2007.12.30 (Sun)
[新刊レビュー]ありそうでなかった? “路上詩人”が主人公… 古街キッカ『洋6K2南向き』より、『路上詩人は眼鏡の夢を見るか』
![]() | 洋6K2南向き (ミリオンコミックス) (ミリオンコミックス) (2007/12/27) 古街 キッカ 商品詳細を見る |
一口に「優等生」と言っても、世にはさまざまあるわけですが、「文系少年」って要素はかなり重要です。
運動苦手、本読むの好き、一人で考え込んじゃうのが得意、眼鏡、内向き、アウトドア嫌い――。
昭和50年代くらいまでの青春小説やマンガでは、クラスに必ず1人はそんな「文系少年」キャラが登場していたものです(つっても、ちーけんもそのころはまだ小学生ですが…)。
その時に「文系少年」を表す重要な記号として機能していたのが「趣味は詩集を読むこと」=「詩集」というアイテムでありました(笑)。
でも、さすがにこの10年くらいの間に出た小説やマンガで、そんなキャラクターは見たことありません。
今のマンガで「趣味は詩集」なんてキャラがいたら、それは「優等生」の記号というより「変わり者」の象徴ですからね。
東京だとあちこちにいます。
池袋とか新宿とか渋谷とか、繁華街の路上で色紙に変な字や絵や詩と称するものを描いて売っているアレです。
相田みつをのパクリだろ的な人も多いですが、よく見ると本当にオリジナリティ溢れる人もいるのが油断できないんですが、昨日買った古街キッカ先生の2冊目のコミックス、最新刊『洋6K2南向き』に、そんな“路上詩人”が主人公(受)のマンガがありました!
主人公の路上詩人くんは、現実社会の彼らと同じくこざっぱりとしたオシャレさん(死語)として描かれているんですが、最後まで作中で名前が出てきません。
しょうがないので「路上詩人くん」と本記事では呼ぶことにいたしましょう。
今書いたとおり、本ブログが好んで取り上げるような、ネクラで眼鏡でキモオタな優等生とは一線を画しているこの「路上詩人くん」は、こんな詩を書いて売ってます。
男が札束で窒息
蝶々のドレスはネオン
男の口の偉人をなめて
一番甘いと言いました
えー、文学的にいいのか悪いのか、もちろんブログ主にはまったくわかりませんが(笑)、とにかく詩に志して路上詩人をやっているわけですね、彼は。
今風なオシャレさんとして。
やっぱりネクラでもキモオタでも優等生でもなさそうです。
でもですよ。
そんな自作の詩を書き、路上で詩集を売るという行為は、“誰かにこんな自分を評価してほしい”という思いがあるからこそなんですなー。
それって“優等生”たちが持っている気持ちそのものじゃないですか。
僕は内向きで友だちも少ないし取り柄は勉強だけ。
でも、それだけは誰にも負けないように頑張る。
そうしたら、こんな僕でも褒めてくれる人が、好きになってくれる人が出てきてくれるかもしれない――。
こんな悲しい気持ちを抱え、みんなにネクラとかキモオタとか言われながら必死で頑張っちゃうのが“優等生”という存在なわけですが、路上詩人くんというキャラクターのあり方と、まさにドンピシャじゃないですか!
で、我ら“優等生受け”大好き人間からすれば、そんな優等生が自分よりもっと力があり頭がよく圧倒されてしまうようなカッコイイ攻めキャラと出会って屈服させられちゃうというのがたまらなく萌えるわけですが(笑)、ぐへへ、本作はまさにそんなストーリーになってます。
なので、本ブログでご紹介しようと思ったわけですよ。
むははー。
じつはこのコミックスは、全体でひとつの連作シリーズになっていて、5本のマンガが載っています。
それぞれのマンガは主人公が違い、つまりは5組のカップルが登場するわけですが、全部のお話しがリンクしてるんですね。
第1話で登場するカップルが通うバーの他の常連客が、次の第2話では主人公になったり、彼らが通うコンビニの店員がその次の話の主人公になったり、そんな「あ、この話とここでつながってたのか」と驚く楽しみがいっぱい用意されているコミックスなんですが、今回ご紹介するのはその第3話『路上詩人は眼鏡の夢を見るか』です。
今風のTシャツにジーンズ、こざっぱりとした髪型の少年である主人公の「路上詩人くん」が、雑踏の中で色紙を並べ、「詩を売ります 500円〜」なんて小さな看板を出しているところに突然、眼鏡をかけた一人の男が現れます。
「パトロンになろうか」
マンガの世界では、眼鏡キャラってのは2種類ありますよね。
レンズの奥にちゃんと目が描かれてるキャラと、描かれないキャラと。
テニプリの乾貞治なんかは、後者の代表的なキャラですが、いきなりふざけたことを言う男に、路上詩人くんは冷たく言い返します。
「間に合ってます」
ところが、スーツに眼鏡、表情が読めないこの謎の男はいやに弁が立ちました。
「描いてる詩のわりには本人は子供なんだな」
こういう手合いは冷静に対処すればいい――そう思っていたのに、そんなことを言われてムッとしてしまう路上詩人くん。
いつしか少年は、男のペースに巻き込まれてしまいます。
「僕もそんなに暇じゃないから 長々と口説くつもりはない。イエスというチャンスは一度だけだ。ノーなら二度と誘わない。どうだい? いくら必要かな」
「………」
「10万? 20万? 30 35 40?」
「…本当にくれるんですか」
少年は結局、60万円で男を「パトロン」にすることを承諾したのでした。
ホテルに連れ込まれ、60万円と書かれた小切手を受け取る路上詩人くん。
「もっと欲しい?」
「いりません。…あなあたが買おうとしてるのは才能じゃなくて身体だ。貰いすぎると後が怖い」
「それはこの金額に見合う分なら好きにされる覚悟があるってことかな?」
相変わらず無表情に淡々と話しかける男は、そう言うと少年の顎に手を伸ばし、「口あけて」と命令するのでした。
で、ここでお待ちかねのHシーンです(笑)。
男に買われてホテルに連れ込まれて、なんかこーゆーこと慣れてるのかなぁと思わされてしまう路上詩人くんなんですが、男にキスされ体中を触られる様子は、ウブそのもの。
顔を赤くして、手は所在なげにベッドを掴み、いやもうこれが可愛いのなんのって。
このへんも優等生っぽいんです(笑)。
世間知らずで、とりあえず男に虚勢を張ってはみたものの、どうすればいいかわからなくて頭の中はグルグルみたいな。
じつは古街キッカ先生のことを、ちーけんが初めて知ったのは、テニプリの同人誌傑作選のアンソロジーでのことでした。
オークス刊『グランドスラム ナイトゲーム編7』に掲載されていた『SKEW』というマンガです。
これは真田×幸村のカップリングのマンガで(テニプリ知らない人、すいません)、もう初めて読んだ瞬間、シビれてしまいました。
幸村に執着しすぎて「お前をもうこのまま閉じこめる。もう二度とどこへも出さん」とか口にする、ちょっとイッちゃってる真田に、綺麗で可愛い幸村が縛られたり顔にかけられたりで凌辱されちゃうマンガだったんですが、ものすごくエロいのに、絶対にそれだけのマンガではなく、読み終わった後がせつなくて「同人誌でこの続きは出てないのかー!」とヤフオクで速攻検索かけちゃうような、読者をたまらない気持ちにさせてくれるマンガなのです。
そのときから、「うわー、こんなすごいマンガ家さんがいるんだー」と思っていたんですが、新人に目を付けることに関してはBL界一の慧眼ぶりを誇る『HertZ』でいつしか連載が始まり、こうして早2冊目のコミックスが出てきたわけです。
そんな真田×幸村マンガで描かれていたようなもんのすごくエロいHシーンは、今回もページ数は少ないながらも健在。
素晴らしい輝きを放ってくれてまして、もうここ読んだだけでもお腹いっぱい。
すごく直接的な表現でエロが描かれているんですが――男が路上詩人くんの後孔に突き入れる指がアップで描かれてたり――、全然汚いエロじゃないのです!
すごく官能的で、何より感じる受けキャラが可愛くて「うわー、路上詩人くんが大変なことになっちゃってる!」と読者の胸をドキュンドキュンさせてくれるのです。
「…はっ ァ もう 出……っ」
最後はそんなセリフで極めさせられちゃう路上詩人くん。
やることをやると、男は少年だけをホテルに残し、一人帰っていきます。
うーむ、やっぱり謎の男。
とっころが。
翌日、路上詩人くんが銀行に小切手を換金しに行くと、それは偽物でした。
その晩、繁華街の雑踏で色紙を並べる少年の前に、再び男が現れます。
さて、いったい男は何のためにこんな行動をとっているのか。
身体だけ弄ばれ怒りに震える路上詩人くんと男の行く末は――。
ここから後は、ぜひコミックスを買ってご自分で読んでいただきたいわけですが、後半では男と少年の“対決シーン”があり、またまた可愛い路上詩人くんが見れちゃいます(笑)。
男を「どういうつもりだ!」と怒鳴りつけ、完全に戦闘モードに入っていた路上詩人くんが、男に褒められ(?)、怒っていたはずなのについ顔を赤くしちゃったり。
また、出会ったときからHのときまでずっと敬語を使ってきた(このあたりも優等生)路上詩人くんが、対決場面ではついタメ口を男にきいたりしてしまうのですが、それを指摘されてまたまた赤くなっちゃったり。
とにかく、「自分はこうでないといけない」という規範を決めているにもかかわらず(しつこいですが、そんなあたりも優等生)、それを気づかず逸脱してしまい、指摘されて初めて自分が興奮していたことに気付いて赤くなっちゃうというこの“思いこんだら一直線”な人としてのあり方が、何度もしつこいですが、本当に優等生っぽくていいんですなー(笑)。
で、前半、路上詩人くんのことを言いくるめて金で身体を買い(しかも詐欺)、読者には「なんだコイツ」と思われがちな謎の男ですが、後半、ちょっとだけ“素顔”が明らかになると、たぶん多くの読者は「こいつならアリ。つーかカッコイイな、コイツ」という風に手のひら180度ターンな態度に出ると思います(ちーけんもそうでした(笑))。
変な魅力があるんですよ、コイツ。
そんなこんなで、本当に読みでのあるマンガに仕上がってます。
この『路上詩人は眼鏡の夢を見るか』は。
しかも、同時収録の他のお話しもみ〜んな面白いです。
“優等生受け”ではありませんが、どれもこれも可愛い恋物語満載で。
一度読めば、末永く本棚に飾りたくなること必死のこの連作シリーズ作品集、今まで古街キッカ先生を知らなかった人に、ぜひ読んでほしいです。
絶対に「こんな作家さん、いたのかー」と思うこと請け合いですから。
で、古街キッカ先生の描くエロが気になった方は、先ほど描いた『グランドスラム』も探してみてください(一応下にリンク)。
もんのすごくエロいですから(笑)。
いやー、マンガって本当にいいものですね!(古)
![]() | グランドスラム―人気同人誌セレクション (他校オープン編7) (2004/10) 不明 商品詳細を見る |
お返事、遅くなりましてすいません(><)
TBとコメントいただき有り難うございます〜!
古街キッカさん、いいですよね〜。
さっきも冬コミ新刊を通販でチェックしていたら、テニプリの再録本を出されていたので早速買ってしまいました。
もしかしたら、ご紹介したアンソロの原稿とかもこれに入ってるかもしれませんので、もし機会があればこちらをチェックされたほうが早いかもしれません(^^;
ブログの記事、迫力のある評論が並んでいて圧倒されます。
私自身はとても書けないのですが、ついついたいまつさんの書かれるようなしっかりした記事を拝見すると読みふけってしまいます。
当方よりもTBを打たせていただきますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします(^^)
TBとコメントいただき有り難うございます〜!
古街キッカさん、いいですよね〜。
さっきも冬コミ新刊を通販でチェックしていたら、テニプリの再録本を出されていたので早速買ってしまいました。
もしかしたら、ご紹介したアンソロの原稿とかもこれに入ってるかもしれませんので、もし機会があればこちらをチェックされたほうが早いかもしれません(^^;
ブログの記事、迫力のある評論が並んでいて圧倒されます。
私自身はとても書けないのですが、ついついたいまつさんの書かれるようなしっかりした記事を拝見すると読みふけってしまいます。
当方よりもTBを打たせていただきますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします(^^)
ちーけん |
2008.01.10(木) 05:57 | URL |
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2008/01/08(火) 22:24:51 | 一日一やおい
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古街キッカは私もすっごくお気に入りです。アンソロにも描いているのですね。早速チェックしたいと思います。
よろしくお願いします。