デレ山盛り!
 しかもツンツンも強調されてるだけあって、まさに素晴らしいツンデレが誕生しているわけです。
 そんなツンデレという言葉すらない時代に、無から生み出された本物のツンデレだけあって、最近の「よーし、今回はツンデレで行こう!」という、形式ありき、言葉ありきで生み出されるツンデレBLと違い、本作のツンデレ冬耶は、天然ものの迫力に充ち満ちています(笑)。
 やっぱり作家さんがやむにやまれぬ欲求にかられて、身体から絞り出すように書き上げた“萌え”は最強なわけですよ。
 まだこの後、冬耶のデレ場面は山盛りで出てきますが、それが回数を重ねるごとに、微妙に2人の距離が縮まっていくのが読者にはよくわかります。
 このままラストまで一直線に読者は引っ張られていってしまいます。

 で、もちろん夏と冬耶はこの後めでたしめでたしに落ち着くわけですが、その素晴らしく読者をハッピーにさせてくれるクライマックスシーンは、ぜひご自分で本書を買って確かめてみていただきたいと思います。
 もちろん、例の“謎”もしっかりと解決し、夏は宝祥学園を去っていくわけですが、その時冬耶は…! というのが最後の場面になってます。

 で、じつは本書にはちゃんとした(?)エッチ場面はありません。
 途中、2人がいじりっこ(笑)までやる場面、昔風に言えば「B」までやっちゃうシーンは出てきますが、「C」までやっちゃうエッチシーンは登場しないのです――って、今の若い人は、「A」とか「B」とか「C」とか使うのでしょうか…。
 なぜ「C」な場面が登場しないかは後でご説明するとして、その「B」までのエッチ場面で、ブログ主が“優等生受け”的に超感激したところを、ほんの数行だけご紹介いたしましょう。

 減らず口をたたきつつ、夏は軽く唇を合わせてくる。ついばむようなキスがくすぐったくて、流れるピアノの音色に冬耶の笑い声が絡まった。やがて夏の手は腰から離れると、冬耶の詰め襟のボタンに指をかける。一つずつ外されていく間、彼らは飽きずに何度もキスを繰り返した。

「予想にたがわず、しっかり着こんでるよなぁ」

 ようやく詰め襟を脱がせても、今度は第一ボタンまできっちり閉めた白いシャツが登場する。それがいかにも冬耶らしくて、夏は笑いながら服を脱がし続けた。

 はい、ココです!(笑)
 ブログ主も数限りなく“優等生受け”のエッチ場面を読み込んできたつもりですが、服を脱がすシーンで、受けキャラがシャツのボタンをきっちり一番上まで閉めていることで「こいつは優等生なんだなぁ」と攻めキャラが再実感するなんていう素晴らしいシーンは、これ以外で読んだことがありません!
 感涙!
 こういうささいな描写がたまらないのですなー。
 なかなか“優等生受け”のこういう神髄をわかっている作家さんはいそうでいないのですよ。
 どうです、この部分だけ読んでも、このあとのいじりっこ場面が読みたくてたまらないでしょー?(笑)

 で、ですよ。
 最初に書いたとおり、ブログ主はこの本の素晴らしさを、じつはずっと忘れてました。
 今回、あらためて読み返して衝撃を受けた次第です。
 で、さらに恐るべき事実が判明したのですが…。

 なんと本作には続編が出ているのですっ!

 02年に同じダリアノベルスから出た『ナイショなオレたち』がそれ。
 ……全然知らなかった………。
 いや、『NEWSなオレたち』は、H場面もいじりっこで終わっちゃってちょっと中途半端だし、夏が『なんでも屋』という設定も、ほとんどその背景とかが説明されず、いろいろ謎が残ったままお話しが終わってるしで、ちょっと不思議ではあったんですが、昨日、「もしやこれは続編が…」と思い、アマゾンで検索したら、案の定…。
 『NEWSなオレたち』の面白さをずっと忘れてたのもショックでしたが、こんな続編が出ていることに気付かず、6年ものあいだのうのうと暮らしていた自分がふがいなくて…!
 もちろん、速攻買って読みましたとも、続編(笑)。
 ――ちゃんと最後までたどり着いてました、2人で(笑)。
 しかも、続編で登場する新キャラがこれまた美形で、それをちょっと見つめちゃった夏に、「オレがいるのに…」なんて冬耶が嫉妬丸出しで怒ったりする場面もあって、いやもう楽しく読ませてもらいましたよ!

 どーですか。
 まだ本作を読んだことのない優等生マニアのみなさん。
 2冊!
 まるまる2冊も、ツンデレ優等生の可愛さ全開なBLストーリーが読めるんですよ!
 なんたる幸せ!

 ブログ主は、今日から神奈木智先生の他の作品も慌てて読み返す予定です。
 まだ“優等生受け”が眠ってたりしたら大変ですからね!

ナイショなオレたち (ダリアノベルズ)ナイショなオレたち (ダリアノベルズ)
(2002/06)
神奈木 智

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